“推し活にはブルーベリー”が定説に…老舗メーカーが挑んだ推し活エナジードリンク 「50mLの小瓶につめた社員の熱すぎるこだわり」
ORICON NEWS / 2024年12月25日 9時10分
“推し活の必須アイテム”として、3月に発売されて以来注目を集めている『LIVE master GEKIMI推し活エナジードリンク』。これまでも、商品の効能から推しのライブの前に摂取するといいと話題になった商品はいくつかあったが、それらは企業側の狙いとは関係なく、ユーザー側が「推し活におすすめ」としてSNSで発信、人気を得たものだった。そんな中、医薬品や飲料・食品、化粧品の老舗メーカーである常盤薬品工業がその名にズバリ「推し活」と冠した「推し活」に推す商品を開発。実際に推し活にいそしむ社員の「何気ないひと言」から誕生したというその開発秘話を聞いた。
【画像】よく見るとハートの目の中にはサイリウムが…推し心を考え尽くしたドリンクのパッケージデザイン
■「推しのどんな姿も見逃したくない」上層部からの疑念を打ち返した“推し活”をする社員の熱意
『南天のど飴』『眠眠打破』などの医薬品や飲料・食品といったヘルスケア商品のほか、化粧品も扱う常盤薬品工業が今年3月4日に発売した『LIVE master GEKIMI推し活エナジードリンク』。“「劇的に見たい!」を応援するエナジードリンク”というキャッチフレーズが付けられたこの商品の誕生の発端は、「会社の先輩の何気ないひと言だった」とヘルスケア事業部(商品企画)の吉川綾美さんは振り返る。
「韓国アイドルの推し活をしている先輩が、ライブに行く際に、まわりのみんなが『推しの姿をよりよく見たい』という理由で、ブルーベリーのサプリを飲んでいるという話をされたことがあったんです。それをきっかけに、弊社は医薬品や食品の製造実績があり、ドリンクも強みにしているのだから、推し活をしている人の需要に合ったブルーベリーのドリンクが作れるのではないかと盛り上がっていきました」(ヘルスケア事業部 吉川綾美さん/以下同)
とはいえ、上層部からは「推し活ってそんなに流行しているの?」「本当にブルーベリーサプリが必要とされているの?」といった声も。その疑念を晴らし、開発への道筋を開いたのもまた、推し活の楽しさを知る社員の熱意だった。
「私も学生の頃から推しがいて、アリーナ席のすごく近い距離なのに、双眼鏡を使っているファンを見ていましたから、『推しのどんな姿も見逃したくない!』というファンの熱意は肌で感じていました。ブルーベリーのサプリメントが話題になっていることについても、推し活友達との情報交換の中で知っていました」
そんなエピソードとともに、推し活のためのサプリメントの市場の伸びや、推し活を題材にしたアニメの人気、メディアで推し活が多数取り上げられ市民権を得ていることなどを調査・分析し、上層部へ説明。開発への理解を得られたという。
その裏には、同社に根付くこんな考え方も後押しとなっていた。
「弊社では『カラダ・ココロ“トキメキ”創造企業』をコーポレートスローガンに掲げています。推し活をテーマにした商品ならば、お客様にその“トキメキ”も一緒にお届けできるのではないかという点も開発を推進するポイントとなりました」
こうして立ち上げたのが、“推しに捧げる愛を応援するブランド”「LIVE master」。その第1弾として送り出したのが、ビルべリー約100個分相当のブルーベリーエキスを配合した『LIVE master GEKIMI推し活エナジードリンク』だった。
■「推し活をする人にエネルギーを!」味、パッケージ、成分…細部まで“推し活”の楽しさとワクワクを表現
“推しを応援する人を応援したい”という思いから、開発ではまず、「弊社の知見やノウハウを活かして、どれだけ最大限、ブルーベリーの成分を入れられるか」がテーマになったと吉川さん。
「50mLという小さい瓶1本なので、入れたい成分も多く大変でしたが、研究担当とやりとりしてギリギリまで挑戦しました」
さらに “エナジードリンク”といえば、元気がないときやここぞというときにエネルギーを補給する飲料だが、同ドリンクが目指したのは、“推し活をする人にエネルギーを与えること”。そのため、ブルーベリーエキスだけでなく、クエン酸やビタミンB1、B2,B6も配合し、「推しのライブやコンサートを最後の瞬間まで全力で応援できることを目指した」という。
ドリンク剤にしたのは、コンサートやライブの前の貴重な時間に手軽に飲めることを考慮してだが、さらに味にも推し活の醍醐味をわかっているからこそのこだわりが盛り込まれている。
「炭酸が苦手な方やカフェインの摂取を気にされる方もいらっしゃるので、すべての世代の方が飲みやすいように、ノンカフェイン、ノン炭酸。そして、何よりのこだわりは味にあります。推しに会ったときのトキメキを味で表現したくて、少しピリッとした刺激感を出せないかと考えました。ピリッにはカプサイシンっぽいものや山椒っぽいものなど様々な種類があるので、ドリンクで演出するのはどのピリッがいいのかには非常に苦心しました。また、飲んだ後、これから推し活を頑張るぞと思えるよう、味に余韻を残したいとも考えて、癖のある味や存在感も意識しました。この仕事に就いてから、私史上、一番試作を重ねました(笑)」
その細かいこだわりはパッケージも同じ。訴求面積が小さい50mLという小瓶にどれだけ「推し活のテンション感や楽しさ、ワクワクを出すか」に尽力。背景にはコンサート会場のライトをイメージしたようなデザインが施され、目がハートになっている双眼鏡のイラストや「どこだって神席 LIVEに おぉ~」など推し活を応援する心強いメッセージが描かれたうちわのイラストなど、トキメキをアップさせるような工夫を満載。ブルーベリーの文字背景も、実はライブの最高潮時に打ち上げられる銀テープをイメージしているというこだわりようだ。
「担当デザイナーも推し活はしていなくても、推し活をしている人への理解が深く、様々なアイデアを出してくれました。自分も推し活をしているからこそ、普段の商品企画とは違ったテンションで携わっていた気がします」
■「目が合った! 絶対私と 目が合った」名作誕生の“推し活川柳”、専用商品だからこその宣伝方法
そんな楽しいテンションは、宣伝方法からもわかる。この商品で、同社は初めて社員の有志による公式Xを展開。社員がドリンクを飲んで実際に推し活をする様子を投稿したり、推し活に関連する「オタクあるある」を配信するなど、商品情報ではない部分をいかに発信するかをテーマにしているという。推しへの想いを込めた「推し活川柳コンテスト」も開催され、今や社内外で推し活仲間の輪が広がりを見せている。川柳では、「目が合った! 絶対私と 目が合った」など、推し活をしている広報担当が思わず「わかる!」と唸った川柳など約1000件が一般から寄せられた。今後もXを軸に、推し活仲間が楽しめる取り組みを実施していく方針だという。
推し活といってもそのジャンルはアイドル、アニメ、スポーツ等々、多岐にわたる。同ドリンクも、「アイドルやアーティストのライブだけでなく、観劇やミュージカル、お子さんやお孫さんの運動会や学芸会や文化祭など、大切なこの瞬間、見逃したくないあらゆる推し活の瞬間にぜひご活用いただけたらと思います」と吉川さん。
推し活をする人にとって、気になるのはドリンクを飲むタイミング。ドリンク自体は、清涼飲料水なのでどのタイミングで飲んでも問題ないというが、社内ではライブ当日は荷物が多くなりがちなので自宅で飲んでから会場に向かう人と、会場で飲むという人に分かれているそう。
「コロナ禍を経て、オンラインでのライブが定着し始めていますが、それであれば、地方にお住まいの方や高齢の方などコンサートが開かれる都市部に出づらい方々も自宅で楽しめます。そのように、推しと会えるイベントのあり方や“推し活”は、今後ますます多様になっていき、推し活市場はさらに拡大すると予想していますので、弊社としては、“推しに捧げる愛を応援するブランド”であるLIVE masterにおいて、今後も尊い時間をサポートできるような商品展開のラインアップをしていきたいと思っています」
LIVE masterからは今後第2弾の新商品も検討中とのこと。推し活をより楽しめるアイテムが増えそうだ。
(取材・文/河上いつ子)
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