子どもの学習に「付きっきり」はNG? 英語教材を展開するサンリオに聞いた“子どもを惹きつける”秘密
ORICON NEWS / 2024年11月28日 9時10分
子ども向け教育プログラムといえば、各社さまざまなアプローチの商材を展開し互いにしのぎを削っています。学力向上を主軸としたプログラムはもちろん、知育や楽しみながら学ぶスタイル、AIの導入など、まさに多種多様。とはいえ“親しみやすさ”がフックとして重要なため、キャラクターを効果的に活用することはマスト。そんななか、サンリオが展開する英語教材『Sanrio English Master』が好調とのこと。後発ながら、親や子どもを惹きつける理由とは? 子ども自身が楽しみ、飽きさせない秘訣について聞きました。
【画像】これもサンリオのキャラクター? 子どもが夢中になるその姿とは…
■親の過干渉で「ネガティブ行動」が続出!? 同志社大学との実験で明らかに
昨今はさまざまな子どもの教育プログラムがありますが、なかでも注目されているのは英語教育。小学3年生からの外国語活動が必修化され、英語教育の重要性はますますアップ! でも、「親でさえ英語がしゃべれないのに…」と不安になる人も多いでしょう。それだけにこうした教材を使おうとする人は増えており、本格的な学習スタイルから、知育や遊びながら学ぶもの、AIを活用した手軽なアプリなど、内容も価格も多種多様です。
ただ、いくら親が積極的に教材を与えても、子どもが継続して学んでくれないことには意味がありません。子どものやる気を出すために「親も一緒になってやらなくては!」と意気込んでも、共働き夫婦や忙しい家庭ではなかなか難しいもの。実際、どこまで付きっきりにならなくてはいけないのでしょうか。
2023年に英語教材『Sanrio English Master』を開発したサンリオで、エデュテイメント事業部ゼネラルマネージャーを務める太田誠二郎さんは、それについて「興味深い実験結果があります」と教えてくれました。
「同志社大学赤ちゃん学研究センターと共同で、『Sanrio English Master』を使い、ビデオを介在した英語学習の視聴実験を行いました。その結果、保護者が英語学習に一緒に取り組むことで、お子さんの英語の発話回数は4.6倍と大きく増えたんです。ところが、介入時間がある一定数を超えると、逆にお子さんから『飽きた』といったネガティブワードが増えるようになりました」
この視聴実験は、2・3歳の親子131名を対象に、ビデオを介在させた子どもの第二言語発話を促すうえで、養育者(親)の介入の有効性について検証したもの。『Sanrio English Master』のビデオを題材に実施(インプット/アウトプット/養護者からのフィードバックの3段階)。まず設定条件として、養育者がビデオ学習に「A.まったく参加しない」、「B.フィードバックのみ行う」、「C.フィードバックに加え後半から参加する」、「D.最初から最後までビデオに参加し、フィードバックを行う」の4つパターンに分けました。
一見、「D」の付きっきりパターンが理想的に見え、実際に発話も増加するように思われます。しかし、「D」では「ネガティブな行動」「ネガティブな発話」がともに増えてしまっており、「B.フィードバックのみ行う」を超える結果に。
つまり親ががんばって介入しすぎると、結果が出やすいように見えて実際は子どもがイヤになり、やめたくなってしまうということ。親がずっと一緒にいることで、甘えが出てしまうのかもしれません。太田さんはこの結果を受けて、「親子で一緒に遊ぶのは週末の20分程度がベストだと考えています」と語ります。
子どもの自主性を育むためにも、「自分の力で成し遂げた」という自己肯定感を得るためにも、親の過干渉は逆効果。これは英語学習のみならず、教育や育児全般に通じそうです。
■子どもたちが没入する理由は? キャラクターと動画の秘密
忙しい親にとっても、「付きっきりでいなくてもいい」というのは安心材料に。『Sanrio English Master』については、「特に共働きのご家庭からは『子どもが自発的に取り組んでくれる、没入して楽しんでくれるので、家事などができて助かる』といった声を多くいただいています」とのこと。親がいなくても、子ども自身がやる気を出してくれる秘訣はなんなのでしょう。
「サンリオのキャラクターたちだけでなく、幼児が興味を持ちやすい、目で追いやすいキャラクターとして、BUDDYEDDY(バディエディ)などを開発しました。最初のきっかけとして、こうした親しみやすさやキャラクターを好きになっていただくことは大切だと考えたからです。グッズがほしいとの声に応え、10月からはグッズ販売もスタートしました」
ちなみに、ただ親しみやすいキャラクターが登場するだけでなく、ビデオ動画のタッチについてもこだわりがあるとか。
「ただ英語“を”学ぶのではなく、英語“で”学ぶを大切にした知育の側面もあります。英語を使って『手を洗う』とか『スポーツをする』ということを学ぶから、今の子どもの生活習慣にフィットしたものでないと違和感が出てしまう。そのため、動画も現代風にして、生活のアレコレを違和感なく英語で学べるようになっています。そうしたビジュアルや音、演出にはこだわっていますね」
動画視聴に慣れた今の子どもたちを虜し、没入させるのにはこのあたりにも要因があるようです。
ですが、一度ハマったとしても、飽きっぽい子どもに続けさせるのは至難の業! 苦労している親御さんも多いでしょう。英語は、子どもたちが初めて触れる異言語。失敗して「できなかった」「苦手だ」と刷り込まれてしまえば、続けることはおろか「英語は嫌い!」になってしまう可能性も。
「子どもにとっては、『何かを成し遂げたこと』だけでなく、『成し遂げるために頑張ったこと』そのものを認めてあげる必要があると思っていて。たとえば教材の1つであるクイズ玩具は、答えが間違っても『Nice try!』と、否定的なワードは返しません。逆に褒め言葉は『Good!』『Ok!』にとどまらない豊富なバリエーションを盛り込んでいます」
この「頑張ったこと自体を認める」というコンセプトは、サンリオピューロランドの英語で遊ぶアトラクション『BUDDYEDDY WONDERFUL CLUB』でも踏襲。話した英語のアイテムが映像に飛び出し、それらを使ってパーティの飾り付けをするという内容で、英語が上手に話せなくても「Try again!」とキャラクターたちが応援してくれます。それに背中を押されてどんどん英語を話したくなるというもので、昨年秋のオープン以来、すっかり人気アトラクションの1つとなりました。
このように、キャラクターたちと遊びながら、楽しみながら、英語“で”さまざまなことを学べるのが、『Sanrio English Master』が後発ながら好調な理由。昨年秋からは、やる気スイッチグループの子ども向け英語・英会話スクールWinBeのコース『Fun Kids English』の教材にも採用。教室で友だちや先生との会話などでアウトプットすることで、より表現力を定着させることができるそうです。
さらに11月30日からは、両社のコラボによる新たな英会話教室『Sanrio English Studio「We Act!」』も開校。子どもたちが映画制作を通して英会話を学ぶ場で、バディエディたちのほか、監督にハローキティ、脚本家にシナモロール、カメラマンにポムポムプリンも登場。生徒がキャストになってアフレコ体験もでき、子どもが楽しめることは間違いないでしょう。
「英会話を学ぶのはもちろん、クラスメイト同士で協力しながら映画を制作するという共創力やコミュニケーション力を育むための教室。自分たちが作った映画が形になるという達成感は、子どもたちにとって大きな成功体験になるはずです」
そもそも、なぜキャラクターでお馴染みのサンリオが子どもの英語教育に乗り出したのかというと、同社の理念が「みんななかよく」ということから。そのためにはまず「自分となかよく」なることが大事で、子どもの自己肯定感を高めることにも繋がるといいます。
「お子さん1人1人の良さを認め、次はその良さを伸ばそう、育てようという教育の領域へと自然に繋がりました。中でも英語教育からトライを始めたのは、子どもたちが生きる未来は、今よりもっと国境を超えて『なかよく』することが求められる世界がやってくると考えたからです」
何十年も言われていることですが、小学3年生から必修化された現在は、英語学習からは逃れられません。どうせやるなら、子どもがみずから楽しめるのが一番。ただ、せっかく英語を話せるようになっても、「学校で流暢に話すと笑われる」といった風潮は今なおあるよう。
「幼少期から英語を学ぶ子が増えている一方で、小3で初めて英語に触れる子もいるという二極化した現状がそうした“からかい”の風潮を起こしているのかもしれません。しかしそれによって英語嫌いになってしまうのは、とても残念なことです。お子さんの可能性を伸ばすためにも、また世界中が『みんななかよく』なれるためにも、英語を話すのは楽しい、英語が自己実現に繋がった、そんな体験を1人でも多くのお子さんに届けていきたいと思います」
(文:児玉澄子)
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