【無所可用】第19話 飛び出せ貧乏旅行
おたくま経済新聞 / 2010年8月19日 18時17分
飛び出せ貧乏旅行
毎度「だからどーした」というお話をおとどけしております不定期連載の「無所可用、安所困苦哉」。今回は「貧乏旅行」のお話。
ここのところ、自家用車を改造して寝泊りできるようにし、車中泊で宿代を安上がりにするという旅行が取り上げられておりますが、ワタシは基本鉄道の人なので、「鉄道を使った貧乏旅行」のお話です。
いまじゃ数が少なくなってしまいましたが、かつては日本各地に「座席の夜行列車」が走っておりました。そして、広域が乗り放題となる「均一周遊券」というきっぷがありました。当時の均一周遊券は、「ワイド」と「ミニ」があり、「北海道ワイド」では道内国鉄全線乗り放題(特急自由席も)、20日間有効、往復経路の急行自由席乗車可能という、なんとも貧乏旅行の味方でございました。今でも「周遊きっぷ」という「名残」があるのですが、有効期間は10日になってしまい、また行き帰りの乗車券は別手配しなければならないど、かなり魅力がうすれてしまいました。
この「周遊券」を使った貧乏旅行を幾度もしておりました。ということで、今ではほとんど役に立たない、周遊券による貧乏旅行のノウハウをご紹介。
1.「夜行列車最大活用」
宿泊費はかさみます。ホテルや旅館なんてとんでもない、宿はユースホステル!しかし、ユースホステルといえども1泊2食となると3~4000千円、結構な負担です。また夏休みなどは早めに予約しないと泊まれないことも。そして夕食を予約した場合は到着時間にも制限があります。シュラフで野宿もいいのですが、シュラフという荷物が余計な負担になります。
そこで使うのが夜行列車の自由席です。北海道なら、道内の夜行列車に乗っていれば良いわけですが、当たり前ですが移動してしまいます。また北陸では自由区間は敦賀~糸魚川であり、この範囲から出ることはできません。
【写真:まりも】
ということで、時刻表を取り出し、「下りと上りの夜行列車は、どこですれ違うのか?」を調べます。過去の例ですが、札幌~釧路間の「まりも」は、新得という駅で上下列車が並びます。つまり、今釧路にいる、明日も釧路にいたい、という場合、上りの「まりも」に乗り、新得駅まで行き、下りの「まりも」に乗り換えて、釧路に戻ってくる、というような乗車をするわけです。
周遊券のおかげで宿泊費はナシ。但し新得駅での乗り換えは2時。乗り過ごさないように注意が必要です。うっかり乗り過ごしてしまう他に、もう一点リスクがあります。乗り換え相手の列車に座れるとは限らない、ということです。最も、同じことを札幌側からする人もいるので、座れないで困ったということはありませんでした。
北陸ではちょっと事情が異なり、終電車で敦賀へ行き、敦賀で新潟行きの「きたぐに」か富山行きの「立山」を捕まえるという行程になります。
【写真:利尻】
2.「駅寝」
夜行列車以外で無料で泊まるには、駅を使います。無人駅だとシュラフが欲しいですが、駅によっては深夜に停車する夜行列車の利用客向けに待合室を24時間開放している場合がありました。北海道では唯一旭川駅だけがそうしていたのですが、北陸や東北の駅では夜中でも開いている駅がいくつかありました。これらの地方は冬には降雪しますので、駅舎以外にもホームに待合室があり、そこも(特に夜行列車が停まるホームは)大丈夫な場合がありました。
こうした駅にも泊まりました。長椅子がなくなり一人ずつに区分されたベンチになっている場合が多く、あまり人がいない時は横になれますが椅子と椅子の境界のでっぱりが痛かったものです。
敦賀駅では、明け方ホームに入り、ホーム上の水道で頭洗ったこともあります。今やったら変な人ですが、当時も結構変な人で、交代した運転士さんに「おいおい」的な目でみられてしまいました。福井駅では、深夜2時に到着し、そのまま待合室で朝まで横になっていました。明けたら福井鉄道の一番列車を撮影に。早朝の街はすがすがしい空気でした。
【写真:福井鉄道一番列車】
3.「1食300円以内」
駅弁?なにそれおいしいの?
ワタシが貧乏旅行をしていた頃、コンビニやファーストフード(牛丼屋も含む)は、あまりありませんでした。駅弁は高くて買えません。立ち食いそばも1日1回まで。安価な食料品が調達できる場所というと、駅のキオスクか、ちょっと大きな街のスーパーなどでした。特にキオスクは当時の国鉄・JRの駅で、無人駅なのにキオスクはあったりして、最も利用した店です。
さて、一日取り鉄・乗り鉄となると、携行できて傷まないという、ミリメシのような要求を達成しなくてはなりません。
そんなワタシがよく食べたのは「カロリーメイト」。一日撮り鉄して夜行で移動となると、3食カロリーメイトとポカリスウェットという日もよくありました。また、スーパーに入ったら、食パンが特売で半額になっていて、食パン1斤とソントンのカップジャムを買い、割り箸を1本いただいて、これに地元の牛乳で昼食と夕食、なんてことも。
北海道、とくに冬の場合、カロリーメイト以外に、ある食品を携行していました。
その名は「みそパン」。こんなのです。
https://bussan.abashiri.jp/kaiin/furukawa.html
実はこのみそパン、おいしくありません(ワタシ比)。もしかすると、まずい、かも知れません(あくまでもワタシ比)。が、カロリーメイトと同じ値段なのに量が多く、数日の保存がきき、そしておいしくないので最後まで食べないため、非常食には最良(最高ではない)なのでした。
去年、北海道を旅したとき、網走駅のキオスクでみそパンを見かけ、とてもなつかしく思いました。札幌のキオスクでは見ませんでした。
4.「水筒」
コンビニも少なく、ペットボトルの水もなかったので、実は水がいちばん確保困難でした。そのため、水筒を持って歩いておりました。当時、ちょっと大きな駅にはたいていホームに水道がありましたので、ちょっとした待ち時間で給水しました。倶知安や越前大野のような、今で言う「名水百選」に入るような街では、駅前などにその「名水」が引いてある場合も多く、たまに飲めるおいしい水を味わったものです。
ホームの水道水は、30秒くらい勢いよく出した後で水筒に入れます。いつの水だかわかりませんので、一応注意します。そんな一方で、冬の北海道で冬場は凍結してしまいホームの水道が出ず、どうにも困って、降ってまもない雪で代用したことが一度ならずあります。もしエキノコッカスにかかっていたら、あの時の雪のせいでしょう。
貧乏旅行は、ほぼすべて一人旅でございました。美味しいものは大好きだけどチープな食事も大好きなこの舌は、この時期に鍛えられたのではないかという気がします。
今年、久しぶりに夜行列車の旅をしました。ちょっと懐かしく、トシとった分、きつかったです。
【写真:能登】
■ライター紹介
【エドガー】
鉄道、萩尾望都作品、ポール・スミス、爬虫類から長門有希と興味あるものはどこまでも探求し、脳みその無駄遣いを楽しむ一市民。そのやたら数だけは豊富な脳みその無駄遣いの成果をご披露させていただきます。
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