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カプレーゼの拡大解釈、定期的なSNSバズも…モッツァレラチーズは家庭にいかに定着したのか?

ORICON NEWS / 2024年11月19日 7時30分

森永乳業「クラフト フレッシュモッツァレラ」シリーズ

 物価高、ワインの売上減少などの影響から、苦戦を強いられているチーズ市場。そのなかで、堅調に推移しているのがモッツァレラチーズをはじめとした料理にも活用できるチーズだ。特にモッツァレラは、家庭料理にちょい足しすることで見映えも良く、料理や食事の質を上げてくれるものとして重宝されている。元々「外食で食べる」イメージの強かったモッツァレラチーズは、家庭の食卓にいかに定着・浸透していったのか。シェアNo.1「クラフト フレッシュモッツァレラ」ブランドを持つ森永乳業の担当者に話を聞いた。

【画像】自分でかわいくデコれる! ミニトマトとモッツァレラでカプレーゼ飴

■チーズケーキ、イタ飯ブームを機に、1998年に家庭用モッツァレラチーズを発売



 チーズにはプロセスチーズとナチュラルチーズがあるが、ナチュラルチーズは発酵や熟成が進むにつれて味の癖や臭いが強くなるため、苦手な人も多い。しかし、その中でもモッツァレラチーズの味はシンプルで癖がなく、ナチュラルチーズが苦手な人でも食べやすいという利点がある。いろいろな料理に使われるが、中でもトマトやバジルと合わせた「カプレーゼ」は最も王道な食べ方として知られている。

 森永乳業では1933年に「森永チーズ」を発売し、1970年にクラフト社と提携。1970~80年代は、国内需要に合わせて、直食系のプロセスチーズをラインナップに揃えていた。

「当時の商品ラインナップとしては、スライスチーズ、箱入りタイプのカルトン、個包装のポーションなどがありました。ポーションは、今だと4個、6個などが主流ですが、当時は2個から48個の”パーティーダイス”までありました」(森永乳業株式会社 チーズ事業マーケティング部 伊佐地祐子さん/以下同)

 その後、1980年代後半にチーズケーキ、1990年代に「イタ飯」(イタリア料理)のブームが起こり、ナチュラルチーズの需要が高まってくる。「この洋食化の流れは大きなチャンス」だと捉えた同社は、1992年に「小さなチーズケーキ」シリーズを発売。さらに1998年に業務用のモッツァレラチーズ、翌1999年に家庭用の「クラフト フレッシュモッツァレラ」を発売した。

「イタ飯ブームの頃、外食や海外旅行でカプレーゼを食べて感動したという方がたくさんいらっしゃいました。そこで『お店で食べるもの』というイメージの強いモッツァレラチーズをご家庭でも味わっていただけるようにと家庭用を開発しました」

 業務用の商品は限られた量の生産だったため、家庭用の製造開始に当たって工場に新たなラインを作り、国産ナチュラルチーズの増産体制を整えた。

「当初はイタリアの技術者をお招きしてお話を伺い、見様見真似で技術を習得したそうです。ナチュラルチーズは菌の制御がとても難しいのですが、当社の社内基準値は非常に厳しいレベルになっており、社内基準値以下に菌数が保てるように、品質を担保し続けることにすごく苦労したと聞いています」

 品質管理のために、チーズを保護する水についても研究を重ねた。この水はチーズのみずみずしさを保ち、型崩れを防ぐためのもの。この水の配合を何度も検討した結果、保存料を使わずに、現在31日間美味しさをキープすることができるようになった。

 さらにモッツァレラチーズ特有のモチモチ食感だが、これはチーズの組織を形成するタンパク質とカルシウムが関与している。「カルシウムがタンパク質の間をつないでネットワークを形成しているのですが、そのネットワークが密だと硬く、粗いと柔らかくなります。モッツァレラのモチモチ食感を表現するために、カルシウムとタンパク質の量やバランスを調整し、何度も試作を重ねていきました」。

■モッツァレラを家庭料理に定着させるまでの苦心、”一口サイズ”と”味付き”が契機に

 発売当初の「フレッシュモッツァレラ」パッケージ(写真左)、カプレーゼの写真を添えた2007年当時のパッケージ(写真右)

 1999年春、家庭用の「フレッシュモッツァレラ」が発売されると、「カプレーゼが家で食べられてうれしい」との喜びの声が寄せられた。しかし一方で、それまで馴染みのなかったモッツァレラを家庭料理として馴染ませることに苦労もあったという。

「外食で食べたことのある料理を『家でも作れる』と理解していただくことがなかなか難しく、塩やオリーブオイル等で整える味付けの調整も当時はハードルが高かった。『なんだか難しそう』と思われるお客様もいらっしゃいました。まずお家で簡単に作れると知らせること、そして家で作ってみたいと思っていただくことの2つが難しかったと思います」

 ユーザーを啓蒙するために、レシピサイトでモッツァレラチーズを使った様々なレシピを紹介。また発売当初はチーズだけの写真を載せていたパッケージを変更し、2007年からカプレーゼなど料理の写真を入れるようになった。さらにスーパーの売り場では、トマトの旬の時期はカプレーゼ、冬の時期はお鍋など、季節ごとに訴求方法を変更している。

 さらにモッツァレラの新たなバリエーションとして、2018年に、切る手間が要らないひとくちタイプの「ひとくちフレッシュモッツァレラ」を、2023年に、爽やかなバジル味の「バジルフレッシュモッツァレラ」を発売した。

「カプレーゼやサラダなどいろいろな料理にアレンジできるのがモッツァレラの良さですが、実際に調理する際、賽の目状に切っている方もいらっしゃいました。賽の目に切るのは大変ですし、『小さくしてほしい』と要望もあって『ひとくちフレッシュモッツァレラ』を発売しました。また『味付けをどうしたらいいのか分からない』という方のために、最初から味が付いた『バジルフレッシュモッツァレラ』を出しました。元々モッツァレラはクリスマスなどのイベント時、年に1~2回の登場頻度でしたが、『本当はもっと頻繁に食べたい。でも家で作るのは大変そう』という方が多くて。『ひとくちフレッシュモッツァレラ』は切る必要もなく、サラダに乗せると見た目も可愛いです。お子様からお年寄りまで召し上がっていただきやすいサイズで、一気に食べる機会が増えたようです。今このひとくちタイプが市場の約4割まで成長しています」

 これらを振り返った時の転換点として、「コロナ禍」で家庭料理へのとらえ方が変化したことが大きかったと伊佐地さんは分析する。

「コロナの時期は外食ができない分、食卓にエンタメ要素が求められました。その要素を満たすものとして、洋食訴求だけではない広がりも見られました。例えば冬だったらモッツァレラ鍋。伸びるチーズが楽しく、トマト鍋やキムチ鍋ともマッチしました。韓国のトレンドも追い風になり、チーズダッカルビやチーズハットグ、チーズボールなどの韓国料理まで広がり、多くの皆様に受け入れていただけたと思います」

■“桃×モッツァレラ”の大バズでカプレーゼの定義が拡大「まだまだ伸びしろはある」

 昨今ではユーザー発信でSNSでのバズレシピが生み出され、さらにモッツァレラチーズの楽しみ方が広がってきているという。

「古くから、モッツァレラの王道料理だったカプレーゼですが、昨今その定義が広がってきています。定番のトマトだけでなく、夏は桃カプレーゼ、秋は柿カプレーゼ、春は苺カプレーゼ。季節のフルーツとモッツアレラの組み合わせが、SNSで頻繁にバズっているのを見かけます。果物だけではなく、マグロなどの魚介と合わせるなど、さまざまな形で楽しまれています」

『フレッシュモッツァレラ』が発売されて25年目の節目を迎え、今後もモッツァレラチーズのさらなる拡大に向けて取り組んでいくという伊佐地さん。

「共働き世帯が増え、お客様のニーズとしては『美味しいものを作りたい』と『簡単・時短がいい』ニーズが常に共存しています。『美味しいもの』を作るなかで、その手間をいかにショートカットできるかが重要で、モッツァレラはそのニーズを叶えられる商品です。特に『バジルフレッシュモッツァレラ』のような”味つき”シリーズを育成することで、さらに購買を増やせると考えています。購買データによると、実はモッツァレラチーズは日本全体の約1割程度にしか届いてないそうです。でも外食では約9割の方が食べたことがあるものなので、まだまだ伸びしろはあります。モッツァレラの楽しみ方を伝え続けていきたいと思います」

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