推し活ブームを牽引するダイソーの開発力「専門の開発部門があるわけではない」 9割が自社開発だからこそ誰もが推し活担当に
ORICON NEWS / 2024年12月26日 8時30分
2021年にユーキャン新語・流行語大賞にもノミネートされ、今やすっかり市民権を得た「推し活」。その活動に大きく貢献しているのが100円ショップで販売されているグッズたちだ。「推し活」という言葉が存在しなかった時代からグッズの開発に取り組み、推し活ブームを牽引してきたDAISO(以下、ダイソー)に、100円ショップ市場における推し活グッズのブームの変遷と今後の展望を聞いた。
【画像】仕事もはかどる? テレビの上に推しをまつった“祭壇”が…ダイソー社員が地道に商品をカスタマイズして制作
■意外な形で押し寄せた“推し活”の波 きっかけは文房具コーナーから
9月下旬に組み立て式の「推し賽銭箱」や「2WAYひな壇」(どちらも販売終了の店舗あり)などを発売し、推し活に情熱を注ぐ人たちから「こんなのが欲しかった」「推しゴコロをわかっている」とSNSを中心に大きな反響を呼んだダイソー。今や、どの100円ショップでも推し活グッズは売れ筋で、店舗内に専門のコーナーを設けるほどの一大ジャンルとなっているが、ダイソーが手がけ始めたのは、まだ「推し活」という言葉がなかった2011年頃。この年、アイドルグループなどで自分が最も応援しているメンバーを指す「推しメン」がユーキャン新語・流行語大賞にノミネートされたが、そのムーブメントに呼応するべく、パーティー関連のコーナーでコンサートグッズの販売を行っていたという。
その後、徐々に販売するアイテム数を増やしていったのかと思いきや、「推し活」の波は意外な形で100円ショップ界に押し寄せたとグローバル広報課の岩橋理恵さんは振り返る。
「何の前触れもなく、ある時、突然、文房具のコーナーで透明のL版に近いB7サイズの硬質ケースが爆発的に売れ始めたんです。驚いてリサーチをしたところ、推しのブロマイドを入れて、携帯したり飾ったりする人が増えていることがわかりました。であるならば、いろいろなジャンルの商品を展開している弊社には、ほかにも今ある商品の中で、推しがいる人たちのニーズに合わせたものが提案できるのではないかということで、商品開発を進めていきました」
ダイソーが取り扱う全商品約7万アイテムのうち、9割が自社開発。既存の商品に推し活の要素を加えればゼロから作り上げる必要はないし、ニーズを感じてから商品として展開するまでのスピードも速い。そんな自社開発の強みを生かして、その後、文具のジャンルでトレーディングカードに加え、推しのカラーでフレームを作ったカードケースなど、次々と展開していった。
そして、最近推し活をする人たちの間で爆発的な人気を呼んだのが、ファッションコーナーで展開した通称「痛バ」の「痛バッグ」だった。透明素材のバッグにキーホルダーや缶バッジをたくさんつけることで、自分流の推し感満載バッグが手にできるとあって、XやTikTokにオリジナルの痛バを投稿する人が続出、売り切れが続き逆にクレームが来てしまうほどだったと岩橋さんは苦笑いする。
続いて話題を呼んだのが、アクセサリーとコスメ関連のジャンル。「推しのカラーのアクセサリーをたくさん身につけたい」「推しのカラーでネイルを飾りたい」といったファンの心理に応えて、オリジナルアクセサリーを作ることができる6色のビーズやネイルシールを販売。この推しカラーの展開は、靴下などのファッションから文具、日用品に至るまで、あらゆるジャンルに広がり、今も人気を呼んでいる。
■推し心を考え抜いたうちわの文字シール、当日の座席発表にも対応可能
痛バの大ヒットに象徴されるように、100円ショップならではの推し活の楽しみが、ハンドメイドでオリジナルの推し活グッズが作れることだ。バッグやアクセサリーのほかにも、缶バッジやキーホルダーなど、100円ショップで売られている商品だけで作れるアイテムがずらりと揃う。中でも、コンサートやイベントで長らくトレンドとなっているのがうちわだ。
うちわはペンライト同様、推し活の必需品だが、ダイソーでは自分でカスタマイズできるよう無地のうちわとステッカーなどを販売。さらに、推し活をしている社員からの提案で、飾るパーツについてもこんな工夫も施されている。
「ファンミーティングなどでは、当日、抽選で席が決まるケースも多く、その場合、アーティストに一番近い“神席”が当たった人は、推しとコミュニケーションを取るために、その場で目を惹くようなメッセージを描いた応援うちわを作るそうなんです。そのために、『エアハグして』という立体シールなど、会場で貼り付けるだけで簡単に作れるパーツを過去販売したところ、大好評でした」
それらオリジナルの推し活グッズをSNS上に公開する人も年々増加。岩橋さんも「お客様はグッズをカスタマイズするために、本当に上手に100円ショップを活用してくださっていて、ますますこの流れは拡大していくのではないかと思っています」と顔をほころばす。
また、ダイソーでは、社内の推し活もさかんだそう。声優の推し活をしている社員は、テレビの上に自社商品で祭壇を作ったという。もともと祭壇用の商品ではないグッズを使用して、その上にジョイントラックやディスプレイスタンドなどを飾って作り上げた祭壇を社内のコミュニティにアップロードしたところ、多くのいいねが付いた。また、ある社員は推し不在の誕生日会を自社の商品を使用して飾り付ける様子をアップするなど、社員自身が自社の商品を使用して推し活を楽しんでいる。
■SNS、YouTubeなどあらゆる手を駆使した市場調査「今後はグローバル展開も」
現在、推しカラー別のうちわグリップ、推しの写真や切り抜きを入れて持ち歩けるキーホルダー、ぬいぐるみやキーホルダーをホールドしてスマホで撮影できる推し撮りスティックなど、約200種類の推し活グッズを展開しているダイソー。
そのアイデアは、「取引先のメーカー様からご提案いただく場合もあれば、弊社のバイヤーが提案する場合、さらには、弊社内で推し活をしているメンバーの声から生まれるものなど様々」だという。
推し活専門の開発部門があるわけではなく、あらゆるジャンルの専門バイヤーが常に考えており、SNSを見ながらユーザーの声を拾ったり、YouTubeを見て、ユーザーがどのように使っているかを探ったり、辛口コメントがあった場合は、改良方法を考えるなど、日々の動向を見ながら開発にあたっている。
安価で買えて、自分流のアレンジも楽しむことができる100円ショップの推し活グッズ。ダイソーでは今後、推し活市場にどのような展望を抱いているのだろう。
「弊社は現在、グローバル展開を強めていますが、まだ、推し活という言葉が浸透していない国も多くあります。ただ、日本のアニメやキャラクターの文化が海外で人気であることは日々、実感しています。例えば、人気のコミックの中でラーメンを食べるシーンがあると、ラーメンが人気になることはもちろん、ラーメンに乗せるゆで卵を簡単に作れる商品が売れるという現象も起きています。そのような流れからも、いずれ、“カワイイ”と同様に、“推し活”という言葉もそのまま世界で通用するようになるのではないかと感じていますので、今後、世界規模で、ダイソーの商品による推し活の新しい楽しさのご提案を行っていければと考えています」
安価で買えて、自分流にアレンジすることができる100均の推し活グッズ。応援グッズをオリジナルで作りたいという人はもちろん、日常生活を推し色に染めたい人にとっても、今後、強い味方となることは間違いないだろう。
※商品は店舗により取り扱いが異なり、売り切れの場合もございます。
(取材・文/河上いつ子)
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