タモンズ、夢破れた今も燃え続ける漫才への情熱「くすぶり方には自信がある」 『くすぶりの狂騒曲』で振り返る過去
ORICON NEWS / 2024年12月18日 21時0分
お笑いコンビ・タモンズ(大波康平、安部浩章)がモデルとなった映画『くすぶりの狂騒曲』が公開中だ。2014年「大宮ラクーンよしもと劇場」オープンに合わせて結成された、ユニットの大宮セブンに所属するタモンズの苦悩や紆余曲折が描かれる。そんな2人にORICON NEWSがインタビュー。これまでのタモンズ、そしてこれからのタモンズについて聞いた。
【写真】仮面ライダーの変身ベルトネタで話題となったタモンズ(大波康平、安部浩章)
■くすぶり具合には自信「バッドエンドで撮りたいなら」 大宮セブン俳優陣のそっくり具合に衝撃
大宮セブンは、2014年「大宮ラクーンよしもと劇場」オープンに合わせて結成されたユニット。東京の劇場でくすぶり続けていた、タモンズ、マヂカルラブリー、GAGなどの芸人が、大宮ラクーンよしもと劇場に集められ、「島流し」と揶揄(やゆ)されながらも成功を夢見る、芸人たちの軌跡をたどる“大人たちの青春群像劇”。
映画では、タモンズの大波康平役を和田正人、安部浩章役を駒木根隆介が演じる。ほか、マヂカルラブリーの野田クリスタル役は時岡司、村上役は吉田壮辰。囲碁将棋の文田大介役は東虎之丞、根建太一役は柾賢志。すゑひろがりずの南條庄助役は伊勢村圭太、三島達矢役は金森規郎。GAG少年楽団のSJ役は高津戸信幸(MAGIC OF LiFE)、福井俊太郎役は大村わたる、ひろゆき役は重岡漠(※映画の中では、ひろゆきが脱退する前の設定)。ジェラードンのアタック西本役はカメオ(そいそ~す)、かみちぃ役は平岡亮。以上の俳優陣が、映画の中で芸人たちを忠実に再現している。
――映画はいつ知ったのでしょうか?
【大波】プロデューサーが2代目の大宮の劇場の支配人の方で、もともと映画を撮りたいというのは知ってたんです。大宮セブンが題材の映画をいよいよ撮るとなって呼ばれました。最初に「マヂカルラブリー、すゑひろがりずを主役にするとハッピーエンドの話になる。それは嫌だ。みんなが勇気を持てるような、夢破れても頑張ってバッドエンドとなるタモンズが主役でいく」と言われまして。そんなの俺らしかおらんか、と(笑)。もうその時は、みんな活躍されていたので。
【安部】今、くすぶり方に対しては、ちょっと自信ありますから。
【大波】Pが、バッドエンドで撮りたいなら、まぁしょうがない、と。
【安部】僕は怪しいと思いましたよ(笑)。こんなに気合を入れて真剣に真面目に描くものと思ってなかったところもあって。吉本製作って聞いたら、普通は不安になるじゃないですか(笑)。でも、キャスティングで、大波役を和田さんがやるらしいとか、僕役を駒木根さんがやるらしいとか聞いた。撮影現場に行かしてもらったら、すごい皆さんが高性能なカメラを駆使して撮影していた。
【大波】撮影も、てっきりiPhone 7で撮るもんだと(笑)。
【安部】良くてGo Proぐらいかな、と(笑)。こんなちゃんとしっかりと真剣に撮っていただいてるんだ、と感じた。そこから、こんなにありがたい話だったんだっていう自覚が芽生えました。
――映画を見ると、和田さんと駒木根さんが完全にタモンズで驚きました。
【大波】でもちょっと和田さんがかっこよすぎて。自分とは思えない仕上がりやった(笑)。結構、俯瞰(ふかん)で観させていただきました。
【安部】謝った方がいいよ。
【大波】本当に申し訳ないと思います。でも、これから僕を演じたことが財産になる日が来ると思う。
【安部】『くすぶりの狂騒曲』が爆発的なヒットしたらあると思いますけど、あなた自体にはそんな価値ないですよ(笑)。逆に駒木根さんは完璧です。超ドンピシャでした。
【大波】俳優さんってスゴい。
【安部】首の角度とか立ち方とかも。でも、本人に聞いたら「別にものまねでやってるわけじゃない」と言っていました。「自分の中に安部さんを入れたらこうなりました」みたい言っていて、やっぱり俳優さんって、すごいですよね。
――大宮セブンのメンバーもめちゃくちゃ似ていました。
【大波】最初に俳優さんが集まった時に「ものまねをするのはやめよう」と和田さんが皆さんに言ったそうで。高度なことをおっしゃってたんで、凡人の僕にはちょっと何言っているのかよくわかんなかったんですけど。
【安部】「憧れるのをやめましょう」みたいに「ものまねするのはやめましょう」と。
【大波】「抜く」と言ってました。大波という人間を抜けば抜くほど似てくるそうです。
【安部】1回、大波の情報をバーっと入れ込んで、でも撮影では抜いていったら似てくるそうです。
【大波】スゴすぎて、ホントかウソかわからないです(笑)。
――お2人が見て、そっくりだなと思った方は?
【安部】僕は(マヂカルラブリーの)村上さんですかね。
【大波】僕は(囲碁将棋の)文田さん。登場するときに楽屋に「おっつー」と入ってくる。あれ、やっているかはわからないんですけど、やりそうなんですよ、あの人。
【安部】ちょっとダサい感じのね。
【大波】これ、僕は言ってないですから。文田さんのあの感じを、どうやって掴んだのか。プライベートなところだから、見られないだろうし。
【安部】村上さんは、ツッコミの前の助走の部分というか。野田さんをチラチラ見ながら「あぁ、あぁ」とか言ってる、あの感じが。伝わるかわかんないですけど(笑)。
【大波】あれも似てた。ファンの方は2度楽しめると思います。ストーリーも楽しめるし、芸人を演じた方の所作も楽しめる。楽しみがいっぱいあると思います。
――TEAM BANANAの藤本友美さんが安部さんの奥さん役で出演されています。実際は似てらっしゃるんでしょうか?
【安部】背中で演技してましたね。どんどん、うちの奥さんも大きくなってきて、だんだん藤本になりつつありまして…。「ペットボトルに口つけないで」という声のトーンも。リビングの照明の暗さとか、そういうのも相まって、すごく忠実です(笑)。
――個人的に大好きな話の熟成肉詐欺の話も出ていました。
【大波】あれはサービスで入れていただきました(笑)。
【安部】唐突に出てきましたね(笑)。まさにあの時は金銭的にも一番、苦しかったですから。
■芸人たちの熱い関係性 トリオになる寸前だったタモンズ
――つきに改名し、その後の「おでん」というトリオになるか迷っていた部分も詳細に描かれます。コンビの紆余曲折を映画として振り返って、いかがでしたか?
【大波】今思ったら結局、腕がなかっただけなんやなって思うんです。でも、あの時は、それを理由だとは1ミリも思ってなくて。僕は自分の外に理由を探していた。で、安部は安部で自分の外に。安部は僕に理由を探して、僕は安部に理由を探していた。で、ぶつかってた。もがいて、ジタバタして、どんどん沈んでいってたんですけど、今思ったら、自分のせいやと思います。
【安部】やっぱり貧乏は悪やなと思いますね。悪っていうとあれですけど、僕らは本当に運が良くて、『M-1グランプリ』で、「もう1回頑張ろうぜ」と言い出した時期と、コロナ禍で配信が普及しだして、そこからテレビに限らなくてもお笑いをやってお金もらえるような仕組みができてきた。そこが重なっていた部分があって、作中でやっていたようなバイト3つ掛け持ちして、とにかくもがいていた時期から比べると、だいぶお笑いに対して向き合える時間も増えた。それがなんかデカかったかなとは思います。
――劇中では、しらたきがインタビュアー役でカメオ出演されています。実際のしらたきさんとは?
【大波】実際はそいつもまだ芸人をやってるんで。別のコンビを組んでいて、一緒のライブとかも出てますし。作中では辞めたんですけど、今も元気にやってます。で、そいつには申し訳ないなという気持ちはある。そいつは今『M-1グランプリ』を目標に頑張ってる。僕らに余裕ができたので、僕らのライブとかに呼んで、ネタをやる場面をいっぱい作るようにしています。
【安部】そいつは今年コンビ組んだばっかりなんで、あと14回『M-1グランプリ』に出られるんですよ。54歳ぐらいまで頑張ってもらいたいですね(笑)。
――あのシーンを撮影して感じたことは?
【大波】あの人って、しらたきだけじゃなくて、何人かが入ってるんですよ。大宮セブンができた時に、めっちゃお世話になってたメンバーで辞めちゃった人も入っていて。
――元えんにちの望月リョーマさんですかね?
【大波】望月さんも入ってます。あそこで辞める決断をして、今もちろん幸せに別のジャンルで活躍してるんですけど、僕らがそこで辞める選択を取ってもおかしくなかった。なんか変な感じですよね。僕の未来線だったなんて容易にあったと思うんで。
【安部】作中で僕が「わ~」と言い出すのも、ホンマにたまたまちょっと早く劇場に行っただけなんです。なぜか根建さんも早く来てて、ちょっと2人の時間が長くて誰もいない空間があった。あそこに気を遣うほかの芸人さんがいたら、あんな話まずしてないやろうし。あの時間帯に、僕と根建さんが2人で楽屋におったから生まれた会話やった。そういう意味でもミラクルというか。
【大波】あの日は、コンビの最後の日でしたから。たまたま(安部が)早く来ていて、根建さんがたまたま早く来ていた。根建さんが遅く来てたら、そのままネタやって「タモンズ終わりです」となっていた。
――もうトリオになる意向を伝えられた方もいらしたんですよね?
【安部】僕らのお世話になってる作家さん、マネージャー、初代のプロデューサーであるX氏には言ってました。最後に大宮の支配人に寄席の合間に「報告しに行こう」と言っていた。その直前でした。
【大波】僕はもう辞めるつもりで行ってるんで「最後のネタか」と思っていた。根建さんとこいつが話してるのを僕は知らないんで。着替えて「これで最後か」と言ったら急に「話がある」と言われて。「もう1回やりたいねん」と。3人になるの決まっていたので「え?」となったら、根建さんが来て「ネタ終わったら、言いに行く前にちょっと話させてくれ」と。それで地下の従業員用のスペースに行ったんです。僕とこいつと根建さんと福井さんで話して「どういうことですか?」みたいな。それで話して、その日、もう1回ネタやって帰ったんです。だから、そこがなかったら、1回目と2回目の間に言いに行っていて終わりでしたね。
――その前にも相談はしていました。
【大波】作中にもあった、僕と福井さんと村氏と海野が飲みながら「こうなるんですよ。どう思います?」みたいな話をしていて。「いいんじゃない」という人もいたり、「タモンズはまだ行けるやろ」という人もいたりして。結構、飲みました。僕らが入れようとしたヤツが、福井さんと同期で。でも、東京NSCの同期なんで、福井さんは大阪NSC。福井さんは、こっちに来てから僕らと仲良くなったんで、そいつのこともあんまり知らんと。で、タモンズの今までの歴史はまだ知らないから「俺じゃ判断できへん」と思ったらしくて、根建さんに「聞いてあげてください。根建さんに間に入ってもらった方が、ちゃんとした判断ができると思うんですよ」みたいなこと言ってくれていた。それで、根建さんは早く来たんじゃないかな、というのもあります。想像ですけど。
【安部】芸人は、やっぱり人の人生には責任持てない。あんまりハッキリと「解散せん方がええよ」とか言わない、言い切らないようにして「お前らがやりたいようにやれよ」というのが、ほとんど。そんな中で根建さんに、ぽろっと言っちゃったから、ああいうことになった。
【大波】辞めんなと言っても、じゃあ売れさせられるんか、と言ったらそうでもない。あんまり、そう言えないんですけど、みんなは言ってくれた。
――本当に実話が元になっているんですね。でも、福井さんはYouTubeで「唯一、ウソがあるなら、あの頃はPOLARはまだ流行っていない」と暴露していましたが…。
【大波】そうなんですよね(笑)。あの後なんですよ(笑)。衣装のことは何も言っていないんですけど、Pはじめいろいろしてくれたんだと思います。びっくりしましたよ、POLAR着ていて。
■『THE SECOND』で話題も今はあくまで劇場 単独ライブの客数を「どこまで人数を増やせるか」
――話は変わりますが、今年5月の『THE SECOND』で大きな話題となりました。反響はいかがでしたか?
【安部】SNSは、「シャバドゥビタッチヘンシーン」の文字が飛び交ってましたよ。別に下心は一切なかったんですけど、東映さんもバンダイさんからも何もなかったですね(笑)。そんなに甘くなかったです。
【大波】でも、知ってくれる人の数は増えましたね。
――ずっと『M-1グランプリ』を目指し続けて、その夢が破れて、また『THE SECOND』という新たな目標ができたことに対するモチベーションの変化は?
【大波】『M-1グランプリ』ラストイヤーの2年前にトリオになるみたいな話があった。それで踏みとどまったのが、あと2回の時だったんです。あと2回を全力でやるって決めてやって、届かなかったんですけど、この2年の漫才が自分の中で納得がいってて。なんで落ちたのか、正直わからない感じで。この感じでネタをやっていったら、もちろん賞レースはないですけど、お客さんは増えるだろうなと思った。『M-1グランプリ』がなくなって「あ~」とは思ったんですけど、別に絶望とか全然なくて。この調子で漫才していったら、行けそうだな、という感じの時に「全国ツアーやろう」となった。お金貯めて全国回ってる時にたまたまで『THE SECOND』ができた。夢が新たにできた、というのも特になかった。『M-1グランプリ』が終わった時に「単独ライブのお客さんを増やす」ということが話し合いで決まった。それの延長線上にあったっていう感じですね。
【安部】「1回コントもやろうか」となったんですよ。漫才のお客さんを増やすために。『キングオブコント』で、例えば準決とか決勝とか、もし行けたら「タモンズを見に行ってみよう」という理由で単独のお客さん増えるんちゃうかみたいな。それでコントの単独をやったりして。で、それと同時に、僕らが『M-1グランプリ』落ちた瞬間に、プロデューサーXさんが「お前らはその吉本の寄席に呼んでもらえる芸人になりなさい」と言われたんです。人気者というよりか、寄席に入れば確実に笑いは取ってくれる枠が絶対劇場は必要。「そこをお前ら目指せばいいんじゃない」と言ってもらえたりした。コントもやりつつ、寄席に呼ばれる芸人を目指した。それで両方走らせながらやれればなと思ってたんですよね。そこに『THE SECOND』ができた。「絶対、こっちのが燃えるやん」みたいな。「よっしゃ!」という感じでしたね。
――第1回は囲碁将棋さんが爆発的な笑いを取りました。大宮セブンにも大きな影響があったと思います。
【大波】そうですね。めちゃくちゃお客さんが増えたと思います。囲碁将棋さんが連れてきましたね。僕らはその年はベスト32で負けちゃった。負けてから、ずっと全国ツアーを月2ヶ所ずつぐらい回ってた。負けてからは来年の『THE SECOND』もちょっと頭の片隅に入れながらいたから今年は決勝のベスト4まで行けたのかなとは思います。けど『THE SECOND』中心という感じではないんですね。
――今後のタモンズの目標は?
【大波】集客ですね。自分らのイベントを、例えば60分漫才とか、単独ライブといった僕らしか出ないイベントで、どこまで人数を増やせるか。オードリーさんは東京ドームを埋めてますからね。同じ人間2人でMAXが東京ドームやったら、俺らが人生かけて何人まで行けるのか興味ありますね。
【安部】メディアとか、賞レースは自分たちの力以外のとこもある。やっぱり自分らの目の前のお客さんを満足させることに集中したいですね。
――大宮セブンとしての目標も何かあれば。
【大波】大宮セブンの目標は、誰かが死ぬまでやることですかね。70歳ぐらいになったら誰か1人ぐらい死ぬと思うんで。お葬式とかできたらめっちゃいいよね。パンイチお焼香選手権とか。
【安部】ご遺体モノボケとかね。それに参加したいんで長生きしたいです。
【大波】最初にはなりたい。まぁ村氏あたりじゃないですか、やっぱり体型的に(笑)。
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