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『ベルばら』作者・池田理代子、男女格差あった20代 「自分の信念に忠実に生きた」人生も終活の今

ORICON NEWS / 2025年1月26日 11時30分

『ベルばら』作者・池田理代子

 劇場アニメ『ベルサイユのばら』(ベルばら)が、1月31日より全国で公開される。連載開始から50年以上を経ての完全新作アニメということで注目を集めているが、原作者・池田理代子氏(77)へインタビューを実施。連載開始50年以上を経て感じる時代の変化、宝塚歌劇によって起きた社会現象の当時の様子などを語ってもらった。

【画像】戦うオスカル! 公開された映画『ベルサイユのばら』新場面カット

 『ベルサイユのばら』は、18世紀後半・フランス革命の時代を舞台に、将軍家の跡取りで、“息子”として育てられた男装の麗人オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ(オスカル)と、隣国オーストリアから嫁いできた気高く優美な王妃マリー・アントワネット(アントワネット)らの愛と人生を描いた作品。時代に翻弄されながらも、それぞれの人生を懸命に生き抜いた愛と運命の物語を描いている。



 原作漫画は1972年から1973年まで『週刊マーガレット』(集英社)にて連載され、マーガレット・コミックスは全10巻を刊行、2014年からは40年ぶりとなる新エピソードの単行本4巻も発売されており、累計発行部数は2000万部を突破している。

 また、メディアミックスの先駆けと言われており、1974年には宝塚歌劇団により舞台化され、その後、1979年にテレビアニメ化と、さまざまな方面で社会現象を巻き起こした。今回の劇場アニメは完全新作として、『呪術廻戦』などで知られるアニメスタジオMAPPAが制作する。

■『ベルばら』社会現象に驚き 女優扱い?空港で記者に囲まれ初めてヒット実感

――連載開始50年以上経ても人気の『ベルばら』ですが、意外にも連載期間は2年間と短いことに驚きました。現代の漫画は人気となれば、すぐにアニメ化となる流れですが、『ベルばら』初のメディア展開は、宝塚歌劇による舞台化という異例の展開でした。

【池田】 本当にメディア展開の先駆けでしたので、宝塚歌劇のお話をいただいた時は不安でした。「失敗したら、どうしよう…」と宝塚歌劇の初日公演が無事に終えるまで、とてもドキドキしたのを覚えています。当時、初代オスカルを演じた榛名由梨さんも「幕が開くまでドキドキでした」とおっしゃっていました。

――1974年の宝塚歌劇での上演により、『ベルばら』が大ブームとなり社会現象化しました。当時はコミックスもすでに完結しており、漫画家仲間と海外旅行に行ったそうですが、帰国時、空港で取材陣に囲まれて、そこで『ベルばら』の盛り上がりを知ったというのは本当ですか?

【池田】 懐かしい!そんなことも、ありましたね(笑)成田空港に到着したら、私の隣に外国の方が来て「あなたは女優ですか?」と聞いてくるんです。「なぜ?」と聞いたら、「あなた目当てで、テレビカメラがたくさん来ているよ!」「みんな、あなたを狙っているよ」と言うんです(笑) そんなことを言われるのは初めてでしたし、『ベルサイユのばら』が宝塚歌劇でヒットしているというのを、そこで初めて知りました。

■ギャラが半分で男女格差に抗議 変人扱いの過去

――女性でありながら“男性”として生きるオスカルの物語が描かれていますが、連載当時は男女格差が強い時代だったと思います。しかし、現代は昔に比べて女性が社会で活躍する機会も増え、賃金格差も無くなりつつあります。『ベルばら』を通じて読者に伝えたかったこと、また、半世紀を経て今の男女格差が無くなりつつある現代をどのように感じていますか。

【池田】 昔に比べると男女格差は無くなりつつあると思いますが、世界水準から行くとまだまだと思います。日本はやっぱりまだ、「男が働いて女は家庭」が根強い文化。でも若い人たちは結構、その考えが無くなりつつあると感じています。

 私の知り合いの男性は、赤ちゃんが生まれた際、育休をしっかり取り、子どもの面倒を見ていたので、時代の変化を感じました。ただ、『ベルサイユのばら』連載当時は、女性は出世できないし、私もそうでしたが、ギャラは男性の半分でした。

 「同じ雑誌で同じくらいの人気があるのに、どうしてギャラが半分なんですか?」と一度、抗議したことがあるんです。そうしたら、「何を言っているんだ! 男はね、結婚して女性を食べさせているんですよ。あなたたち女性はね、結婚して男に食べさせてもらう立場でしょ。だから男性のギャラが倍なのは当たり前です」と言われて、私の発言にびっくりした顔をしていたのを覚えています。そういう時代でしたから、外で働いている女性たちから「私もアンドレみたいな考えの人が欲しい」というお手紙は随分いただきました。

 ただ、『ベルサイユのばら』は、女性の人権を訴える目的で描いていません。私はそのような考えで作品を世に出していませんし、自分が描きたいことを描く、それが読者に伝わるかどうかはわからないという考えです。ですが、小学生の時、授業中に外をぼーっと見たりしていたので、先生が母親を呼び出し「あなたのお嬢さんはおかしい」と言ったそうで、周りから見たら私は特殊な人に見えたと思います。家族からも「あなたは漫画を描く前から手間がかかる子だったわよ!」と今では笑い話で言われますが、本当に迷惑をかけていたと思います。

■『ベルばら』魅力は世代によって違う 連載50年以上経て「自分の死を受け入れる」年齢に

――今回、初の完全新作劇場アニメ化となります。原作誕生から50年以上経っても色あせず、世代を超えて支持される『ベルばら』の魅力は、どこだと思いますか?

【池田】 過去のテレビアニメ版は、ヨーロッパでも人気だそうで、イタリア・ミラノの駅の柱にはポスターが掲出されていたみたいです。『ベルサイユのばら』が多くの方に支持されているのは、世代によって理由が違うと思います。例えば小さい子どもなら、キャラクターたちのきれいなドレスに興味を持つでしょうし、元々、小学生や中学生向けに描いた作品なんです。

 フェルゼンとアントワネットの関係も不倫と言えば不倫(笑) 例えば結婚して子どもができたにも関わらず、好きな人ができちゃって…という方なら、「今ならアントワネットの気持ちが痛いほどわかる!」みたいな。それぞれの世代でさまざまな、憧れや共感の受け止め方があるのが作品を面白くしているのだと思います。

 改めて思うのは、若い時って「君だけを一生愛するよ」って言うじゃないですか。フェルゼンって本当にそうだったんだって、そのことにすごく原作者ですが感動しています。なかなかできることじゃないですよね。

――改めて今回の劇場アニメで新たなファンを獲得するかと思います。劇場アニメで初めて『ベルばら』作品に触れる方々に向けて、感じてほしい、考えてほしいことがあれば教えてください。

【池田】 今回の劇場アニメは脚本と監督が女性だからというのもあるかもしれませんが、原作を忠実に作ってくださっている。でも、そのために、制作期間に9年もかかったとおっしゃっていました。

 実は原作漫画の終わるタイミングは、オスカルが死んでから10週って決められていたんです。今みたいに作品がヒットしていれば、長く連載できる時代ではなく、完結時期は最初から決められていた。本当はもっと描きたかったのですが、そんな思いがある作品が、令和の時代に劇場アニメとして再び世に出せるのはうれしいです。

 『ベルサイユのばら』を描いたのは私が24歳の時で、今はオスカルではないですが、自分はどういう風に死ぬのか、真剣に考えており、「自分の死を受け入れる」年齢になりました。そして、今回の劇場アニメを見せていただき、自分の想いがまず少しも変わっていないこと、自分の信念に忠実に生きたこと、そのように生きようと思ったことが、少しも変わっていないことに自分なりに感動しています。私の人生が詰まった作品ですので、作品を通じてファンの方々には、さまざまな自分自身の信念や選択に自信をもってもらいたいです。(取材・編集:櫻井偉明)

■劇場アニメ『ベルサイユのばら』作品情報
原作:池田理代子
監督:吉村 愛
脚本:金春智子
キャラクターデザイン:岡 真里子
音楽プロデューサー:澤野弘之
音楽:澤野弘之、KOHTA YAMAMOTO
アニメーション制作:MAPPA
製作:劇場アニメベルサイユのばら製作委員会
配給:TOHO NEXT、エイベックス・ピクチャーズ
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ

オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ:沢城みゆき
マリー・アントワネット:平野 綾
アンドレ・グランディエ:豊永利行
ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン:加藤和樹ほか

ナレーション:黒木 瞳

主題歌:絢香『Versailles - ベルサイユ - 』

(c)池田理代子プロダクション/ベルサイユのばら製作委員会

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