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スペシャルな3D体験でライブエンタメ新時代開拓 ヒビノ「Immersive LED System」の実力

ORICON NEWS / 2024年9月2日 12時0分

「Immersive LED System」で圧倒的なイマーシブ体験を提供

 広告やアート、ライブやイベントの演出で、よく目にするLEDビジョン。レイアウトやサイズが自由でつなぎ目を気にせず画面を構築できるため、様々な用途やスペースでの利用が広がっているだけでなく、新たな技術革新によって日々発展を遂げている。一昨年、米ラスベガスに登場したランドマーク「ラスベガス・スフィア」(The Las Vegas Sphere)は、そういった技術の粋を集め、没入感あふれる未来のエンターテインメント体験を提供する施設として、世界中の注目を集めた。そして今年、ここ日本でも今後のライブ・エンタテインメントでの活用が期待される新たな技術が、今年1月に行われたYOASOBIのライブでお目見えした。「飛び出す絵本」「未来のライブハウス」「圧倒的な没入体験」と、観客から驚きの声が挙がった3D演出とはいったいどんなものなのか。



【写真】演者と3D映像の融合による新たなエンターテインメント体験

■次世代LEDディスプレイ・システム「Immersive LED System」 最大の強みは演者と3D映像の融合

 「音と映像のプロ集団」として、販売・施工・サービス事業を展開するヒビノ。大規模コンサートを中心に、日本のライブ・エンタテインメント演出を大型映像でけん引している。そのヒビノが23年11月に、大型LEDディスプレイと三次元(3D)LED技術、バーチャル技術を活用し、新たな演出手法や没入型体験の研究開発拠点「Hibino Immersive Entertainment Lab(ヒビノイマーシブエンターテインメントラボ)」を東京都港区に開設した。YOASOBIの国内ツアー「YOASOBI ZEPP TOUR 2024 ”POP OUT“」でいち早く採用されたのは、そのラボに常設されている新技術、次世代のLEDディスプレイ・システム「Immersive LED System」だった。

 Immersive LED System とは、アメリカLiminal Space社が開発した「Ghost Tile」を搭載した3D対応LEDディスプレイ・システムのこと。Ghost Tileという立体表示技術は、独自の偏光フィルターをLEDディスプレイに施工し、専用3Dグラスを通して見ることで、傑出した3D効果を体感できる。ヒビノはLiminal Space社と資本業務提携、三次元LED技術の運用に関する技術ライセンス契約を締結し、レンタル運用を行っている。国内に180平米分(高さ6mとした場合、幅30mのステージをカバーできる大きさ)、子会社である北米H&X Technologies社も180平米分のGhost Tileを所有しており、今春からライブ・コンサートやイベント会場でのレンタル使用が可能となった。

 3D映像を3Dグラスで鑑賞するスタイル自体は3D映画や一部のライブ演出でもお馴染みだが、プロジェクターを使ってスクリーンに映像を投射する方式であったため、演者や機材の影ができたり、プロジェクターの光量の弱さにより、舞台セットなどのリアルな物と映像との間に光量差が生じたりして、両者を馴染ませることが難しかった。そうした問題をImmersive LED Systemは解決してくれると、ヒビノの芋川淳一氏(取締役 常務執行役員)は語る。

「輝度の高いLEDディスプレイを使うことで、観客に舞台照明下で行われる演者のパフォーマンスと3D映像効果を同時に体験していただけるのが最大の強みです。また、照明やレーザー、ストロボ、スモークといった演出との併用ができるので、より3D効果を高めることができます。ステージで3D映像による背景の存在感をしっかりと示せて、かつ演者と背景の双方を1つのシーンとして、ショー全体に馴染ませることができる。これが非常に重要なポイントなのです。さらに、3D/2D映像を簡単かつシームレスに切り替えて映し出せるので、実用面、制作面でも有利なシステムだと考えています」

 ラボに常設されている幅21.6m×高さ3.6mのImmersive LED Systemのデモンストレーションを実際に体験してみたところ、確かに従来の3D映画等とは全く異なる新鮮な3D感を味わうことができた。まずもって、LEDディスプレイ自体が映し出す映像であるため、グラフィックが圧倒的に鮮明で、プロジェクターとは映像のリアルさが各段に違った。またプロジェクターの場合、スクリーンの端で映像がぼやけてしまうこともあるが、LEDディスプレイでは、どれだけサイズが大きくなろうとも隅々までピントが甘くなることはなく、しかも140度という広い視野角の実現で、視点を左右に動かしても、3Dバーチャル空間の中に自分がいるような感覚が損なわれることがなかった。

■YOASOBIの音楽世界にダイブ ZEPPツアーで試みた没入感あふれる新たなライブ体験

 デモンストレーションでは、照明機材も併用しながらLEDディスプレイの前でダンサーによるパフォーマンスも行われた。リアルなダンサーと照明、そしてバーチャルな3D映像の馴染み具合はまったく違和感がないどころか、雪や花びらが舞い散るような3D映像が映し出されると、それらがまるでダンサーの前を横切って舞っているかのように錯覚してしまうほどの融合感であった。加えて、3D映像と言うと手前(観客側)に飛び出る効果が注目されがちだが、リアルな演者が前にいることで、3D映像による背景に奥行き感が生まれることも印象的。また、演者や照明などのリアルなものと3D映像が連動する演出は、リアル/バーチャルの境目がわからなくなるような新鮮な驚きがあった。

 昨年11月、同ラボ内覧会に参加したYOASOBIのスタッフが、こうしたデモンストレーションを体験し、その場でツアー(YOASOBI ZEPP TOUR 2024 ”POP OUT“)での使用を強く希望したというエピソードも十分に頷ける斬新な視覚効果だった。当時、Immersive LED Systemのレンタル在庫は納品前だったが、ツアー・タイトルが「POP OUT(飛び出す)」であることを知り、「またとない機会をいただけた」(芋川氏)と考え、ラボにあるデモンストレーション用のLEDディスプレイをツアーに提供することを即断したという。

 ここで、YOASOBIのツアーの様子も簡単に紹介しておこう。ライブ中盤の5曲が3Dパートとなった(その前後は通常の2D映像を使用)。入場時に配布された3Dグラスの装着を促す映像が流れ、観客は3Dの世界へと誘われる。「Biri-Biri」でボクセルアートの世界が広がり、「怪物」ではモンスターがメンバーと一緒にリズムとビートに合わせてうねる。「もしも命が描けたら」で歌詞が飛び出し、「優しい彗星」ではボーカルikuraがLEDディスプレイ中段の高さのステージに移動することで、光と星空に包まれた空間の中で歌っているようなファンタジーな世界を表現。最後の「ツバメ」では、観客の頭上をツバメが飛び交うようなシーンを作り出された。Immersive LED Systemの強みを最大限に活かした演出は、YOASOBIの物語の世界にアーティストと観客が一体となって没入することに成功したと言っていいだろう。

「照明やレーザー、スモークといったリアルなものがLEDディスプレイの前にあることで、3D背景の奥行きがより増すということは新たな発見でした。一方で、やはり映像が良いだけではダメで、照明や特殊効果も作り込んで、全体として100点のシーンを作らないといけないことも実感しました。3D映像も照明や他の演出も、それぞれがきちんと主張できるよう作り込むことで、例えばアーティストさんが世界中のあらゆる場所や宇宙、時代を超えた空間を背景にパフォーマンスを行ったり、メッセージ性の強い世界観を没入感のある表現で観客に伝えたりすることができます」(芋川氏)

 さらに芋川氏は、これまでVRヘッドセットを装着して個人で楽しむものだった「没入感」を、ライブ会場で大勢の観客と共有しながらバーチャルリアリティ(仮想現実)やミックスドリアリティ(複合現実)を楽しめるという点を強みに挙げた。

「コンサート会場では隣同士の観客が一緒になってイマーシブ体験を共有できます。また、今までに3D映像を長時間見ていて“3D酔い”を経験した方も、次世代型3D映像ではストレスなく、鮮明な3D映像をお楽しみいただけます」

 専用3Dグラスは、電源を必要としないパッシブ方式(円偏光方式)のため、軽量で安価に手配でき、ドーム規模のキャパシティでも対応できるという。先のYOASOBIのツアーでは、通常のメガネ型に加え、メガネに装着できるクリップ式、子ども用の計3タイプが用意され、全国6会場12公演で合計2万5千人以上の来場者にレンタル提供された。これらは返却が必要だが、観客が持ち帰れるツアーグッズとしてYOASOBIとZEPPのロゴ入りコラボ3Dグラスも作られ、こうしたマーチャンダイズにも対応している。

■利用シーン拡大 Immersive LED Systemの計り知れない可能性

「エンターテインメント市場におけるImmersive LED Systemの可能性を考えると、ライブ・パフォーマンスと3D映像による背景エフェクトとの融合は第1ステップで、将来的には、ロケーションベースエンタテインメントやアミューズメントパークなどでのインタラクティビティと3D映像の融合、さらにはライブやスポーツの臨場感をサテライト会場で立体映像によって伝えるライブ・ビューイングによって、アーティストやスポーツ選手のパフォーマンスをより身近に感じていただけるよう、今後も技術の向上と普及に向けて努力していきたいと考えています」(芋川氏)

 YOASOBIのツアー以降のImmersive LED System の活用事例としては、5月のみずほPayPayドーム福岡で開催されたイベント「STAR ISLAND」で、アーティストYOSHIROTTENによるドーム全体を使ったアート作品「SUN」があり、9月には展示会での導入が決まっている。もちろん、ライブ・コンサート以外でも、企業イベントでの自動車やキャラクターなど、クライアントが所有するアセットを立体映像で表現する際に効果的で、例えば自動車の新モデルを紹介するような場合には、3D映像で来場者に説明することで、より多くの情報を効率的かつ効果的に伝えることができる。

 こうしたヒビノのLEDディスプレイ・システムへの取り組みは、Immersive LED Systemだけではない。スタジオに設置した大型LEDディスプレイにCGによる仮想空間や実写のロケーション映像を映し、それと役者や被写体を同時撮影することで自然な合成映像をリアルタイムで作り出せる「インカメラVFX」機能を備えたバーチャルプロダクションスタジオ「Hibino VFX Studio」も開設しており、この技術は既に昨年放送されたNHK大河ドラマ『どうする家康』や、三代目J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEのボーカル今市隆二のソロ楽曲「CASTLE OF SAND」ミュージックビデオの撮影等で使用されている。

 これらの先進的な技術は、いずれもコロナ禍ですべてのライブ・エンタテインメントが休止された時期に、人材と機材を活用して研究開発を進め、実用化されたものだ。50年以上に渡ってコンサート音響を手がけ、ライブを知り尽くすヒビノが挑戦する新たな映像技術/LEDディスプレイ・システム。聴覚だけでなく視覚においても、ライブ演出の新ステージを同社の技術が切り開いていくことに大いに期待したい。

文・布施雄一郎

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