障がい者へのサポート、「ほっといてくれ!」迷惑ケースも…当事者が言及「サポート不要なら工夫を考えましょう」
ORICON NEWS / 2024年11月8日 6時0分
障害を持つ人に出会った。何らかの手助けをしたほうがいいケースもある一方、当事者からすると別の考えもある。徐々に視野が狭まる病によって32歳で完全に視力を失いながらも、精神科医として10年以上にわたって患者さんの心の病と向き合っている福場将太さんは、「やり過ぎサポートにご用心」と投げかける。初の著書『目の見えない精神科医が、見えなくなって分かったこと』(サンマーク出版)より一部抜粋、再構成して紹介する。
【画像】鉄拳がイラスト、福場将太さんの似顔絵
■「あなたが怒ってしまっては、その人はもう誰にも声を掛けなくなるかもしれない」
「社会的弱者」というと、高齢者や障がい者がイメージされることが多いです。そして手助けをしてあげるのが社会正義のように言われます。
視覚障がい者に対しても、路上で見かけたらサポートしてあげようと思ってくださる方は多く、それはとても有り難いことです。しかし、第一部でも少しお話ししましたが、視覚障がい者には、「ベテラン」もいれば、「ビギナー」もいます。常時サポートが欲しい人もいれば、自分でやれるから基本的にはサポート不要という人もいます。
そして親切心からやってあげたサポートが、実は迷惑だったり的外れだったりして、トラブルになることも少なからずあります。
例えば、ご飯を食べに行った時に、お箸を割ってから渡してくださる方がいますが、お箸を手に取れれば「割る作業」が視覚障がいの支障になることはありません。タクシーに乗った時にシートベルトを巻いてくれる運転手さんもいますが、それも目が見えなくてもできることなので、不要なサポートです。
もちろんその優しさは本当に尊いものなのですが、視覚障がい者にも色々な人がいて、中には「自分でやりたかったのに!」「ほっといてくれ!」と憤慨してしまう方、「子ども扱いされて情けない」「自分はそんなに無力に見えるのか」と落ち込んでしまう方もおられます。誰にも悪意はないのにサポートしたほうも、されたほうも傷ついてしまう。本当に悲しいことですね。
私からすれば、気を遣ってサポートしていただけるのは本当に有り難い。そのおかげで自分がこの社会で生活できているのは間違いないと思っています。
ただ弱者かと言われると常時そうではなく、確かに弱い場面もありますが、ちゃんと障がいを克服している場面、バリアバリューによってむしろ人より強くいられる場面もたくさんあるのです。助けが必要な時はちゃんとSOSするからそれまでは何もしなくて大丈夫、というのが今の私の素直な気持ちです。
しかし、SOSが苦手で、積極的に声を掛けてあげなくてはいけない視覚障がい者もいます。もしかしたら助けを求める「ヘルプマーク」みたいに、大丈夫の意味を持った「ノーヘルプマーク」があってもいいのかもしれませんね。
ただ視覚障がいに限らず、困っていそうな人がいたら声を掛けてあげようという優しさは人間の宝です。お人好しやお節介は矯正すべき性格ではありません。むしろ誇れる性格です。トラブルになったとしても、めげずに声を掛けてあげてほしいと思います。それで助かる人がたくさんいますから。
そして障がい当事者のほうは、たとえ自分に向けられたサポートが迷惑で的外れだったとしても、やっぱり笑顔で感謝を伝えられる心を持ちましょう。
あなたが怒ってしまっては、その人はもう誰にも声を掛けなくなるかもしれない。そうなると困ってしまう障がい当事者もたくさんいるんですから。そんなにサポートが不要なら、ちゃんとそれを示す工夫を考えましょう。
■福場将太(ふくば・しょうた)
1980年広島県呉市生まれ。医療法人風のすずらん会 美唄すずらんクリニック副院長。広島大学附属高等学校卒業後、東京医科大学に進学。在学中に、難病指定疾患「網膜色素変性症」を診断され、視力が低下する葛藤の中で医師免許を取得。2006年、現在の「江別すずらん病院」(北海道江別市)の前身である「美唄希望ヶ丘病院」に精神科医として着任。32歳で完全に失明するが、それから10年以上経過した現在も、患者の顔が見えない状態で精神科医として従事。支援する側と支援される側、両方の視点から得た知見を元に、心病む人たちと向き合っている。また2018年からは自らの視覚障がいを開示し、「視覚障害をもつ医療従事者の会 ゆいまーる」の幹事、「公益社団法人 NEXTVISION」の理事として、目を病んだ人たちのメンタルケアについても活動中。ライフワークは音楽と文芸の創作。
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