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星野真里×加藤ローサ『きみ継ぐ』 原作者とドラマ側で合致した思い、女性同士の恋と親子愛に「少し前は断られることも多かった」

ORICON NEWS / 2024年11月15日 8時40分

ドラマ化した『きみの継ぐ香りは』(C)小川まるに/シーモアコミックス

 俳優の星野真里と加藤ローサがW主演し、母親のセクシャリティや親子2代にわたる初恋と家族愛をテーマにしたドラマ『きみの継ぐ香りは』(TOKYO MX1 毎週金曜 後9:25~9:54)が放送開始した。原作は、ドラマ化もした『花嫁未満エスケープ』で知られる小川まるに先生の、コミックシーモア発のオリジナルコミック。相次ぐドラマ化への思いや、多くの読者に共感を呼んだストーリーに流れるメッセージを聞いた。

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■韓国ドラマの影響も? 商業コミックの「こういう題材はあまり読まれない」を覆す

──ドラマ『きみの継ぐ香りは』の放送が始まりました。原作の小川先生からはどうご覧になりましたか?



【小川まるに】少し前に見学させていただいた撮影現場の雰囲気がとても良くて、素敵なドラマになりそうだなと思っていましたが、想像以上に素晴らしかったですね。映像が本当に優しくてあたたかくて、私が原作で大切にしてきたことをきちんと汲み取ってくださったことをうれしく思いました。

──主人公の桜を演じる星野真里さん、その初恋の相手である萌音を演じる加藤ローサさんについてはいかがでしたか?

【小川まるに】お2人に決まったと伺った時点で「ぴったり!」とうれしくなりました。桜のまっすぐで少し不器用なところだったり、萌音の誰もが恋してしまうような明るくて素敵な笑顔だったり。星野さんもどこかのインタビューで「(加藤について)萌音がコミックから飛び出してきたみたい」とおっしゃっていましたが、原作を読んでくださった方ならきっと同じような感想を持たれるんじゃないかなと思います。

──小川先生にとっては長編デビュー作に続く2作目の実写化です。先生のどんな作風がドラマ制作者に“刺さる”のだと自己分析されますか?

【小川まるに】特にドラマ化を意識して描いているわけではないのですが、本作は韓国ドラマに背中を押されたところがありました。最近、韓国ドラマをはじめ、エンタメ業界では異性同士だけじゃない恋愛を描いた作品がとても増えています。もともと女性同士の恋愛ものを描きたいと思っていたのですが、少し前まで商業コミックの分野では、「こういう題材はあまり読まれない」として断られることも多かったんですが、時代が変わりつつあるのを感じていて。シーモアコミックスの編集者さんに提案したところ、すぐに「やりましょう」と言っていただけたという経緯があります。

──たしかにドラマやコミックには時代が映し出されますね。

【小川まるに】それともう1つ、これは国内のドキュメンタリーなんですが、お互い子連れでパートナーになった女性同士のカップルのエピソードを見まして、お子さんたちがごく自然に“2人のママ”の関係を受け入れていることに感銘を受けたんです。これからの時代の家族のあり方というか、親のセクシャリティも含めて親子で会話できるような未来を想像できたのが、本作を描きたいと思ったきっかけでした。

──本作でも、桜の一人息子である高校生の透輝くんは、母親の性志向をごく自然に受け入れている。こうした価値観の世代がこれからの世界を作っていくんだなという希望が感じられました。

【小川まるに】一方で、アラフォーの桜や萌音は自分のことなのに戸惑いもあって。自分のセクシャリティに悩んでいる方も、まだまだ多い世の中なのかなと思います。またセクシャリティだけじゃなく、生きていく上で自分はマイノリティ派だからと生きづらさを感じている方は世代関係なくいると思っていて…。ドラマ制作者さん側からは、「生きづらさを抱えている人に寄り添いながら、誰かを好きになることの素晴らしさが伝わるドラマにしたい」とおっしゃっていただきました。私も同じことを考えながら描いてきたので、きちんと意図を汲んでくださったことを本当にありがたく思っています。

──実写化にあたって、先生のほうからドラマ制作サイドに「ここは大切にしてほしい」とお話ししたことはありましたか?

【小川まるに】わりと早い段階で脚本を見せていただいて、原作を理解してくださっていることがわかったので、特にすり合わせする必要はなかったです。ドラマオリジナルの要素もありましたが、キャラクターについてしっかりと掘り下げてくださっていたので、そこはドラマでどう描いてくださるか楽しみにしています。しいて言えば、このお話はラブストーリーの要素もありつつ、家族の物語でもあるので、どちらかに比重が寄りすぎないようにとはお願いしました。

──読者には女性が多いと思いますが、桜と萌音、どちらに共感する人が多いのでしょうか。

【小川まるに】どちらも母親として子どもを宝物のように愛しんでいるという点では、おそらく多くの方に共感していただけるのかなと思います。ただ、初恋をずっと心の中で大切にしてきた桜に対して、その思いを受け止めなかった萌音を「嫌なやつ」と思ってしまった方も、もしかしたらいたかもしれません。だけど、友だちとしては好きだけど、恋愛対象としては見られない。そういう相手に好意を寄せられた時に、どう応えたらいいかという葛藤って、きっと多くの方が経験したことがあると思うんです。

──相手が異性同性に関係なく。

【小川まるに】はい。好意を否定するのはいけないことだとされがちですが、好意に応えられない側の苦しみもあるわけで。萌音にはそうした難しい感情をすべて背負わせてしまいました。「実は最も多くの方が共感できるキャラクターなのでは?」とも思っていたので、萌音についてはとても考えながら大切に描いてきました。演じるのも難しいキャラクターだと思いますが、ドラマ視聴者さんにも萌音の複雑で繊細な感情が伝わればいいなと思っています。

■「多様性」を頭でっかちで考えるのではなく、大切な人の幸せを願う“当たり前”のこと

──『きみ継ぐ』を描くにあたって、大切にしてきたことを教えていただけますか。

【小川まるに】本作もそうですが、私が描く人物はあまり突拍子もない考え方をする人はいないんです。それはたぶん私が平凡な人間だからだと思うんですけど(笑)、多くの方が考えるようなことしか私も考えられない。それをマンガとして読んでもらうために、“当たり前”のことを掘り下げる、というんでしょうか。「意外とみんな似たようなことで悩んでいるんだし、だったら自分らしく突き進めばいいんだよ」ということを提示できたらいいなと思って描いていました。

──“当たり前”のこととは?

【小川まるに】本作だったら、親は子どもの幸せを願っているし、子どもも親に幸せであってほしいと思っている。多様性という言葉で頭でっかちで考えるのではなく、目の前の大切な人の幸せを願うという当たり前なこと。それが社会に広がっていけば、もっとシンプルな世の中になるんじゃないかなという、そんな願いみたいなものを登場人物たちに体現させたところもありました。

──最後に視聴者、読者にメッセージをいただけますか。

【小川まるに】前作の『花嫁未満エスケープ』もそうでしたが、私はあまりハッピーエンドとかバッドエンドとか明確な区切りを付けるよりも、キャラクターがその先も日常を生きていくような終わり方をするのが好きです。おそらく多くの方が気になるのは、「桜と萌音の2人がどんな結末を迎えるか?」ということだと思いますが、彼女たちがその先の人生をより良く生きていくためにどんな選択をするのか、最後まで見守っていただけたらうれしいです。

(文:児玉澄子)

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