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【OSAKA MAKERS #3】大阪府 スマートシティ戦略部 部長 坪田 知巳 氏(Tsubota Tomooki)

OSAKA KOUMIN NEWS / 2020年7月6日 18時19分

 
“大阪に愛をもって真の姿を鑑みる”
OSAKA愛鑑が目指す「オールOSAKA」の魅力発信・創造に、熱い想いを持って取組み、ご活躍されている様々な分野の「ひと」に注目し、ご紹介するコーナー「OSAKA MAKERS」。

OSAKA MAKERS #3 今回は、大阪府 スマートシティ戦略部長 坪田 知巳(つぼた ともおき)さんをご紹介します。

   

――スマートシティ戦略部とはどのような部署ですか?
  

昨年4月に吉村知事が就任の記者会見でスマートシティ戦略部の新設を表明され、その後7月に準備室が発足しました。12月には府議会で設置が承認され、今年の4月に正式にスタートした生まれたての組織です。スマートシティ戦略の推進はもちろんのこと、府庁と行政のデジタル化や規制緩和推進などのミッションをもっています。

私が就任して以降、民間企業から数名の交流員を受け入れ、80名弱の体制になりました。今後も民間から優秀な交流員を受け入れて、今年中に100名程度の組織にする予定です。

   

――普段の業務について教えてください。
  

就任して3か月も経たないので、まだまだ勉強の連続です。府政の取り組みや議会の対応など、民間時代には想像もしていなかったことを、部下のみなさんからレクチャーしていただきながら仕事に慣れていっている最中です。
 

外部の人とお会いすることに多くの時間を割いています。大変多くの方が毎日お越しになります。前の会社の時にはお付き合いのなかった業界の方々や、ライバル会社であった方々などとお会いしてお話しできるので毎日が新鮮です。
 

また、取材への対応にも時間を費やしています。「民間から公務員に転職した部長」はメディアの興味を引くようで、週に2~3社が取材に来ます。前職では取材要請に応じることはほとんどありませんでしたが、「府庁はメディアを通じて府民に情報発信する責任があるので取材要請には応じるべき。」と教えられて以来、原則として全ての取材に対応しているので緊張の連続です。
 

   

――「大阪府庁」という行政組織の雰囲気、ルールなどに慣れましたか?民間企業との文化、考え方など、就任して驚かれたことはありますか?
  

まず最初に感じたことは、府庁の職員は本当によく働くということです。3月まで務めた会社は外資系IT企業でした。社員はエネルギッシュでよく働くと評判の会社でした。「公務員になったら少しは楽ができる」と思っていたら、とんでもない誤算でした(笑)。民間の社員は働けば働くほど自分にリターンがありますが、府庁の職員は「府民のために」だけをモチベーションとして毎日汗をかいて遅くまで働いています。これには本当に頭が下がります。
 

民間と府庁の文化の違いとして驚いたことのひとつは、上意下達の組織風土です。上司の指示を着実に実行していく仕事ぶりはすごいのですが、部下が上司に逆提案してくることはほとんどありません。前の会社では、上司は自分が考えた計画を実現するためのリソースであるという企業風土でしたので、そのギャップの大きさから公務員気質に物足りなさを感じることがあります。上司の言うことばかり聞いていてはその組織は上司の能力を越えて成長することはできません。
 

もうひとつ想像以上だったことがあります。世間ではよく「霞が関のスピードが遅い原因は調整文化」と言われることがありますが、大阪府庁の調整文化も想像以上です。私の前職の会社は、外資系IT業界では珍しく100年以上も存続している会社です。巨大企業なので大企業病もあり、しばしば現場と本社機構が衝突することがありますが、「お客様第一主義」という社風があって、現場は徹底的に本社と戦って、ときにはそれが本社機構や社内ルールを変革することにつながり、会社の進化をもたらしてきました。それが100年以上も存続できた理由です。
 

役所にも「府民第一」の精神はあり、それをモチベーションにみんな夜遅くまで懸命に仕事に取り組んでいることは前述したとおりです。しかし、役所内の慣習、慣例、ルール、制度などの壁にぶちあたったら、それに挑戦して変革しようとする風土はほとんど感じられません。むしろ組織間の摩擦を過剰に避けたがる。いわゆる「調整文化」です。役所はスピードが遅いと言われることがありますが、けっして人が遅いわけではなく、原因はこうしたアナログ文化にあると思います。私は着任以来、コロナ対策の緊急性もあり猪突猛進で前だけを見て突っ走ってきましたが、振り返るといろいろ庁内で摩擦が発生していて、部下は火消しのため他部局との調整に大変な思いをしていたことを知りました。今頃になって「調整文化」という厚い壁の存在を実感させられています。

   

――スマートシティ戦略部長に応募したきっかけは。

 

2011年の東日本大震災で福島原発がメルトダウンを起こした際に、多くの外資系企業が東京から地方へ一時避難し、その後も日本進出を計画する外資系企業が東京以外に拠点を置くことを選択し始めた時期がありました。この時、外資系企業の大阪への誘致を薦める仕事をしたのがきっかけとなりました。 その仕事を通して大阪のアドバンテージ (物づくり、大学・研究機関や先進企業の集積、アジアへの窓口 等々)をいろいろと研究し、大阪には大きなポテンシャルがあることを再認識し、いつかは故郷大阪の成長に貢献する仕事をしようとの思いが生まれました。
 

その時から約10年、大手民間企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の手伝いをしてきましたが、これからは自分のエネルギーを社会課題解決のためのDXに注ごうという気持ちが大きくなっていました。
 

   

――民間出身部長として、どのような役割を期待されていると感じていますか?

  

スマートシティ戦略部のトップを民間から採りたいと知事がお考えになった理由として、私が想像することは2つです。ひとつは、ICTの知識やそれを使った問題解決力への期待でしょう。これについては自信があります。なんのプレッシャーもありません。
 

ふたつ目に期待されていることは、民間の価値観、文化、感性、目線、働き方などにおける民間の良いところを組織に伝え、役所体質に影響を与えることではないでしょうか。これに関しては大いにプレッシャーを感じています。一筋縄ではいかないと感じています。
 

   

――今後の「大阪スマートシティ戦略」について教えてください。

 
 

感染症のパンデミックに対する一連の危機管理およびICT対策を「都市免疫力」と名付けて、アフター・コロナの大阪スマートシティ戦略の重要ファクターと位置付けることにしました。昨年度に公表したスマートシティ戦略バージョン1に、この「都市免疫力」というコンセプトを追加して、「第2章: 都市免疫力」と題してバージョン2を作成中です。その具体的施策は、吉村知事や松井市長も参加するスマートシティ戦略会議で今後詰めていく予定です。
 

   

――新型コロナウイルス感染症でスマートシティ戦略の目指す方向に変化は生じますか?
 

 「日本はハイテク先進国だ」と信じていた多くの日本人が、コロナ禍の経験でそれが虚構にすぎないことに気づきました。オンライン教育やオンライン診療など、海外先進国とのICT格差は連日のようにテレビで報道されました。
 

思うに、日本のDXが遅れている理由は、規制改革の遅れだけではありません。大きな原因のひとつは、変化を恐れて現状維持を好む国民性ではないでしょうか。新しいテクノロジーを取り込んで、商慣習や生活スタイルを変革していこうとするマインドが日本人には希薄であることは、以前より「ゆでガエル」気質とも言われてきました。
 

しかし、コロナ禍で、テレワークをせざるをえなくなった保守的な企業や業界には「こんなに便利だとは知らなかった」と感じている人も多くいるはずですし、対面商談よりもオンライン商談の方がむしろ説得力が増すと感じた営業マンも少なくありません。そうした人々にとってリモート・システム/ツールは手放せないものとなるでしょう。たった数年でスマートフォンが日本人にとって必須のインフラになったように、テレワークやオンライン会議などのリモート・システム/ツールは生活や仕事には不可欠な存在になるはずです。人々のこうした行動変容は不可逆的なものでしょう。
 

ご質問の「新型コロナウイルス感染症でスマートシティ戦略の目指す方向に変化は生じるか」についての回答は、「イエス」です。いくつかの変化については、前述のスマートシティ戦略の第2章「都市免疫力」で詳述しますので、ここでは例としてひとつの変化を取りあげましょう。
 

東京一極集中の合理性がますます薄れ、大阪の副首都構想はスマートシティ戦略の重要な考慮点となってきます。
 

前述の通り、リモートエコノミーは常識化し、人や企業や省庁が集中していることのデメリットがメリットを大きく上回れば、政治と経済と暮らしの機能分散は自ずと進むはずです。同じ東京内の人どうしが、オンライン会議やオンライン商談で日常を賄えているわけですので、霞が関の一部や企業の本社機能の一部が分散しても大きな問題は生じるはずがありません。
 

コロナ禍において、図らずもそのことを壮大に実証実験して、証明してしまったと言えるでしょう。
 

さらに付け加えれば、これまでは地方分権の議論は政治と産業界が中心で、国民には関心の低いテーマでした。しかし、コロナ禍において政府は国民の生命と経済崩壊のリスクに直面したとき、政治判断を地方自治体に委ねたことにより、皮肉にも国民が、「中央集権か地方分権か」の選択に関心を持つきっかけを与えてしまいました。
 

つまり、地方政府の政治判断は中央政府のそれよりもはるかに迅速で、しかも国民の痛みを肌で感じた施策を実施できることを国民は感じ取り、身近な自治体こそが住民目線で政策決定できることを実感してしまいました。今後の地方分権の議論は、政界や産業界にとどまらず、国民レベルにも拡大するはずです。大阪にとってこうした変化は、副首都構想とも相まってアフター・コロナのスマートシティ戦略の重要な考慮点となりえます。
 

   

――今後予定している事業、イベントなどはありますか
 

申し上げるまでもなく、スマートシティ戦略は役所だけで実現できるものではありません。民間の参入は不可欠です。ただ、正直なところ、これまで全国のどのスマートシティ計画においても、民間がこぞって大規模参入して持続的なビジネスモデルを完成した例はありません。大阪では、民間がビジネスモデルを描ける仕組みを提供していきます。
 

そのことを目的として、「大阪スマートシティ・パートナーズ・フォーラム」を今夏に設立します。大阪スマートシティ市場に積極的に参入しようという民間企業や団体、大学などに会員になってもらい、スマートシティ戦略を共創していくつもりです。
 

   

プロフィール

昭和59年4月 日本IBM株式会社入社
平成26年1月 日本IBM株式会社常務執行役員
令和2年4月 大阪府スマートシティ戦略部長 就任
現在に至る
 

趣味:凝り性で興味は長続きしませんので、趣味はころころ変わります。この一年くらいは、高校生レベルの物理を勉強しています。(私は文系です!)
 
愛読書:本はよく読みますが、同じ本を何度も読み直すことはありません。したがって、愛読書と言えるものはありません。ちなみに最近読んだ本でおもしろかったのは、「重力とは何か」、「ファクトフルネス」、「勝者の呪い」など。
 
休日の過ごし方:貯まった録画番組を一日中ごろ寝しながら見ています。知事の出演番組と吉本系お笑いはすべて見ます。

        

OSAKAの“今”に愛と情熱を注ぎ、OSAKAの“未来”を創る」、坪田 知巳さんこそ、OSAKA愛鑑なひと、真のOSAKA MAKERSだ!


 以上、OSAKA MAKERS #3は、大阪府 スマートシティ戦略部長 坪田 知巳(つぼた ともおき)さんをご紹介しました。
次回のOSAKA MAKERSもぜひお楽しみに。

    

              

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