国際的な評価高まる相米慎二監督作品『お引越し』『夏の庭 The Friends』4Kリマスター版が同時公開
ORICON NEWS / 2024年12月29日 12時30分
2024年から2025年の年末年始、話題の新作映画が多数公開されている中、1990年代に公開された旧作に注目。27日から全国で順次公開される相米慎二監督作品の『お引越し』(1993年)、『夏の庭 The Friends』(94年)だ。現在の日本映画をけん引する監督たちから尊敬を集め、いままた国際的な評価が高まっている相米監督作品は、自分の映画の好みを知る一つの試金石となるはずだ。
【動画】『お引越し』『夏の庭 The Friends』予告映像
相米監督は、1948年生まれ。72年に日活の助監督となり、長谷川和彦や曽根中生(そね・ちゅうせい)、寺山修司らに従事した後、『翔んだカップル』(80年、柳沢きみおの漫画を鶴見慎吾&薬師丸ひろ子主演で実写化)で監督デビュー。
上記3作品のほか、『セーラー服と機関銃』(81年、薬師丸ひろ子主演)、『ションベン・ライダー』(83年、河合美智子&永瀬正敏のデビュー作)、『魚影の群れ』(83年、緒形拳、夏目雅子、佐藤浩市らが出演)、『ラブホテル』(85年、日活ロマンポルノ後期の名作)、『台風クラブ』(85年、工藤夕貴、三浦友和ほか出演)、『雪の断章 -情熱-』(85年、斉藤由貴の初主演作)、『光る女』(87年、安田成美が出演)、『東京上空いらっしゃいませ』(90年、牧瀬里穂のデビュー作)、『かわいいひと』(98年、CM「ポッキー坂恋物語」シリーズから派生したオムニバス恋愛映画)、『あ、春』(98年、佐藤浩市主演)、『風花』(2001年、小泉今日子&浅野忠信主演)の長編13本を発表。『風花』発表後、53歳の若さで肺がんにより亡くなった。
没後23年を経たいま、相米監督の作品は、「日本映画界の先駆者」(La cinematheque francaise)、「彼に西洋画追いつくべき時が来ている」(CriterionDaily)など、海外でも再評価されている。そのきっかけの一つになったのが、昨年の「第80回ベネチア国際映画祭」クラシック部門で最優秀復元映画賞を受賞した『お引越し 4Kリマスター版』だ。フランスでは130館以上で拡大公開され、ヨーロッパ各国や北米で注目されることになった。
また、『夏の庭 The Friends 4Kリマスター版』は今年、香港国際映画祭にてワールドプレミア上映され、相米慎二監督の作品は、海を越えて新たな観客を魅了し続けている。
この年末年始に、映画館で観ることができる『お引越し 4Kリマスター版』は、13本の作品キャリアのなかでも最も成熟した時期につくられたと言われる。公開当時、「カンヌ国際映画祭」ある視点部門にも出品された。
両親が離婚の危機を迎え、自身を取り巻く変化の大きさに気づかされていく小学6年生の娘レンコの奮闘と成長を、両親それぞれの主張や悩みに葛藤する姿とともに描いた作品。レンコは、離婚届を隠したり、自宅で籠城作戦を決行したり、果てにはかつて家族で訪れた琵琶湖への小旅行を勝手に手配するが…。父ケンイチを中井貴一、母ナズナを桜田淳子、レンコを田畑智子が演じている。
『夏の庭 The Friends 4Kリマスター版』は、世界中で愛読され、ロングセラーを記録している小説『夏の庭 -The Friends-』(著:湯本香樹実)が原作。「死」への興味から、近所に住んでいる老人と交流を深めていく小6トリオのひと夏の成長記。やがて老人の過去が明らかになり、ひとりぼっちのおじいさんのために3人はある計画を思いつく…。おじいさんを演じる三國連太郎の圧倒的な存在感、オーデイションで選ばれた演技未経験の少年たちの瑞々しい姿が印象的な作品。少年たちの担任教師役で戸田菜穂が映画初出演を果たした。
両作とも、家族の在り方の臨場感、喪われゆくものと決して失われないもの…公開から30年の時を経てなお、観る者の共感を呼ぶ普遍的なテーマが描かれている。
■是枝裕和監督のコメント(予告編映像より)
エドワード・ヤン、侯孝賢、北野武に比肩する映画作家として、相米慎二という名前は、今まさに再発見されるべきだ。
■濱口竜介監督(予告編映像より)
相米慎二監督の作品は、どの映画にも、驚くべき身体が映り、声が響いている。
そう、驚くのだ。何度でも、何度でも。
■松居大悟監督
いつまでも夏の映画にこだわってしまうのは、
相米慎二監督の切り取る一瞬に憧憬しているからかもしれない。
制御できない暑さの中で、制御されたフレームの中で、
奇跡のような瞬間が訪れる。
『夏の庭 The Friends』ではスイカを食べながら大雨が降りだし、
『お引越し』では軽トラを追いかけて手を伸ばして追いつく。
少年少女の一瞬をたおやかに切り取り、映画は永遠に残る。
猛烈なスピードで物語が消費されていくこの時代に、
相米監督ならどんな映画を作りますか。
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