【21歳差夫婦】夫と息子は9歳差…「父にも兄にもなれない」夫、息子のひと言で生まれた新たな“家族”の形

21歳差の夫婦、えみさん（52歳）かいさん（31歳）　写真提供：若埜ん家（わかのんち）

　子どものことを考えて、自分の恋愛に踏み切れないシングルマザーは多いことだろう。21歳差夫婦をテーマに、YouTube登録者数10.3万人と注目を集めている『若埜ん家（わかのんち）ちゃんねる』のえみさん（52歳）もその一人。夫のかいさん（31歳）に猛烈なアプローチを受けながらも、子どものことを考えて交際にはなかなか踏み切れなかったという。えみさんの息子は当時、多感な中学2年生で、かいさんとはわずか9歳差。えみさんは、なぜ一歩を踏み出すことができたのか。ママのホンネと、交際から結婚までの6年間、息子との関係を築いてきた新パパの思いを聞いた。

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■21歳年下男性から猛アプローチ、シンママの心のストッパーは中2の息子

　21歳差夫婦をテーマにYouTubeの『若埜ん家（わかのんち）ちゃんねる』で、結婚に至るまでの苦悩やホンネ、結婚後の日常のあれこれを公開し、「素敵な2人に癒される」「2人を見ていると幸せな気持ちになる」など多くの人々を勇気づけているえみさん（52歳）とかいさん（31歳）。

　2人が出会ったのは、今から10年前。かいさんが、職場の上司のえみさんに一目ぼれしたことが始まりだった。当時、えみさんはシングルマザーで3人の子育て中。「親には迷惑をかけたくない」「離婚したのは自分の責任。子どもたちには自分が責任を持って、何不自由ない暮らしをさせたい」という思いから、子どもファーストでがむしゃらに働き、子育てに全力投球している最中だった。それだけにかいさんからアプローチを受けても、すぐに受け入れることはできなかった。

　もちろん、そこには21歳下という年齢差もあった。「そんな年下の人からアプローチを受けるなんて、芸能人にはあっても自分にはありえないと思っていた」と当初は猜疑心の塊だったというえみさん。

　かいさんの真剣な気持ちや誠実な人柄を知るにつれて気持ちが傾いていっても、かいさんが「結婚を前提に」と真剣であればあるほど、子どもを産んであげられないかもしれないこと、かいさんのご両親への気遣いなど、年の差カップルが抱えがちな問題に直面し、躊躇せざるを得なかったという。中でも、もっともえみさんの気持ちのストッパーとなっていたのが、中2の息子（ひなたくん）の存在だった。

――息子さんへのどのような思いが、恋愛することを踏みとどまらせていたのですか？

【えみ】シングルマザーになってからは、子どもが成人するまで、もしくは働き出すまでは、私が一人でしっかり育てると心に決めて、がむしゃらに走っていたので。子ども以外のことに時間を費やすということが、当時の私には考えられませんでした。なので、かいくんからアプローチを受けるたびに、「私は子どもが一番なので、あなたは一番にはなれない。ずっと二番になる」と伝えていました。かいくんはそれでいいと理解してくれて、子どもが巣立った後のことを見据えて、「一緒にいたい」と言ってくれましたが、それでもやっぱり息子のことを考えると踏み出せませんでした。

――一歩を踏み出せたきっかけはなんだったのですか？

【えみ】一番気になっている息子に相談したことでした。息子に「無理」とか「やめとき」と言われたら、きっぱり気持ちを断ち切ろうと思ったんです。

――息子さんには何と伝えたんですか？

【えみ】「お母さんのことを好きって言ってくれている人がいて。いい子やねんけど21歳年下で、髪の毛茶髪やし、なんかチャラいし。私のことも『お前』とか言ってくるし、そういう子やねんけど」って話したら、息子がすぐに「話だけやったらわからへんから、1回連れてきてくれ」と言ったんです。

――初対面はいかがでしたか？

【えみ】私自身、めちゃくちゃ緊張しました。息子は“中二病”という言葉があるような多感な時期でしたから。そんなときに、年下の金髪のチャラそうな人を連れてきて、「この人と付き合っていいですか？」って聞いて本当に大丈夫なのか？ と、当日までめちゃくちゃ悩みました。でも、かいくんが帰って2人きりになったとき、息子が「お母さんのことをめっちゃ好きって思ってくれてるんやったら、お母さんも幸せやったら、俺は関係ないから。お母さんの人生やし、いいんじゃないの」って言ってくれたんです。

――息子さんもお母さんのことを考えてくれていたんですね。

【えみ】シングルで育ててきた息子とは、親子というより、お互いがお互いを尊重しながら、お互いが幸せになるようにということを求めて歩んでいる同志のような関係。だから信じているところもありましたが、その通りだったなって思います。息子はけっこうポーカーフェイスなんですけど、その日もそんな感じで。かいくんがいたときに、「お仕事一緒やねん」って私が言ったら、私の家から仕事場がめっちゃ近かったので、「じゃあ、ここから通ったらいいやん」って言ってくれて。そんなふうにかいくんに声掛けしてくれたことをすごく嬉しく覚えています。

――かいさんは初めて息子さんに会ったとき、いかがでしたか？

【かい】僕はそもそもコミュ障で、しかも当時は外見が金髪のロン毛だったので、怖いって思われたら嫌やなと思って。とにかく低姿勢で、ずっと廊下の壁にもたれて立っていて、会話は全部えみを通してするという感じでした（苦笑）。

――それから6年の交際期間中は同棲もされました。息子さんとの関係はいかがでしたか？

【かい】最初の頃はやはり、えみを通してしゃべるみたいな感じで、必要最低限の会話しかありませんでした。正直どう接していいのか、どうしゃべっていいのか、どう付き合ったらいいのかわからなくて…。年齢が近くても、お父さんみたいなことをしている人たちもいるじゃないですか。その関係性に憧れていたので、ほんまは僕もそんなふうになりたかったんですけど、僕にはそれがまったくできなくて。かと言ってお兄ちゃんなのか？ と言っても、僕は2人兄弟の弟だし、そんなタイプでもない。だから、ほんまにちょっと上の先輩ぐらいな距離感でした。

――息子さん自身はどう感じていたのでしょう？

【えみ】「コミュ障の人は人に詰め寄られるとしんどくなったり、居心地悪くなるから、距離を詰めないほうがいいんだよ」なんて言ってましたね（笑）。でも。次第に2人でスーパーに一緒に買い物に行くようになって、話して笑い合ったりしていて。

【かい】居心地はまったく悪くなかったです。ひーくんの性格に助けられました（笑）。

■「僕がお母さんを守らなきゃ」、そうやって母を見守った息子の意外な申し出

――その後、どうやって関係を築かれていったのですか？

【かい】ひーくんの力になりたいし、役に立ちたいと思うけど、僕にはお父さんやお兄さんのような立ち居振る舞いはできない。僕なりにできることといったら、バイトの送り迎えとか、コンビニに行ったときにお金を出してあげるくらい。でも気持ちは、えみの子だから絶対幸せにしてあげたいと思って接していました。今、僕が好きなえみがあるのは子どもたちのおかげ。ひーくんとはえみはずっとニコイチで暮らしてきて、そこに僕が勝手に入ったわけですから、だから絶対大事にしたいと思ってきました。

――6年間の同棲を経て、結婚する決意をした理由のひとつは息子さんだったそうですね。

【かい】ひーくんが高校生のときですが、えみが不在の日に、ひーくんに話があると言われて、2人で外食したんです。そのとき、ひーくんから「高校を卒業したら海外に留学したいからお母さんはかいちゃんに任せる。お母さんを大事にして」と言われたんです。えみが離婚してから、ひーくんはずっと「僕がお母さんを守らなきゃ」と考えてきたんだと思います。その子にこう言われて、付き合っているままなのはいけないんじゃないかと思いました。僕たちが結婚すれば、ひーくんは自分がいなくてもお母さんのことは僕が守ってくれると安心できるし、使命感からも解放されるのではないかと思って、決断しました。

――では最後に、お2人から様々な悩みを抱えている年の差カップルにアドバイスをお願いします。

【かい】えみを好きになったとき、僕自身、えみの子どもとうまくやっていけるのか、自分の両親のことについても悩みました。でも、悩んで悩んで、それでも僕のものにしたいと思って覚悟を決めたから。6年間、山あり谷あり、えみから何度別れ話を持ち出されても、どんなことがあっても、くじけずプッシュし続けました。その経験を通して、幸せな今がある。僕は悩んでいる人に、どんなことがあっても好き同志が別れるのはおかしいということを一番伝えたいと思います。

【えみ】私も、別れる理由を年の差のせいにしないでほしいと思います。私自身、自分は彼より年をとっているからとか、子どもが産めないからとか、自分には子どもがいるからとか、両親に反対されるだろうからとか、すべてを年の差にまつわる問題のせいにして、別れを何度も口にして、彼を傷つけてきました。でも「年の差があるから別れましょう」というのは、別れる理由にはなりません。本当に好きじゃなくなったら別れたらいい。なので、年の差で悩んでいる人たちには、そういうことは全部とっぱらって、「この人といたい」「この人がいい」という気持ちがあるのなら、それを大切にしてほしいと思います。

（文：河上いつ子）