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福利厚生型マッチングアプリ導入拡大、最先端“AI”がかつての“世話焼き仲人さん”に

ORICON NEWS / 2024年10月21日 9時10分

福利厚生の縁結びアプリ「Aillgoen」

 コロナ禍を経て大きく成長し、“出会いの場”としてすっかり定着したマッチングアプリ。運営各社がしのぎを削る中、独身従業員向けの福利厚生サービスとして2020年に誕生したアプリ「Aillgoen(エールゴエン)」。一定の条件を満たした企業に勤める独身従業員のみが利用できるサービスで、縁が結ばれるのは同サービスを導入している他企業の従業員のみ。AIによるサポートにより、相手の好感度が可視化されるなど、令和ならではのサービスに見えるが、実は一昔前の”仲人さん“に似た一面を持つという。なぜ今、AIによる縁結びが企業の福利厚生として求められているのか。開発者である株式会社Aill(エール)代表取締役社長の豊嶋千奈さんに話を聞いた。



【画像】「キモいと思われたかも…」と悔やむことも少なくなる? “狛犬AI”の助言メッセージ

■深刻化する独身者の“家と会社の往復”脱するには「企業専用にせざるを得なかった」

 「Aillgoen(エールゴエン)」は、共働きを見据えたパートナー探しを目的としたマッチングアプリ。雇用や福利厚生を大切にしている企業のみが導入でき、福利厚生の一環として、その企業に勤める従業員が利用できる。身元のはっきりした安心・安全な相手と出会えるだけでなく、家事育児を半分以上負担しようという意欲のある男性会員が8割以上。社会全体では、いまだ家事育児の負担が女性に偏りがちな現状を鑑みると、画期的なサービスだ。しかし、なぜ“企業の福利厚生”として、マッチングアプリサービスを始めたのだろうか。この問いに対して豊嶋さんは、「企業専用にせざるを得なかった」という。

 「今、女性側は大変ですよね。仕事と子育てをワンオペで支えて。仮に自分のパートナーが家事育児を男女同等にやりたいと考える人だったとしても、物理的に家事育児に参加できなければ、一方がキャリアを諦めることになってしまいます。2人で仕事と家庭を支え合うためには、お相手の職場の制度も整っていないとダメなのです。後からパートナーの会社の制度を変えさせることは難しい、だからこそ、最初からライフとワーク、両方を大切にしている企業に所属している方を対象にせざるをえなかったんです」(豊嶋さん/以下同)

 このような前提があるからこそ、エールゴエンを導入できる企業には一定の条件があり、基準を満たしていない場合は導入をお断りする場合もある。

 「導入していただける企業は、共働き・共育てを実行し、弊社が提携している経済団体や第三者機関のお墨付きのある企業に限られています。有給取得率などの実績を確認させていただき、大企業に限らず、100人規模の会社にも導入していただいています」

 2020年の正式リリースから4年、2023年には導入企業が1000社を突破。一般的な企業における独身者の割合は3~4割にもかかわらず、独身者向けの福利厚生がほとんどないことから、導入を決める企業は現在も増え続けている。

 「最近では、経営者の方から人気が高まっています。独身は身軽なので、不満が溜まれば離職してしまう可能性も高い。企業エンゲージメントを高め、離職率を減らすためにも、すべてのライフステージを大切にする必要があるんです」

 豊嶋さん自身の会社員時代の経験もアプリ開発のきっかけとなったという。産休・育休・時短勤務の人などと比べ、独身者は、年末年始や休日出勤、残業などでフォローに回されてしまいがち。その結果、会社と自宅の往復だけになっている人も多い。

 「会社員時代、目の前の仕事をがむしゃらに頑張っていたんですけど、頑張れば頑張るほど永遠に仕事が降って来る。お世話になっている先輩方がどんどん産休育休に入っていく中、先輩が戻ってくるまで頑張ろうと思っても、エンドレスなんです。ようやく取れた休日に出会い目的でマッチングアプリを使っても、勧誘や既婚者に当たってしまう。婚活サービスは値段が高くてお相手に求めるハードルが上がってしまい、合コンはコスパ・タイパが悪い。もっと働く人同士で効率よく出会う機会はないのか、ないなら自分で作るしかないと考えて、前の会社を飛び出しました」

■加速する若者の恋愛離れ、仲人役は独身者が望んだ“AIによるサポート”

 東京都が少子高齢化対策の一つとして、独自のマッチングアプリを用意するほど、深刻化している出生率の低下。その背景にあるのは、若者の恋愛離れだという。マッチングアプリが普及していて、一見すると昔よりも恋愛がしやすいように見えるが従来のマッチングアプリの難しさを豊嶋さんは明かしてくれた。

 「職場恋愛や、学校での恋愛だと、デートに誘ったり、告白したりする前に、周りの人や共通の友人に相談しますよね。でも、マッチングアプリなどのバーチャル環境には、共通の友達・知り合いがいないんです。自分で考え、自分で行動しなければならない。失敗したくない、傷つきたくない思いがある若者には、このハードルが高い。そこで考えたのが、両者の仲立ちをし、友達の役割をするAIです」

 エールゴエンの従来のマッチングアプリとの一番の違いは、狛犬の姿をしたAIが会話のきっかけやデートに誘うタイミングなどをアシストしてくれること。これを利用することで、現代の若者が恐れる恋愛の“失敗”が少なくなる。

 例えば、デートに誘うタイミングを迷っているとき、答えはAIが教えてくれる。チャット欄にお誘いの言葉を打ち込んだとしても、断られそうなタイミングでは、コメントが送信される前に「まだ誘わないほうがいいかも」とAIが止める。さらに、「一番好きな映画は何か聞いてみて」など、自然に会話を続けるためのアイデアまでもサポート。AIを使うかどうかは利用者が選べるが、AIによるサポートを受けるとデート成約率が76%まで上昇する(サポートなしの場合28%)。

 仲人役がAIだと「機械的で自然ではない」という意見もでてきそうだが、実際に、人よりもAIの方が気軽に利用しやすいという実態もあるという。

 「サービス開始前に、20~30代の独身約120人にヒアリングをしました。仲立ちは、人がいいのか、AIなどのシステム系がいいのかと。その答えは、全員『人以外』でした。紹介者に気を使ってしまう、客観的なアドバイスが欲しい、親しくない仲人さんに本音を伝えるのは難しい…というのが主な理由です」

 AIには感情がなく、どんな接し方をしても傷つかないこと、客観的なデータに基づいた的確なアドバイスがもらえること、本音を話しても外に漏れることはないこと、どれも「AIだからこそ」の利点。AIが個人情報を学習する設定にはしておらず、情報は安全性の高いサーバに暗号化して預け、流出しても読解できないように対策するなど、安全管理面にもしっかりと配慮している。これらの点を考慮しても、人よりもAIに任せた方が安心、となるのだろう。

■昔ながらの「世話焼きな人」がAIに変わっただけ「自然な恋愛と何も変わらない」

 AIが友達の役割を果たすことで、丁寧に的確なコミュニケーションを重ねることができる。それは大きなメリットだが、学校や職場などリアルな環境で出会うような自然な恋愛と異なる部分も出てくるのだろうか。その点について、豊嶋さんは「自然な恋愛と何も変わらない」と強く主張する。

 「私は普通の恋愛と一緒だと思っています。実は、エールゴエンは、今まであったものを最新の技術でアップデートしただけなんです。一昔前でしたら、社内にいるおせっかいなお姉さんが、あの人とあの人が合いそうだから今度食事でもしてみたら?と縁をつないだり、合コンを組んだりしてくれていましたよね? それがAIになっただけ。ハラスメントの関係で、社内で縁をつなぐ人がいなくなってしまったり、コスパ・タイパを重視する風潮が強まったりと、色々な価値観が変動した今、昔からいたおせっかいなお姉さんが自然な流れでAIになった…それだけのことなんです」

 ひと昔前の仲人のように、AIに繋いでもらうご縁。ただ、交際が始まった後、AIのアシストがなくなることに不安を覚える人はいないのだろうか。

 「ほとんどの方が、お付き合いが始まった後はAIがなくても平気だとおっしゃいます。関係が深くなると、将来の心理的安定性が確保されているので、コミュニケーションを取れるようになります。この人は好きになっていい人で、行動をしても振られない、むしろ応えてくれる、将来を見据えられる相手だ…となると、AIがなくても問題なく行動を起こせるようになっています」

 AIのおかげで安心・安全まで手に入れることができる“福利厚生の縁結びアプリ”。独身者に向けた支援で、ライフステージに影響されずに働き続けられる人材が増えたり、独身の幸福度が上がり働く意欲が増したりすることは、導入する企業にとってもメリットとなるだろう。豊嶋さんは今後の展望をどう考えているのか。

 「お付き合い開始で強制退会なので、今後はその先のこと…長いライフステージの中で、もっとずっと寄り添っていけるようなサービスを展開していきたいと考えています。例えば、夫婦とか上司と部下とか。株式会社AillのAIは人と人の間に入ることが得意なので、コミュニケーションで人生を豊かにするような事業展開を今後していきたいです。エールゴエンの導入により、従業員の幸せが企業の幸せ、そして日本の幸せに繋がれば嬉しいです」

取材・文/森下なつ

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