ソーシャルギフト、元旦に賑わい 友人に贈る“あけおめギフト”とともに自分用“ご褒美”需要も
ORICON NEWS / 2024年12月28日 9時10分
新年の挨拶としてタオルや菓子などを手渡しする「お年賀」。古くから日本に伝わる風習だが、近年は年賀状同様、あまり盛んに行われているようにはみえない。そんな状況に反して、ソーシャルギフトの最大手、LINEギフトでは、昨年(2023年)、元旦の利用件数が急増。それを受け、今年、「新春ギフト特集」を開催したところ、前年比約147%増もの大盛況となったという。どのような層が、どのような商品を、誰に贈っているのか。盛り上がりを見せる「あけおめギフト」の最新事情を担当者に聞いた。
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■母の日、クリスマスほか主要シーズナルイベントに次ぐ取引件数を記録した「新春ギフト」
日頃お世話になっている人たちへ、旧年中の感謝とともに「今年もよろしくお願いします」の気持ちを込めて贈る「お年賀」。歳神様にお供え物をささげる風習を起源に根づいた日本古来の風習だが、フォーマルギフト市場では、「お中元」「お歳暮」とともに、縮小傾向が続いてきた。
しかし、年賀状に代わって、SNSで新年の挨拶を行う人が年々増加しているのと同様に、お年賀もソーシャルメディア上で新しい形へと変化の兆しをみせている。
LINEを通じて品物を贈ることができるLINEギフトがスタートしたのは2015年。新年に利用する人は徐々に増え、2023年の元旦には、クリスマス、バレンタイン、母の日、父の日、ホワイトデーという主要シーズナルイベントに次ぐ取引件数を記録。それを受け、2024年の元旦は「新春ギフト特集」と銘打って、お正月需要にマッチした商品を揃えた「あけおめギフト」を展開したところ、前年比147%の伸び率を記録したという。
ではいったい、どんな人が、あけおめギフトを利用しているのか。
「もともとLINEギフトの利用者は20~30代の女性が多いのですが、新春はそれに加え、若年層や男性の需要が増えるのが特徴です。さらに、2024年には、40代以上の方も増加しました。母の日や父の日、敬老の日などでLINEギフトを贈られた世代が、贈る側として利用していただけたことが要因の一つです。新春のご挨拶は性別も年齢も限定されないので、今後も利用者層はさらに広がっていくのではないかと考えています」(LINEギフト・岩邊貴奈さん/以下同)
■高単価アイテムが人気「自分用ギフト」、一方で「友人ギフト」は多くの人にちょっとしたものを
お年賀は両親や親戚、勤め先の上司、仲人など目上の人へ贈るのが一般的だが、おけおめギフトは主に“友達”と“自分”に贈られているという。「自分用の需要が想定以上に多かったことに驚いた」と岩邊さん。
「近年、クリスマスに自分へのご褒美として商品を買ったり、バレンタインに特別なチョコレートを自分用に買ったりする方が増えていることは、LINEギフトの分析からも把握していました。新春にもこの傾向がみられるのは、1年間頑張った自分への“お年玉”、縁起よく1年を迎えるための“先行投資”のような思いがあるのではないでしょうか。この時期には、福袋や新春セール品なども揃えていますが、比較的単価の高い商品が人気となっているのも“自分用”の特徴です。今年はビューティー系の福袋が人気ですぐに完売だったので、来年はさらに色々なカテゴリや種類を増やしております」
一方、友達用では、低価格帯の商品をたくさんの人に贈る人が多いという。
「関係性が深い相手に単価の高い品を贈るというよりは、日頃お世話になっている多くの方に、ちょっとした感謝を贈りたいと考えられる方が多いようです。スターバックスのコーヒーやコンビニのビール、ミスタードーナツのギフト券など、受け取った人が店舗で商品と引き換えるデジタルギフトが人気です」
また、男性の場合、パートナーや母親に贈るケースや、お正月に家族で集まった時にみんなで食べられるものや、家族で行くための寿司店のチケットなど、家族と一緒に楽しめるギフトを買う人も多いという。
年末年始の様々なシーンに合わせ、LINEギフトでは500円前後の低価格帯の商品や家族向けギフトを拡充するほか、利用者が増加している40代以上の層に向けたアイテムにも注力している。
「40、50代以上の人には、『見栄えがよく、旬の味を贈れる』ということで、お正月にふさわしい特別なパッケージに入ったフルーツが人気です。そのほか、高価格帯のだしや調味料なども人気なので、今後はさらに品揃えを充実させていく予定です」
■デジタル市場の中で受け継がれる「お年賀」という日本人の風習と心
このように盛り上がりを見せるソーシャルギフト内の「あけおめギフト」だが、「新しい市場を作ったというよりは、もともとあった日本独自のお正月ならではの文化風習がデジタルという場所に変わったという印象」と岩邊さん。何より感じたのは、ギフト利用の動機となっている「日本人の変わらない気遣い」だという。
「新春ギフトの売り上げが伸び続けているのは、日頃お世話になっている人に感謝の気持ちを伝えたいという思いを多くの方が持っているということ。様々なシーンでデジタル化が進むなか、『人とのつながりが希薄になっている』という声もありますが、相手を気遣い、思いやる気持ちは変わっておらず形を変えているのだと思います。若い方たちの間では、『ちょっと車を出してもらったからありがとうを伝えるためにギフトを贈る』というように、気軽にLINEギフトを利用する頻度が高くなっており、人とのつながりを大切にしている人が増えてると感じます。新春は、「あけおめ、今年もよろしく」のメッセージと一緒に一年の感謝を贈りたいと考え、大切な人たちとの関係性を作っている印象です」
この高まりをますます盛り上げるべく、LINEギフトでは、ブランドやメーカーと協力しての商品拡充はもちろん、来春は通常のメッセージカードをお正月用にバリエーション豊かに用意するなど、趣向を凝らした様々な企画を準備している。
「今までフォーマルなギフトを贈られてきた年配の方々も、楽な形できちんとお礼の気持ちが伝えられるということを体験したら、便利と感じてもっともっと伸びていく市場だと思っていますので、様々なシーンで利用いただける機会を増やしていきたいと考えています」
LINEの利用者は現在9700万人。そのうちLINEギフトの利用者は1900万人。「あけおめギフト」の利用者はまだLINE利用者全員にまでは及ばないが、その存在の浸透とともに利用者は今後ますます増えることは間違いない。「お年賀」という日本人の風習によるつながりや気遣いは、デジタル市場の中で確実に受け継がれている。
(取材・文/河上いつ子)
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