木村拓哉『グランメゾン東京』続編に込めた思い コロナ禍の苦境を「なかったことにしてはいけない」
ORICON NEWS / 2024年12月29日 7時10分
2019年に日曜劇場枠で放送され、多くの作品ファンを生み出した木村拓哉主演の『グランメゾン東京』。映画『グランメゾン・パリ』公開を控え、公開前日となる12月29日に完全新作スペシャルドラマ『グランメゾン東京』(TBS系)が放送される。
【写真】豪華キャストが続々登場!場面カットを先行公開中
オープンからわずか1年でミシュランガイドの三つ星を獲得した「グランメゾン東京」。しかし、新型コロナウイルス感染症の蔓延で飲食業界、そして「グランメゾン東京」も例外ではなく大きな打撃を受けていた。早見倫子(鈴木京香)は店を維持することばかりを考えてしまい、全ての星を失ってしまう。一方でパリに行ったはずの尾花夏樹(木村拓哉)は姿を消していた。ひょんなことから一日一組限定のフレンチレストラン「メイユール京都」で、倫子は尾花がそこにいると確信する――。
日本で三つ星レストラン「グランメゾン東京」を作り上げた後、世界に挑むためにパリへ行ったはずの主人公・尾花夏樹を演じる木村が、続編にかける想いや演じる上で大切にしていたことなどを語ってくれた。
■パンデミックという実在した時間を大切に
――続編の話を聞いたときの感想を教えてください。
非常にうれしかったと共に、新型コロナウイルス感染症というパンデミックさえなければもっと早いタイミングで皆さんと会うことができたのかなと思いました。ですが、その時間が実在していましたし、やりたかったけれど、やれる状況ではなかったというのが正直なところかなと。そして、このタイミングで続編の話を立ち上げていいならば、フィクションとはいえ、なかったことにしてはいけないと思ったんです。この期間、踏ん張られた方々もいれば、別の選択をせざるをえず、お店を閉めた方々も少なからずいらっしゃる。そういう選択を強いられてしまった方々に対しても、フィクションだからと避けて描くのは嫌だなと感じて。プロデューサーの伊與田(英徳)さんとお話をさせていただいたときに、スペシャルドラマの脚本に盛り込んでもらったんです。
――<パンデミックをなかったことにしてはいけない>という気持ちは、ご自身にも大きく影響があったからでしょうか? 飲食店の実情を見て、そう思ったのでしょうか?
お店とお客様の関係性かもしれないですが、料理を考え、作り、提供し、食べていただくって、究極のコミュニケーションじゃないですか。そのコミュニケーションが取りたくても取れなかった期間というのは、いち出演者としてもすごくつらい時期でもありましたし、飲食を描いたお話なので、そこを避けて通るのは違うかなと。「グランメゾン東京」のメンバーがもう一度皆さんの前にふっと現れるときに、この期間が全くなく「皆さん、お久しぶりです」というのは、飲食を題材とする作品として不自然かなと思ったんです。
■尾花夏樹を演じて変わったこと
――久しぶりに尾花を演じてみていかがでしたか?
尾花を通して、料理という名のエンターテインメントの様々な瞬間に立ち会えますし、色々な気持ちにさせてもらえます。「ミシュランガイド東京2025」の発表セレモニーにスペシャルゲストとして出席させてもらって、「三つ星」に選ばれた方たちの屋号を発表させてもらったんです。そこには前作とスペシャルドラマで監修してくださった「カンテサンス」の岸田(周三)シェフもいて。
ドラマで描かれていることはごく限られた世界かもしれないですけど、その一端を尾花夏樹として味わうこともできますし、共演者、スタッフももちろんそうですけど、撮る人撮られる人が一つのチームとなって特別な価値観と世界観を作り上げていて、そこを煮詰めていくような感じは楽しかったです。尾花を演じるまでは、正直「ミシュラン」と聞いたらタイヤメーカーの名前が浮かんでいたのですが、『グランメゾン東京』で充実した時間を過ごさせてもらったことで、違う響きになりました。それは「ミシュランガイド」というものに対して、ものすごい熱量、モチベーション、ストレスと向き合っている方たちの存在を知ることができたから。全ての命をいただいているという気持ちが生まれたことによって、「いただきます」という言葉の重みがさらに実感できるようになりましたし、個人的にも、作品としても非常に面白いですし、共演者もスタッフも僕にとって宝物の1つです。
――5年という月日は感じられましたか?
尾花は人に対するコミュニケーション能力が高いほうではないので、台本を読んでいても、また険しい道を通っていくのかという思いがありましたし、結果面白いなと思う部分も。鈴木京香さん演じる早見倫子も、倫子さんなりのコロナ禍を過ごし、お店を守った。ですが、守ったからこそ失ったものもあるんだなと。実質、5年弱の時間が経過していますが、この人たちは各々その時間をしっかりと生きてきた人たちなんだろうなと台本を読んでいて感じました。再会という形になりますけど、その過ぎた時間のブランクは、現場でお会いしたときには一切感じませんでした。皆さんがその場に、5年前と同じシチュエーションで、衣装を着ていてくれるだけで、各々のスイッチが同時にカンって入ったような感じでした。
――それはこのチーム、キャスト陣が揃ったからこそでしょうか?
それはものすごく大きいと思います。「カット」の声で役から離れると思うのですが、なぜかずっと役の延長線上にいて。味を当たるのも、本当においしくないと嫌だという気持ちがあるから。倫子さんも、鈴木京香さんのはずなのに、「うちの店で出すカトラリーとしてはどう思われます? 木村さん」と言ってきたり。役の感覚や意識が共存していた現場でした。そして、スペシャルドラマに出演される窪田正孝さん、北村一輝さんという新たな存在も。料理にたとえて言わせていただくと、素材が加わってくれることによって出し方が変わったので、すごくありがたかったです。
■三つ星シェフから受けた影響とは
――スペシャルドラマ『グランメゾン東京』では岸田シェフ、映画『グランメゾン・パリ』では「Restaurant KEI(レストラン・ケイ)」の小林圭シェフという三つ星シェフが監修されています。尾花という役を作るに当たって、お2人から受けた影響はありますか?
岸田さんは、『グランメゾン東京』という作品を作るに当たって、ものすごく太い柱になってもらったなと思っています。発表会で壇上に上がってくる彼を見て、「カンテサンス」のシェフではありますが、『グランメゾン東京』のスタッフが三つ星を獲ったような不思議な感覚になりました。
――若手の成長も描かれる本作ですが、木村さん自身が若手の方から影響を受けたことはありますか?
皆さん、素晴らしい努力をされています。気づいたことがあればすぐに行動に移している姿をよく見かけます。なかには、僕に対してちょっと特別な感情をもってくださっていたり、「ご一緒できて光栄です」と言っていただく方もいて。その方々と一緒に作品を作っていくなかで、「なんだこいつ、つまらないな」と作品が終わったときにがっかりされないように…と思うので。「光栄です」の上をいきたいなと、作品へ取り組む姿勢に拍車をかけてくれる存在になっています。
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