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くるり主催『京都音博』でASKA、羊文学、フジファブ、ももクロ玉井詩織ら11組が熱演

ORICON NEWS / 2024年10月23日 14時3分

くるり主催『京都音楽博覧会2024 in 梅小路公園』 撮影:井上嘉和

 くるりが主催するライブイベント『京都音楽博覧会2024 in 梅小路公園』が10月12日・13日、京都・梅小路公園 芝生広場で開催された。『京都音楽博覧会』は、くるりが出身地である京都府の梅小路公園で2007年より行ってきたイベントで、18回目となる今年も、昨年に続き2日間にわたり国内外のさまざまなアーティストが出演した。

【写真】ASKA、ももクロ玉井詩織、羊文学ら全出演者ステージフォト

 開演前に司会のFM COCOLO DJの野村雅夫が、くるりの岸田繁(Vo/Gt)と佐藤征史(Ba/Vo)を呼び込むなり、「こんなん何年ぶりやろ」(岸田)「雨の心配がないのは」(佐藤)と、両名もホッと胸をなで下ろした文句なしの晴天の下、「2024年、『京都音楽博覧会』、スタートです!」という岸田の開会宣言で、今年も『京都音博』が幕を開けた。



10月12日:くるり歓喜「今年は晴れました!」
ASKAが国民的ヒット曲を“魂”の熱唱

■CHO CO PA CO CHO CO QUIN QUIN
 冒頭から「秩父」「ワタツミ」「キューバ」「空とぶ東京」……と、中南米の音楽から日本のお祭りまでを横断するような多国籍かつ予測不能な楽曲群で、梅小路公園を独特なムードで包み込んだ“チョコパ”ことCHO CO PA CO CHO CO QUIN QUIN(チョ・コ・パ・コ・チョ・コ・キン・キン)。その個性的な名前はキューバ民謡のリズムパターンを由来とし、Daido(作曲/映像)、So(サウンドエンジニア/DJ)、Yuta(Ba)にサポートを加えた布陣で、民族音楽とエレクトロを融合した浮遊感のあるグルーヴを次々と繰り出すさまは、問答無用の心地良さ。モダンなミクスチャーサウンドで終始、聴衆に新鮮な驚きを与え続けた次世代の新鋭が、くるりの目利きの確かさを軽やかに証明してみせた。

■菊池亮太
 ストリートピアノや「バーでバレずに○○を弾く方法」等のYouTube動画が話題となった、総視聴回数3億回以上を誇るピアニスト/作編曲家の菊池亮太は、ラフマニノフのメドレーに即興でくるりの「ジュビリー」をさらりと織り交ぜたかと思えば、自身の作にも関わらず「難しくて弾き切れるか分からない(笑)」と笑った超絶技巧の「パガニーニ変奏曲」などを演奏。「この方と一緒にできると10年前の僕が聞いたら何と思うのか、感慨深い気持ちです」と岸田を招き入れる。それに対し「ずっと好きでYouTubeを見てました」と返した相思相愛の2人が向かい合い奏でたのは、くるりの「さよならリグレット」。『京都音博』ならではのスペシャルセッションが生んだ美しい調べが、梅小路公園にどこまでも優しく染みわたっていった。

■KIRINJI
 結成、デビューもくるりと同時期ながら初出演となったKIRINJI。堀込高樹(Vo.Gt)が「初めての『音博』ということで僕らも楽しみにしてました」と告げ、小田朋美(Syn.Vo)、シンリズム(Gt.Cho)、千ヶ崎学(Ba)、伊吹文裕(Dr)、宮川純(Key)という盤石の面々により、「だれかさんとだれかさんが」「悪玉」「Rainy Runway」と上質なポップミュージックを連発。小田がメインボーカルを担った「killer tune kills me」をはじめ、10月中旬でもまだまだ暑い日中に一服の清涼剤となる役割を果たしていた。他にも、軽快で洗練された「時間がない」や、ゆったりとしたBPMの堂々たる「進水式」と、言葉より何より音楽で、KIRINJIとは何たるかを雄弁に表した至福の全6曲だった。

■Daniele Sepe & Galactic Syndicate
 『音博』では海外アーティストが招聘されることでもおなじみだが、今年は岸田が20年以上敬愛し続けるDaniele Sepe & Galactic Syndicateがイタリアはナポリから来日。SabbaことSalvatore Lampitelli(Vo)が見事な歌唱で瞬時に心をつかみ、「コンニチハ京都!」とごあいさつ。ゴージャスなバンドサウンドを背に、鮮やかな水色のシャツをまとったSepeの艶のあるサックスが響きわたり、エキゾチックでプログレッシブな、ごちゃ混ぜのワールドミュージックには自ずと体が揺れる。後半戦には、くるりとマンドリンを手にした松本大樹(Gt)が登場。岸田が「Danieleたちとレコーディングした曲を披露したいと思います!」と配信されたばかりの「Camel(’Na Storia)」や「La Palummella」でナポリ民謡×くるりという新境地でも魅せた、念願の共演となった。

■羊文学
 羊文学は1曲目の「Addiction」から歪みまくったビートで圧倒。今年はアジアツアーを成功させ、12月には初のアメリカ進出となるハワイ公演も控える世界照準のオルタナティブロックを、ひたすらクールにかき鳴らしていく。塩塚モエカ(Vo/Gt)が「今年も『音博』にお招きいただき、皆さんにもお会いできてとてもうれしいです。最後まで楽しんでね」というかれんなMCとは裏腹のマッドな轟音で攻め立てる新曲「Burning」といい、河西ゆりか(Ba)と現在休養中のフクダヒロア(Dr)に代わりドラマーを務めるユナ(ex. CHAI)のタイトなリズムがいざなった「OOPARTS」といい、静かなる高揚感がずぶずぶと脳内を侵食していく快楽と中毒性は健在。2年連続の出演を果たした理由を音で示した。

■ASKA
 今年の『音博』の最大の見どころの一つと言えるASKAは、「京都に引っ越して間もなく2年、呼んでもらって本当に光栄です。ただ、今ツアー中でちょっと喉を壊しててさ……いつもの俺はこんなもんじゃないんだよ(笑)。でも、魂で歌いますので」と「はじまりはいつも雨」を歌い出す。いきなりの名曲にはどよめきが起こり、その声は次の曲のイントロでさらに大きくなる。国民的ヒット曲「SAY YES」に、またも喜びに満ちた歓声が沸き上がる。「笑って歩こうよ」や自らアコースティックギターをつま弾いた「帰宅」は、夕暮れ時のマジックアワーともベストマッチで、「僕はこの瞳で嘘をつく」のジャジーなリアレンジも秀逸。何より圧巻だったのは、ピアノと歌だけの導入ですでに涙腺崩壊の「太陽と埃の中で」、さらに「気持ちいいな~また呼んでください、参加できて幸せでした。ありがとう!」と最高のシチュエーションで歌い上げた「PRIDE」。名曲の数々を惜しむことなく、いや、容赦なく放ったASKAは、レジェンドにふさわしい記憶を『音博』に刻み付けた。

■くるり
 松本大樹(Gt)、野崎泰弘(Key)、石若駿(Dr)、加藤哉子(Cho)に、後藤博亮(Vl)、江川菜緒(Vl)、朴梨恵(Va)、佐藤響(Vc)ら弦楽四重奏、さらにはDaniele Sepe、Galactic SyndicateからAnthonello Iannotta(Perc)、ヒューマンビートボクサーのSHOW-GOと最大13人という豪華メンバーによる壮大な「ばらの花」の途中、岸田が拳を高く突き上げた光景は、今日という日の幸福を如実に表していたワンシーンではないだろうか。「ブレーメン」「Liberty&Gravity」「Time」「California coconuts」でも表現に応じて巧みに編成を変化させていく中で、「『音博』を長くやってきて良かったです、最高のステージを楽しんでます」と岸田も充実の表情。前奏のギターから鼓動が高なる「ロックンロール」では、くるりの音楽と共に生きてきた多くの観客の笑顔にも胸を揺さぶられる。

「『音博』と言えば雨でびしょびしょになった思い出もあるかもしれませんが(笑)、今年は晴れました! 今日はたくさんのいい演奏をありがとうございました」と岸田が代表して感謝を述べ、Sepeのメロウな旋律が感動を増幅させた「潮風のアリア」に続いて、アンコールの「琥珀色の街、上海蟹の朝」でもSHOW-GOのビートボックスやSepeのフルートは縦横無尽。贅沢なコラボレーションが彩った初日のフィナーレとなった。

10月13日:盟友フジファブリックが美しいステージ
大トリ・くるりは「何か胸がいっぱい」

■SHOW-GO
 2日目のトップバッターは、くるりの岸田が「エグいよ、音楽の魔術師」と称賛したスキルを発揮し、馬が荒野を駆けるような足音からインワードリップベースのうなる重低音までを、百聞は一見に如かずと言わんばかりに繰り出してみせたヒューマンビートボクサーのSHOW-GOだ。「ほとんどの皆さんが初めて見ると思うんですけど、ワンマイクで全部やっているので、まあまあキツくて長時間はできないんです(笑)」と、たった一人の大舞台に緩急自在のブレイクビーツを編み込んでいく。「僕は北海道から3年ぐらい前に京都に引っ越して。マイク一本で『京都音博』に出られるとは考えてもみなかった」と吐露し、最終的には客席から思わず声が上がるほど強烈なパフォーマンスで、その名を知らしめた。

■玉井詩織(ももいろクローバーZ) feat. 武部聡志
 昨年、武部聡志プロデュースのスタジオジブリのトリビュート盤『ジブリをうたう』に参加。それに伴う今年3月のコンサートでも岸田と「崖の上のポニョ」でコラボしたのを縁に、『京都音博』初出演となった玉井詩織(ももいろクローバーZ) feat. 武部聡志。ももクロの「ROCK THE BOAT」や「風の谷のナウシカ」で緑豊かな梅小路公園に広がった清廉な歌声には心が洗われるよう。その後も「となりのトトロ」やくるりの「男の子と女の子」では岸田とのデュエットが再度実現し、これには「とても光栄でした」と感激しきりの彼女。ギターを手にしたクライマックスも、初のソロアルバム『colorS』収録の「日常」やタオルが回った人気曲「泣くな向日葵」、ももクロのアンセム「走れ! -ZZ ver.-」で大いに盛り上げ、ソロシンガーとしての魅力と可能性を存分に感じさせてくれた。

■平野和
 9年前に雑誌の対談で岸田繁と出会って以来くるりファンを公言。ウィーンを拠点に活動するバリトン歌手・平野和(ひらのやすし)は、ド頭からTHE BOOMの「島唄」で美声を震わせ、「『京都音楽博覧会』初見参!」とたんかを切る。シューベルトの「死と乙女」や「魔王」を圧倒的な存在感で熱唱する一方、大の阪神タイガース好きと明言するなどトークは親近感たっぷり。野外フェス自体初出演だったが、「どうしても岸田さんがほくそ笑むプログラムにしたくて」とグノー、マーラー、ショスタコーヴィチ、バーバーらの楽曲を5カ国語で歌い分けたのもさすがで、「ドレスコード間違ってますよね。汗がハンパないんですけど(笑)」とタキシードを脱ぎ捨て、「僕が一番好きな作曲家の曲を」とくるりの「Remember me」を歌い始めるや場内は拍手喝采! 「くるり、『京都音博』愛してます!」とあふれる情熱と音楽愛を爆発させた。

■Daniele Sepe & Galactic Syndicate
 Daniele Sepe & Galactic Syndicateは主催のくるり同様、両日出演。それだけでも岸田が「現存する作曲家で一番尊敬している大好きな人」と心底リスペクトするのが伝わってくる。そんな彼らは、本来であればこの後バトンをつなぐはずであったが、体調不良により惜しくもキャンセルとなったmiletの思いを継ぐかのように、1日目のメニューにさらに2曲を追加。Sepeが自らボーカルを取るなどインプロヴィゼーションも含めた新たな見せ場を設け、前日以上に自由に、大胆に、観る者を楽しませた。インターバルを挟んだくるりとのパートでは、Sepeがアレンジとプロデュースを手掛けた、くるりの過去曲の再構築「Camel(’Na Storia)」や古きカンツォーネの日本語詞訳「La Palummella」と意欲的な新曲群を聴かせ、何とも『音博』らしい多幸感いっぱいの絶景を生み出していた。

■フジファブリック
 2025年2月で活動休止するフジファブリックを見られる残り少ない貴重な機会ともなった『京都音博』。オープニングの「ショウ・タイム」から気負うことなく、「KARAKURI」でも平然と変態をやってのけるテンションで最新アルバム『PORTRAIT』の収録曲を届けた。夕焼け前の梅小路公園がきらきらとしたウィンドチャイムと電子音に包まれた「Water Lily Flower」も、ため息が出るような美しさだ。「『京都音博』に参加できることをうれしく思ってます。くるりには本当に尊敬の念がありますし、盟友と言ってもらえるなんて幸せです」と、大阪・茨木の練習スタジオでくるりの「さよならストレンジャー」を聴いてノックアウトされた、ただのファンだと当時を振り返る山内総一郎(Vo/Gt)。「またこのステージに戻ってこれることを夢見て……世界で一番カッコいいバンドに心を込めてバトンを渡します」と彼らが最後に託した「若者のすべて」を、一生忘れることはないだろう。

■くるり
 「miletの分まで……!」という意思は、前日より4曲追加かつ当日のセットリスト変更にも表れていた気合十分のくるりは、梅小路公園中に響き渡らせた「Morning Paper」~「In Your Life」で壮大な幕開け。岸田が「ナポリから愉快な仲間たちが来てくれました、もうブラザーです」とDaniele SepeとAnthonello Iannottaを迎えた「京都の大学生」は豊潤の極みで、この座組だからこそ生まれたハピネスとエモーションがたまらない。中でも「Liberty&Gravity」は、Sepeが出演した到達点である今年の『音博』に組み込まれると、この頃からすでに始まっていた今日に通じる道を感じる。「何か胸がいっぱいでね。憧れの人に会えたり、いい意味で「まさかこんなことが起こるとは」ということが起きて……願ったり思ったりすると、かなうんやなって。そういう曲を歌います」という岸田の言葉が添えられた「奇跡」が、すっかり夜のとばりが降りた梅小路公園に溶けていく。

 「東京のタワーレコードでDanieleのCDを買って20年聴き続けてたんですけど、去年イタリアに行ったときにふと『交響曲第一番』と『天才の愛』のリンクを貼って連絡してみたんです。返事が来ると思ってなかったのに、「君は僕と一緒で音楽にボーダーを作らない人なんだね」と言ってくれて……」と語り、偉大なるSepeを背中に感じながら、うれしそうに「潮風のアリア」を歌う岸田。そして、「裏で佐藤さんと「めっちゃ良くない?」って話をずっとしていて。皆さんのおかげで素晴らしい『音博』を作り上げることができました。本当にありがとうございました、また来年!」と、恒例の「宿はなし」で締めくくり。音楽が全てをつないだ過去最高の『京都音楽博覧会』が終幕した。

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