日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』野木亜紀子×塚原あゆ子、強力タッグが制作秘話を語る
ORICON NEWS / 2024年10月17日 18時0分
俳優の神木隆之介が主演を務める、TBS系日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』(10月20日スタート 毎週日曜 後9:00)。今回は、脚本・野木亜紀子氏と監督・塚原あゆ子にインタビュー。『アンナチュラル』『MIU404』などの連続ドラマや、映画『ラストマイル』で苦楽をともにしてきた2人が、制作の舞台裏や本作の見どころを語ってくれた。
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本作は、1955年からの石炭産業で躍進した長崎県・端島と、現代の東京を舞台にした70年にわたる愛と友情、そして家族の壮大な物語。戦後復興期から高度経済成長期の“何もないけれど夢があり活力に満ちあふれた時代”にあった家族の絆や人間模様、青春と愛の物語を紡いでいく。同時に、現代の“一見して何でもあるけれど若者が夢を持てない時代”を描き、過去から現代に通じる希望を見つけだす、時代を超えたヒューマンラブエンターテインメントを繰り広げる。
――本作制作の背景を教えてください。
<野木>
2018年に『アンナチュラル』で市川森一脚本賞の副賞としていただいた長崎旅行に新井順子プロデューサーと一緒に行った際に、当時の県知事が「ぜひ長崎を舞台にしたドラマを」とおっしゃられていたんです。映画のあとに同じ3人で何を作るかというときに、ふと長崎旅行のことを思い出して。「端島が舞台の物語なら日曜劇場になるんじゃないか」と言ったら、新井さんが「ある気がする!家族も描けるし!」と乗ってきた。じゃあどういう話にしようかという部分は、映画の撮影が終わった打ち上げも兼ねて、塚原さん、新井さんと一泊二日で温泉に入りにいって話し合いました。そのときに、塚原さんが「過去だけではなく現代のストーリーも取り入れて、映画『タイタニック』で、ヒロインのローズが過去語りをするような構図にできないか」とアイデアを出してくれたんです。
<塚原>
過去の時代を描くとなると映像化のハードルが上がるだけでなく、視聴者の皆さんに感情移入してもらうことも難しくなります。だから(新井)順子さんから「時代モノかもしれない」と聞いたときに、監督として聞き捨てならない!と思って(笑)。私は2人の長崎旅行に同行できなかったこともあり、いい意味で客観的に端島について知ることができたのも、今となっては功を奏したと思います。当初は行ったことがない島の物語に正直のめり込めなかった部分もあったのですが、話を聞くうちに日本のエネルギーの主役が石炭から石油に移行した時代のダイナミックさを改めて知ることができて。そんな歴史的時代にあったさまざまな愛を描くのは、魅力的だなと思うようになりました。
――そんな本作は、このチームで手掛ける初めての日曜劇場となりますね。
<野木>
脚本を書く立場としては、日曜の夜に観ていただくドラマなので、幅広い年齢層に観てもらえる作品になるように意識しました。日曜劇場といえば『半沢直樹』のような痛快な逆転ストーリーのイメージが強くなっていますが、本作は原点回帰ともいえる家族やヒューマンドラマとしての要素が強い作品になっています。
<塚原>
家族や友情も含め、いろいろなラブストーリーが詰まっているので、それが日曜劇場らしさになっているのではないかな。実は、私自身が観て影響を受けてきた過去の家族ドラマも意識していて、クランクイン前に観直してから撮影に臨みました。そんな素晴らしい作品と自分の作品を並べるのはおこがましいですが、偉大な作品の要素を少しでも取り入れられたらいいなと思っています。
――神木隆之介さんのキャスティング理由について教えてください。
<野木>
神木さんはちょうど30代前半で、若者の青春を描くドラマにはちょうど良い年齢でした。本作では70年の時間軸を描くこともあり、40歳の方に20代を演じてもらうのはさすがに難しいと思っていて。神木さんにお願いしようと決めたのは連続テレビ小説『らんまん』(NHK)の放送前でしたが、日曜劇場を背負えるだろう期待もありました。
<塚原>そうそう。30代前半で、視聴者の皆さんにも馴染みがあり、日曜劇場を背負っていただける人、という難しいキャスティングでしたが、その中で神木さんが私たちのイメージにピッタリだったんです。
――神木さんの一人二役という設定はどのように生まれたのでしょうか?
<野木>
塚原さんから「現代のストーリーを入れてほしい」という話があったときに、過去を振り返る構成なら一人二役のほうがいいのではないかなと思ったんです。過去と現代、それぞれに別の主役ができてしまうのも違うなと…。神木さんなら一人二役できそうという他力本願な気持ちもありました(笑)。過去パートでは、神木さんのイメージに近い、明るくまっすぐな鉄平を演じていただくので、現代パートでは神木さんが今まで演じていなさそうな役にしたく、ホストという設定にしました。
――実際に神木さんの演じ分けをご覧になっていかがですか?
<塚原>
撮影現場では、いつもすごく柔軟に対応されています。二役を演じるというのは、どちらのキャラクターも自分の中から引き出さなければならないので、器用に分けなければいけない難しさがあります。神木さんはそういった面も非常にお上手。もしかしたら苦しんでいることもあるかもしれませんが、そういった素ぶりは一切見せずに楽しそうに演じてくださっていて、そんな座長についていくのがとても楽しいです。
――神木さんに加えて、豪華な出演者たちにも注目が集まっています。キャスティングのこだわりや、それぞれの魅力は?
<野木>
それぞれ違うタイプの俳優さんに集まってもらえましたね。神木くんと清水尋也くんは全く違うタイプの俳優さんですし、杉咲花さん、池田エライザさん、土屋太鳳さんもパッと見ただけで、明らかに異なるキャラクターを演じているとわかると思います。若い俳優さんを知らない年配の方はもちろん、外国の方が見ても混乱せずに楽しんでもらえると思います。
<塚原>
基本的には、それぞれが一緒にお仕事をしたい俳優さんの名前を挙げてキャスティングが進みましたね。現代パートにもひと癖ある俳優陣が揃っていて、個性的なお芝居のぶつかり合いを観ることができます。過去と現代パートの空気感が全く違っているので、その違いも見どころ。同じ日に過去と現代のシーンを撮影することもあって、「水がない…!」というセリフがあったかと思えば、その後の撮影では高級車から降りてくるシーンがあったりして。まるで2本の別作品を撮っているような感覚になります(笑)。
<野木>
キャスティングでいえば、新井さんが炭鉱夫役を集めるのにかなり苦労していますよね。炭鉱夫に見えると同時に、しっかりお芝居ができる人を探すのが大変らしくて。屈強な体格の俳優さんは、誰も彼も他の時代モノの撮影でスケジュールを大きく抑えられていて困るという裏話もあったりして(笑)。
<塚原>
そうそう。それに若い世代の俳優さんは細くて色白な方が多くて、炭鉱夫のイメージとはちょっと違うこともキャスティングの難しさに繋がっています。さらに、撮影で毎日会うのは神木さんくらいで、他の皆さんは1週間に一度会うかどうかというくらい、多くの方に出演してもらっています。それだけの人数をまとめるのは本当に大変ですが、そこで新井さんの手腕が光る。まさに潤滑油のような存在でフットワークが軽く、みんなの姉御的な立ち位置でまとめてくれるからこそ成り立っている撮影現場です。
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