花粉症のクスリ、誤用すると症状が悪化? 専門医が教える正しい選び方と使い方とは【医師解説】
ORICON NEWS / 2025年1月23日 11時30分
2人に1人が花粉症とも言われる現代。処方薬だけでなく、ドラッグストアや薬局で手軽に購入できる市販薬を使用する人も少なくない。ところが、「本来の使用方法と異なる自己流の使い方をすることで、かえって症状を悪化させてしまうこともある」と、アレルギー専門医の草ヶ谷英樹医師。花粉症の症状を抑える市販薬、その選び方と使い方について話を聞いた。
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Q:まずは、花粉症の市販薬の基本的な選び方について教えてください。
【草ヶ谷院長】 くしゃみ・鼻水・鼻づまりといった「アレルギー性鼻炎」は、鼻の粘膜にあるマスト細胞からヒスタミンやロイコトリエンを主とする化学物質が放出されて起こる症状です。ヒスタミンの放出を抑える「抗ヒスタミン薬」や、「抗ロイコトリエン薬」が有効で、飲み薬や点鼻薬、点眼薬があります。鼻の粘膜の炎症を抑える「鼻噴霧用ステロイド」は、全般的に有効性が高いのが特徴です。
さらに血管系の反応(血管拡張や、血管透過性亢進)が強く鼻閉(鼻づまり)が強い場合には、血管収縮薬配合剤を選択すると良いでしょう。
目のかゆみを伴う「アレルギー性結膜炎」には、「抗アレルギー薬点眼液」を用いてください。また、アトピー咳嗽(がいそう)に対しては、「抗ヒスタミン薬」が有効です。
現在の花粉症治療で第一選択として多く使用されているのは「第2世代抗ヒスタミン薬」と呼ばれるものです。これは、古くから花粉症治療に使用されてきた「第1世代抗ヒスタミン薬」にある眠気や口の渇きなどの副作用が軽減されています。
代表的な「第2世代抗ヒスタミン薬」にはフェキソフェナジン塩酸塩(アレグラ)、ビラスチン(ビラノア)、デスロラタジン(デザレックス)などがあります。最近は第2世代抗ヒスタミン薬のOTC薬(※)も販売されています。第2世代は眠気が少ないと実感される患者さんも多く使いやすい薬ともいえますが、全員に眠気が出ないわけではありません。
Q:花粉症の市販薬を服用する際に注意すべきことはどのようなことでしょうか?
【草ヶ谷院長】 一般論としては、前述の副作用が出る可能性があることを十分に理解してからの内服をお勧めします。自動車の運転は禁じられている薬剤もありますので、処方を受ける場合には主治医に確認しましょう。さらに眠気が少ないとされる薬剤でも人によって副作用の出方には幅があるため、初めて内服するときにはとくに注意が必要です。
また、鼻噴霧用ステロイドは定期的に噴霧することで、常に鼻粘膜の炎症を抑え症状を緩和することを目的とする薬剤ですが、頓用で用い、効果実感が乏しいと感じている患者さんが少なくありません。毎日定期的に使用することを強くお勧めします。
一方でナファゾリンを代表とする血管収縮薬は即効性があるため、患者さんの多くが連用しがちで、その結果薬剤性の鼻炎を引き起こし、鼻閉症状が悪化するケースが散見されます。一般的には鼻づまりが極端にひどい場合に限り1日1~2回を限度に、1~2週間を目安に使うように勧められています。他の薬剤や鼻噴霧用ステロイド薬の治療を併用することで症状が改善してきたら、すぐに血管収縮薬は中止することを強くお勧めします。
Q:市販薬と処方薬ではどのような違いがありますか?
【草ヶ谷院長】 近年は病院の処方薬と同成分のOTC薬も市販薬として販売されています。同成分の薬剤同士については、処方薬も市販薬も違いはありません。決められた用法容量に従って使用するようにしてください。市販薬のメリットは手軽に入手できるため、なかなか病院を受診する時間が取れない方にとっては便利といえます。デメリットは副作用出現時や効果が不十分である場合に、次の一手をご自身では判断しづらいということでしょう。前述のとおり特に点鼻薬について、本来の使用方法と異なる自己流の使い方をすることで、かえって症状を悪化させてしまう方もいる点を、医療者側は大きく懸念しています。
※「Over The Counter(オーバー・ザ・カウンター)」の略で、薬局やドラッグストアなどで医師の処方箋なしに購入できる医薬品のこと
PROFILE/草ヶ谷英樹(くさがや・ひでき)院長
医療法人社団博雅会・草ヶ谷医院 院長。呼吸器・アレルギー科専門医として大学病院勤務後、2021年に祖父・父から続く「草ヶ谷医院」(静岡市清水区)を継承し独立。医学博士、日本内科学会 内科認定医/総合内科専門医、日本呼吸器学会 呼吸器専門医・指導医、日本アレルギー学会 アレルギー専門医。日本医師会 認定産業医。
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