市川團十郎、恒例の1月新橋演舞場公演 『裏表忠臣蔵』で大星由良之助 「昨今の日本の中で報われる忠実な男を作り上げたい」
ORICON NEWS / 2024年11月21日 13時14分
歌舞伎俳優の市川團十郎が21日、都内で2024年1月新橋演舞場公演『双仮名手本三升 裏表忠臣蔵』の取材会に登壇した。
【全身ショット】キリッとした表情で登壇した市川團十郎
團十郎は、14年から毎年、新橋演舞場の1月公演に出演し、今回でお正月公演への出演は15回目となる。外題となっている『裏表忠臣蔵』は、七世團十郎が『仮名手本忠臣蔵』の全十一段を「表」とし、一段一段それぞれに創作場面をつけ「裏」として、全二十二幕で天保4年(1833年)に初演した作品で、その後八世團十郎、九世團十郎へと代々受け継がれた。今回は『仮名手本忠臣蔵』を表、現代に合う新たな形で練り上げられる場面を裏として、忠臣蔵の世界にさまざまな方向から光をあて、現代の観客に古典歌舞伎の名作をより楽しんでもらえるような新たな『裏表忠臣蔵』を作り上げる。
取材会で團十郎は「私が子どものころの歌舞伎界の『忠臣蔵』は最も重たい通し狂言と言っても過言ではない。そして『忠臣蔵』は、どんな時でもお客さんが入るっていうのが歌舞伎の中での暗黙の了解だったんですけども、やはり近年、『忠臣蔵』をやってもお客さんが入らない月が出ている。なんでかと思ったら、歌舞伎の問題や役者の問題もあるんですけど、『忠臣蔵』は基本的に仇討ちで、名前は全部変わってますけど、大星由良之助の塩冶判官に対する主君を思う気持ちを一貫として貫く人間、日本人の魂みたいなものの理解度というものが薄れてきているんじゃないのかな」と推察。そして「その気持ちを古典で丁寧に表現することの重要性も大事なんですけど、私も改めて見てると、私ですら『難しいな、理解しづらいだろうな今の人には』って思うことが何個か出てくるんです。そういうところも、ちょっとなんとかしたいなっていう気持ちとか、そういう思いが強い。だから『仮名手本忠臣蔵』いうものは素晴らしいし、変えてはいけないですし、来年の3月には歌舞伎座ちゃんと通しもするわけですから。そういう意味では、1つこういう提案もあるではないのっていうような気持ちで挑みたい」と意気込んだ。
大星由良之助、早野勘平、斧定九郎、高師直の4役を務める。大星由良之助は史実で大石内蔵助、高師直は史実で吉良上野介となる。高師直について團十郎は「歌舞伎は別の感覚で、普通にしゃべるとただのパワハラですよね。本当に単純にパワハラの問題ですよね」とばっさり。「全体的に権力を持ったおじちゃんがパワハラしてるだけの話じゃないですか」とストーリーをざっくりすぎる説明をして「言い方悪いか(笑)。だけども、実際そうですよね」と苦笑い。「それを現代の方々にも、もうちょっとわかりやすく『そりゃそうなるわな』と。日常生活の中で慢心している人間が、そういうことを起こしてしまい、大きなことになっていく、ということの中でのストーリー性をやっぱり重要にしたい。高師直に関しては、そういう傲慢な周りのことが見えてない、今もいるじゃないですか、資本主義の上の方にいるおじいちゃんたちみたいな、ああいうような人物像を歌舞伎として表現していきたい」と意気込む。
大星由良之助については「それに対して、今ではないですけど、主君が不合理なことで腹を切る。最後は仇とは言わないですが、そこを汲み取って、わかりましたと、一貫して貫く男。でも、そういう人間でありながらも遊んでる部分もある。で、この遊んでる部分は何なのかっていうことも、変な話で7段目だけ見てたらわかんない。どうして遊んでいるかということを、もうちょっと写実に、リアリティを持って表現したい。内蔵助は日本人を代表する人物を演じたい。つまり、勤勉だし、真面目だし、忠義だし、今の我々は真面目に働き、時間通りに来て、仕事もきちんとやる。でも、なぜか報われないような部分が多かったりしますよね。こういう昨今の日本の中で、報われる忠実な男を作り上げたい。日本の今の忠実な男、誠実な男をやっぱり報われる男にしていきたいっていうのが、僕の由良之助のビジョンです」と話していた。
上演は、来年1月3日から26日まで新橋演舞場で。
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