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【無所可用】第21話 心象鉄道

おたくま経済新聞 / 2010年9月30日 12時31分

【無所可用】第21話 心象鉄道

心象鉄道

心象鉄道ちょっとご無沙汰いたしました。毎度マニアックなお話をお届けしております「無所可用、安所困苦哉」でございます。今回は、主に鉄道模型ですが、架空の鉄道を設定して楽しむ「心象鉄道」についてお送りします。

鉄な人の究極の夢は、「自分の鉄道を所有する」ことではないでしょうか。
しかし、実物の鉄道を個人で所有することは、おいそれとはできません。代用となる?のが鉄道模型です。

鉄道模型は、実物をプロトタイプとして再現する模型を目にする機会が多いですが、実物にとらわれない、自分でデザインを行った「自由形」と呼ばれる模型があります。この自由形を推し進め、場所、歴史、運転(ダイヤ)等も想定し、設定をより細かくしたものを、「心象鉄道」と呼んでいました。
いました、と過去形なのは、最近、あまりそう呼ばなくなってしまったからです。ただ呼ばなくなっただけでなく、そうした、鉄道それ自体を想定した鉄道模型作品が少なくなっていることも背景にあるかもしれません。製品化される鉄道車両が非常に多様になっていること、完成品をそのまま楽しむ(走らせる、コレクションする)人が多くなり、自分でデザインをしようという人が少なくなっている、というような背景があるようです。

「心象鉄道」には、具体的な場所を設定し、ロケハンして景色をできるだけ近づけて再現する場合と、具体的な場所は定めず、鉄道の種類(国鉄・JR、都市部私鉄、地方私鉄、専用鉄道など)とおおまかな地方だけを決めるといた、架空度の高い場合とがあります。
いずれの場合も、車両はオリジナルデザインが中心で、他鉄道からの転入等を想定する場合でも、塗装は独自のものにしています。

鉄道模型

だいたいわかってきましたか?心象鉄道を現代のおたく用語で表現すると、「鉄道における規模の大きな妄想」と言えるのです。

以前、とある鉄道模型雑誌の企画で(といってもほぼ持ち出しでしたが)、数人のモデラーで心象鉄道を作成することになり、一員として参加しました。
場所を決め、地図に鉄道の路線を記入し、ロケハンに行きました。風景、家屋を撮影し、特徴的・象徴的な建物や川、大きな道など、実在の目立つものは可能な範囲で再現しました。夏の海がテーマでしたので、海岸、岩場、港なども再現し、海の売店も同じ雰囲気が出るように作成しました。
また、時代を2つ定め、昭和30年代と平成とで車両を作り分けたり、町の雰囲気を変え(建物などの構造物を新しくする等)たりと、時間の流れの表現も行いないました。それぞれの時代のダイヤも作成しました。
車両の多くは独自製造と仮定したため、各種キット・完成品を改造しました。塗装は時代に合わせて旧塗装・新塗装を用意しました。
鉄道だけではなく、バス、タクシーなども手がけているという設定にし、バス路線まで雑誌に掲載しました。

実在の鉄道ではない分、デザインの楽しみがありますが、駅の線路配置、車両の構造(ドアの数や窓の形など)は、実物にしてもおかしくないものでなければなりません。実在しないのに実在するかのように架空設定をするのは、他の実在の鉄道の観察が非常に重要である感じがしました。特に時代ごとの車両をデザインする段では、実在の鉄道の車両がいつごろに製造されいつごろまで現役であったか等を知らないと、時代があわなくなってしまう可能性があります。線路配置は、ダイヤとつじつまが合っていなければなりません。また、街並みを取材したのは平成の時代ですので、昭和30年代は想像で表現することになります。この建物は古いから昔もあっただろう、とか、ここはわりと新しいから、建替え前の古いのを作ろう、といったやりとりを、ロケハンや合同工作会で話し合いました。

鉄道模型

心象鉄道を本気でやると、かなりの実物の知識が求められます。実在しないものを存在したかのように再現するには、多くの実物知識がないと、最適な再現が難しいという思いが、時を経るにつれ強くなります。車輛のデザインだけでなく、時代や地域など広い範囲の想像を楽しむことができないと、難しいことなのかなぁという思いもあります。ですが、せっかく「自分の鉄道」を設定するのであれば、車輛も独自デザインして、心象鉄道を楽しむ人が多くなるといいな、と思っております。

今回ご披露した模型は、過去にとある「心象鉄道ダイヤ運転」用に作成したもので、タネ車(改造の元にした車輌)のイメージはありますがプロトタイプはありません。

■ライター紹介
【エドガー】
鉄道、萩尾望都作品、ポール・スミス、爬虫類から長門有希と興味あるものはどこまでも探求し、脳みその無駄遣いを楽しむ一市民。そのやたら数だけは豊富な脳みその無駄遣いの成果をご披露させていただきます。

Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By おたくま経済新聞編集部 | 記事元URL https://otakuma.net/archives/3628936.html

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