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テレ東ドラマに変化?『孤独のグルメ』『勇者ヨシヒコ』だけじゃない、配信が主戦場になった今の“戦い方”とは

ORICON NEWS / 2025年1月21日 8時40分

テレ東ドラマに変化?TXドラマチューズ!『マイ・ワンナイト・ルール』第3話より(C)「マイ・ワンナイト・ルール」製作委員会

 テレ東ドラマというと『孤独のグルメ』や『勇者ヨシヒコ』など、個性的な作品がまず頭に浮かぶが、昨今では少し様相が変わってきている。最近では『夫の家庭を壊すまで』が記憶に新しいが、“女性の性”をテーマとして放送中の『マイ・ワンナイト・ルール』も、配信を中心に話題を集めている。テレ東ドラマ=ちょっとチープな個性派…という認識はもう古い? 背景には、ドラマ視聴における“主戦場”の変化、そこから見えた電子コミックの影響もあるよう。最新の“テレ東イズム”についても、プロデューサー・中村晋野氏に話を聞いた。

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■いまやドラマの主戦場は配信、電子コミックとの親和性の高さも



 近年、テレ東ドラマでは電子コミックの実写化が続いている。『夫の家庭を壊すまで』、『花嫁未満エスケープ』、『夫を社会的に抹殺する5つの方法』などだ。これらについて中村プロデューサーは、「いずれも非常に多く視聴されており、ドラマ部としても今後も電子コミック原作ものを増やしていきたいと考えている」と内情を語る。

 「深夜枠が多いテレ東ドラマと原作としての電子コミックは、紙のマンガと比べても相性がいいのです。紙のマンガは主に雑誌という“箱”の中で連載されて習慣的に読まれることも多いと思いますが、電子コミックは配信プラットフォーム上で、非常に多くの作品の中から選ばれなければならない。それだけに、テンポ感は当然のこと、読者の囲い込み方、1話ごとに読み続けてもらう工夫が徹底されており、これが連ドラにもまるまる当てはまるのです」

 現在は地上波だけでなく、TVerなどの配信サイトがドラマの主戦場。ここで、「視聴者の時間をどう、自分のドラマに割いてもらうか」をプロデューサーは考えるという。配信サイト上の多くの作品の中で選ばれる…これが電子コミックの購読構造と似ているというわけだ。

■マンガ原作ならではの懸念点は?「スタイルをしっかり理解して実写化する」

 そんな理由から、テレ東でも増加している電子コミック原作ドラマ。一方で、昨今は実写化におけるマンガ原作との乖離や、原作側との調整の難しさが懸念されているが、その点はどうなのだろうか。

 「たとえば、1月からスタートしたコミックシーモアのオリジナルコミック作品『マイ・ワンナイト・ルール』(著:なかおもとこ/シーモアコミックス)は女性の性をテーマとした作品ですが、原作の時点で誇張しすぎないパワーワードがセリフとして多く散りばめられている。よく、原作そのままだとドラマではのっぺりしてしまうこともあるのですが、本作は1話ごとに“主人公の妄想”という形で自然に性描写が入っており、これも強い絵となる。この自然さ、ショッキングになりすぎない描写は、地上波でも流れるドラマとしてとても重要なことです」

 1話ごとに強い引きを作り、読者を飽きさせずに次の話を読ませる。まさに電子コミックの作り方が、連ドラにもハマっているということの表れだろう。それだけに、無理してドラマ用に改変することも減ってくる。

 「もちろん、原作では多いモノローグをドラマ仕様にするなどの変更点はありますが、それもやりがいの一つ。むしろ、このスタイルをしっかり理解して実写化することを、ブレないよう心がけています」

 『マイ・ワンナイト・ルール』については、こうしたテクニカル面での原作とドラマの親和性もありながら、作品性についても共感が生まれているという。

 「『女性は男性に性欲をゆだねないといけないのか?』という問いかけが多いマンガです。まだゴールのない問いだけに、白黒をつけるものではないと思っていて。原作のなかおもとこ先生の思いを聞き、ドラマでも提示はしつつ、最後はユーザーにゆだねたい。性を扱うことでインパクト重視のように見えるかもしれませんが、主人公たちの悩みは視聴者の皆さんも共感できる部分があるはず。少しでも、視聴者の生きる手助け、何かのきっかけになれたらと思っています」

 とはいえ、以前はアンタッチャブルだった女性の性にまつわるドラマも、ここ最近では『あなたがしてくれなくても』(フジ系)、『買われた男』(テレビ大阪)など、各局で増加傾向にある。また、托卵を描いた『わたしの宝物』(フジ系)など、ドロドロ系ドラマも盛り上がった。テレ東でも前述の『夫の家庭を壊すまで』や、不倫モノ『蜜と毒』『初恋不倫』(ともにBSテレ東)など同様の流れが目立つ。

 視聴の主戦場が配信に移ったこと、電子コミック実写化の増加も影響しているのだろうが、テレ東ドラマといえば個性的な作品が魅力で、他局とは差別化されたイメージだった。低予算ゆえのアイデア勝負でヒットを飛ばした作品も多く、『孤独のグルメ』や『勇者ヨシヒコ』などはその最たるものだろう。それらに対し、現在の状況は他局の追随とは言えないだろうか。

 「他局の作品で例をあげると、MBSさんの『美しい彼』は今のBLブームを牽引するようなヒット作品かと思いますし、“これに続け!”と、テレ東含め各局が流れていっていることは否定できません。テレ東というと、趣味やグルメなどに強いイメージがあるのはわかります。ただ、性やBLなどのテーマは私たちも追いかけたい。優れた他局の作品を観て学び、質を上げていきたいという思いはあります。テレ東ドラマのチープさをいじっていただく声もありますが、それらと『マイ・ワンナイト・ルール』などのジャンルではアイデアの観点が違う。このジャンルではじっくりとクリエイトして、チープな雰囲気は脱したいのです」

■「アイデア勝負」と「配信で数字を稼ぐ」、真逆に見えるが“テレ東イズム”の根本は同じ

 時代が変わればドラマの観られ方も変わる。作り方も変わるのは当前の話だ。

 「ドラマの主戦場が変わったことで、そこに対応する作品を作っていく。でも、どちらかにすべて舵を切ったわけではなくて、配信で数字を稼ぐ作品もあれば、テレ東っぽいグルメや趣味系、尖ったクリエイターを起用した作品も作る。そのバランスは大事にしています」

 アイデア勝負の“テレ東っぽい”ドラマにしても、配信で勝負するドラマにしても、「良作を届けたい」という思いは同じ。真逆に見えるようだが、その過程が違うだけだ。『マイ・ワンナイト・ルール』は、「そもそもの題材が強いから、チャレンジするより固く攻める。それが一番観られる道だ」と確信している。予算面の心配はないのかを聞くと、「限られた予算の中でクオリティを担保します。それもあるので、PRに予算はあまり割いていません(笑)」とのこと。

 どんなドラマでも、狙って尖ったことをしようとするわけではなく、“どうすればその作品のポテンシャルを引き出せるか”という発想の自由度が高いだけ。実は、作品の内容にかかわらず、“テレ東イズム”の根本はここにあるのかもしれない。

 ちなみに、「自由だ」とか「尖っている」とか言われがちなテレ東ドラマだが、「意外にチェックは厳しいんですよ」と、中村プロデューサーは教えてくれた。

 「厳密な上層部のチェックをくぐり抜けたうえで、作品が先鋭化しているだけ。テレ東は自由だと言っても、誰が観てもOKなテレビのルール、地上波のルールに則っています。これがABEMAやAmazonプライム・ビデオ、Netflixなどだと、配信のルールに変わります。その点では、自由さにおいても少し違うのでしょうね」

 地上波の制限のもとで、それでも「自由」と言われ、愛されるテレ東ドラマ。少しずつ幅を広げながら、ユーザーに新しい楽しみを提供してくれるに違いない。

 「テレ東にはたくさんのファンの方がいてくださる一方で、『silent』のような一世を風靡する大ヒット作にはなかなか巡り会えない。正直うらやましいですが、テレ東にはテレ東らしい戦い方しかできないですし。でも、『マイ・ワンナイト・ルール』は配信が始まったら、観ていただける自信はあります! 本作を含めて、これからもテレ東らしいドラマをしっかり作っていきたいと思います」。

(文:衣輪晋一)

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