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『スカイキャッスル』日本版ローカライズは成功? 韓国版にはない要素と松下奈緒ら“ハマり役”キャスティングで好調

ORICON NEWS / 2024年9月3日 14時15分

『スカイキャッスル』(C)テレビ朝日

 俳優の松下奈緒が主演し、木村文乃、比嘉愛未、高橋メアリージュン、小雪が競演するテレビ朝日系木曜ドラマ『スカイキャッスル』(後9:00)。オリンピック時期のスタートにも関わらず、初回から5週続けて見逃し配信で再生回数200万回を突破し、好調をキープ。同局が今期最も力を入れているドラマと言っても過言ではない本作について、韓国ドラマのリメイク作という観点から、メディア文化評論家の碓井広義氏に話を聞いた。

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■韓国ドラマの日本版ローカライズは成功したのか

 同作の原作は、韓国のケーブルテレビ局「JTBC」で2018~19年に放送された『SKYキャッスル〜上流階級の妻たち〜』。世界的ヒット作『梨泰院クラス』(2020年)を制作した韓国のスタジオSLLが制作を担当し、初回視聴率はわずか1.7%だったものの、最終回では非地上波チャンネルで当時歴代最高の23.8%で記録的大ヒットを収めた。



 今回はその『梨泰院クラス』のジャパン・オリジナル版『六本木クラス』(2022年)の制作陣がSLLと再タッグを組んだ日韓共同プロジェクト。『六本木クラス』と同じように、本作も日本版としてローカライズされている。

 スカイキャッスルでは、街の中心にある「パブリック塔」が裕福と幸福の象徴としてたびたび描写されるが、この塔は韓国版の「SKYキャッスル」では存在しない。また、冒頭から登場する「スカイキャッスル」という絵本も韓国版には出てこない。

 碓井氏は「韓国版『SKYキャッスル』の“SKY”はソウル大学(S)、コリョ大学(K)、ヨンセ大学(Y)の頭文字を取ったものです。いわば日本の東大早慶みたいなものですが、そのままの“SKY”だと日本では意味を持ちません。そこで、カタカナの“スカイ”とし、『スカイキャッスル=空の城』というイメージを強めるために、新たに『パブリック塔』と『絵本』の設定を加えたのではないでしょうか。住人たちのスカイキャッスルへの想いを、日本版として上手くローカライズしています」と分析する。

 また、韓国版『SKYキャッスル』の設定では大学受験だったが、日本版『スカイキャッスル』では高校受験という変更点も。これには「日本で親たちの介入度合が高いのは、やはり“お受験”と呼ばれる小学受験か中学受験。しかし、中学受験の設定にすると、小学6年生たちの話となり、瑠璃(新井美羽)と未久(田牧そら)と青葉(坂元愛登)の三角関係や、遥人(大西利空)が家政婦を妊娠させるなどの描写にリアリティが無くなってしまう。高大一貫教育の医大付属高校は、日本では岡山に一校あるのみで馴染(なじみ)は薄いかもしれません。しかし、一旦ストーリーに入り込んでしまえば、不思議と気にならなくなるものです(笑)」と考察した。

■“悪人”寄りの主人公が松下奈緒であることの必要性

 ヒロインである浅見紗英は、単純な意味での「善人」ではない。むしろ倫理的には「悪人」と言ってもおかしくない人物であることは、このドラマの軸となる大事な設定となっている。

 松下といえば、どこかお嬢様の気品あふれる清楚な女性というイメージが強い。そんな松下が浅見紗英役を演じることには「意外でしたが、実際に放送が始まると、その予想は見事に裏切られました」と話す碓井氏。「娘を志望校に合格させるためであれば、『私、何するかわからないわよ』とママ友を挑発する役は松下さんの新境地であり、しかも完璧にハマっています。清廉なイメージと同時に彼女自身が併せ持つ芯の強さが、紗英の『何がなんでものし上がってやる』という、生きるたくましさを具現化している」と、逆に松下でしか成しえない役だったと語る。

 しかし、日本では共感できないことが多いのも事実。実際、SNSでは「どのキャラにも共感できない」というコメントも多く見られた。しかし、配信の数字も好調が続いていることについて碓井氏は「どのキャラにも共感できないからこそ、逆に気楽に見られる部分もあるからではないでしょうか」とし、「また、最後に笑うのは誰なのか気になって目が離せないというように、週刊誌を下世話だと思いつつも見てしまう、のぞき見根性をかき立てられる人も少なくないと思います」と、ゴシップ好きな日本人の特徴をとらえたドラマだと分析した。

 また、松下とともに重要人物である受験コーディネーター・九条彩香を演じる小雪についても「九条彩香は、このドラマの“ダークヒーロー”とも言える、注目すべき女性」だとし、「暴力ではなく、言葉によって他者を支配する九条と小雪さんのマッチングは最高です。感情を露わにしない、クールな九条の佇(たたず)まいは、小雪さんでなくては出せない雰囲気となっています。九条とは一体、何者なのか。スカイキャッスルの住人たちをどうしたいのか。その目的は?そんな疑問が終盤に向けての牽引力となっていくはずです」と期待する。

 そして「南沢泉(木村文乃)が書き進めている小説」が最終回への大事なカギだという碓井氏。「小説がどんな結末で、それがスカイキャッスルの住人たちにどのような影響を与えるのか。さらに冴島香織(戸田菜穂)の死の真相にも、九条との関係から新たな光が当たりそうです」

 今後、『人は過去に縛られて生きている。そして過去は残酷なまでに今を侵食する』という泉の言葉通り、登場人物全員がじわじわと追い込まれていく。果たして、崩壊の先の再生はあるのか。最終の最後まで、危うさの王城『スカイキャッスル』から目が離せない。

※5日放送の『スカイキャッスル』はサッカーW杯最終予選のため休止。次回第7話の放送は12日午後9時を予定している。

■碓井広義(ウスイ・ヒロヨシ)プロフィール
1955(昭和30)年、長野県生まれ。メディア文化評論家。2020(令和2)年3月まで上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。慶應義塾大学法学部政治学科卒。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年、テレビマンユニオンに参加、以後20年間ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に『人間ドキュメント 夏目雅子物語』など。著書に『テレビの教科書』、『ドラマへの遺言』(倉本聰との共著)など、編著に『倉本聰の言葉――ドラマの中の名言』がある。

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