笑福亭鶴光、警察官が見守る中で『オールナイトニッポン』 最高占拠率90%の影響力を実感【独占インタビューVol.4】
ORICON NEWS / 2024年10月17日 7時0分
「わんばんこ!」。1970年代~80年代にかけて『オールナイトニッポン』で全国のティーンエイジャーの夜をつややかに、そして刺激的に彩ってきた笑福亭鶴光(76)が、今年でニッポン放送パーソナリティ歴50年を迎えた。今は夕方を主戦場に、リスナーを楽しませている鶴光に独占インタビューを敢行。『オールナイトニッポン』デビューから今のラジオ界まで、縦横無尽に語ってもらった。Vol.4では、今では考えられない『オールナイトニッポン』時代の衝撃エピソードの数々を紹介する。
【貴重ショット】鶴光でおま!『オールナイトニッポン』時代の写真
ニッポン放送の近くで爆破事件が起きた頃やったかな、その影響もあったんでしょうね。ある時、ディレクターから「このビルを爆破するって電話がありました」と言われて、僕が放送でそのことをしゃべってもうたんや。それを面白がってか、全国からいたずらで「時限爆弾です」と書かれた時計が送られてきてしまった。近くに丸の内警察があったから、一応連絡をせなアカンっていうことで電話したら、盾をもった警察官が10人ぐらいスタジオまで来て…。その警察官たちの前で『オールナイトニッポン』やらなアカンっていうのは、なんとも言えない気持ちやったね。結果的に何もなかったからよかったけど、あれは怖かった。
そういう物騒なこともあったけど、『オールナイトニッポン』では、なんかみんなで一緒に遊んでいた感じがあったね。大人の遊園地っていうのかな。だから、リスナーは僕に尊敬の念なんてひとつもない(笑)。でも、それでいいと思っていて、僕は政治とかの真面目な相談事を一切に受け付けなかったんです。だから、もう下ネタばっかり(笑)。なんでかっていうと、政治とかの相談事をやっていると、ご意見番のような偉そうな立ち位置になってしまいかねない。リスナーから「すごいすごい」って言われているうちに、自分はすごい存在と勘違いして、本業以外に手を出そうとしてしまうんです。お笑いはお笑い、スポーツ選手はスポーツ選手、ミュージシャンはミュージシャン、それぞれが得意じゃない政治とか経済をやりだしたら、本職に勝てるわけないんやからね。
そうや、『オールナイトニッポン』やっていた時に「河内音頭」事件というのもありまして。当時、有楽町に屋台のおでん屋があったんですが、朝の4時くらいになった頃に、放送中やったけど腹が減ったなと。それで30分もあれば食べて帰ってこれるということで、ミキサーさんに「お土産買ってくるから」って言うて。リスナーには「そろそろ眠くなってきた頃でしょう?」とか理由をつけて、そこから「河内音頭」を30分ずっと流したら、亀渕さんがたまたま聞いていたみたいで、おでん食べてスタジオに帰ってきたら、「番組を何だと思っているんだ!」とえらい怒られましたわ(笑)。
ホンマにたくさんの人に聞いてもらっていて、最高占拠率90%を取ったこともあったくらい。そうしたら、亀渕さんが「今度は100%目指そう」ってバカなこと言うてました(笑)。あの時は『パックインミュージック』とか『セイ!ヤング』とかもやっていた時代だから、そんな数字よう取れたなと。そんな人気やったから、『鶴光のオールナイトニッポン』を聴いていないと、月曜日の学校の話題についていかれへんという時代もありがたいことにあったんです。でも、下ネタばっかりのラジオやから、その時に話の中に入ってきたのは男だけで女の子は一切入ってこなかった。だから、リスナーは男性中心なんかなとずっと思っていたんやけど、森高千里ちゃんに会ったら「小学校4年の時に布団被って聴いていました」って。要するに、男の子の輪の中には入れなかったということで、隠れリスナーもたくさんおったんやね(笑)。
影響力もすごくて、本とCDも売れました。例えば、テレビ番組で「こんな本出しまして…」と告知したとしても、そこまで売れへんかったかもしれん。けどラジオやと「鶴光がオレに頼んどる」って、マンツーマンの形になるわけで、直接その人に伝わるわけよね。そんなこんなで『オールナイトニッポン』は11年9ヶ月やらせてもらいましたけど、11年目の時に、亀渕さんにたまたま会ったら「君、今何やってるの?」って聞かれまして。「何やってるのって、オールナイトニッポンやってますよ」って返したら「えっ、まだやってんの?しまった、降ろすの忘れてた」って言われたわけや(笑)。そしたら、ホンマにその3ヶ月後に終わることになったという話もありました(笑)。でも、本当に亀渕さんは命の恩人ですよ。あの人がおらんかったら、東京で落語家をやれてなかったかもしれないです。
『オールナイトニッポン』って、今でもいろんなスターが出ているけど、自分の中で自負しているのは、その人たちは『オールナイトニッポン』で、僕は『鶴光のオールナイトニッポン』やと。だから、他の人の『オールナイトニッポン』は聴かへんのよ。聴いてしまったら、その番組のええとこ取ろうとしてしまう。そしたら僕の個性がなくなってまいそうやから。自分の個性が良いか悪いか決めるのはリスナーやから。だから、自分にとって良いか悪いかではなく、リスナーにとって良ければいい。(Vol.5に続く)
【笑福亭鶴光】
高校卒業後、1967年に6代目笑福亭松鶴に入門。1968年に初舞台を踏む。1974年にはニッポン放送の「オールナイトニッポン」、1987年から2003年までは「鶴光の噂のゴールデンアワー」でラジオパーソナリティとして人気を博す。上方落語協会・落語芸術協会の両方に籍を置き、上方落語協会に籍を置いて東京の寄席でトリを取れる唯一の落語家。10月1日からは『鶴光の噂のゴールデンリクエスト』(火~木 後6:00)を担当している。
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