キャンピングカーブームの影 問われるマナー
おたくま経済新聞 / 2017年5月12日 16時36分
駐車禁止看板 / 画像・編集部撮影
究極の趣味車ともいわれるキャンピングカー。車の中にベッド、キッチン、テーブルにソファーなどが詰め込まれ、近年ではその特徴から自然災害時の避難先用に“防災設備”の一つとして購入する人も多いと聞く。
■一般車も含む「車中泊ブーム」
日本RV協会が2016年6月に発表した『キャンピングカー白書』によると、その売り上げは2015年に過去最高額を記録したという。これをうけ、テレビや新聞などで「空前のキャンピングカーブーム」と取り上げられることもしばしば。また、キャンピングカーブームと同時に一般車で車中泊をする人も増え、そうした車を手助けするグッズ類も充実。キャンピングカーブームと同時に「車中泊ブーム」が起きている
実は筆者もキャンピングカーを所持している。当時で19年ものの超のつくおんぼろキャンピングカーを約4年前に念願叶い購入。ぼろくて激安だった分、できる限り自力でせっせとメンテナンスを施している。出かけるのは月2~3回程度だが、子供の頃仲間とつくった「秘密基地」が思い出され、ただ車をいじくり回すだけでも何だか楽しい時間が過ごせている。こういう楽しみ方は筆者だけでなく、周りの30代~40代の仲間にも多い。新車をいきなりは高すぎるけど、古い車を購入して自分だけの「秘密基地」づくりを皆楽しんでいる。また、既婚者男性からは、家に居場所がなくなった時には違う意味での“緊急避難先”として使用しているという話もよく聞く……。
そして、出かけるタイミングは当日ふっと思い立った時。車に2~3着の着替えと、下手の横好きである趣味のカメラ、あとはカップ麺に飲み物を詰め込み、気ままに旅に出る。大体金曜夜に出発して、途中のサービスエリアなどで仮眠。そして土曜日中は温泉や景色を満喫しRVパークや車中泊可な駐車場で一泊お世話になり、日曜朝にのんびり帰ってくるという流れ。キャンピングカーを購入する以前にも一般車で車中泊をしていたので、気づけばそんな生活がもう10年。この10年、筆者にとってはキャンピングカーを購入した以外、特に大きな変化はなかったが、キャンピングカーはじめ「車中泊」を取り巻く環境については、少しずつ変化している。
まず目に見える話では、修理用パーツはネットで簡単に購入できるようになり、車自体の取扱店も増えている。これまでビルダーにつとめていた人が個人で独立したり、既存一般車を扱っていた販売店がキャンピングカーや車中泊市場に乗り出したりしているからだ。最近目立った話だと、オートバックス。2015年にキャンピングカーの販売を一部で開始し、ハイエースなど外見はそのままに中身だけ改造して、普段使いもできるキャンピングカーの取り扱いを行っている。まだ取り扱いはかしわ沼南店、NAGOYABAY店、東雲店の3店舗となっているが、今後取扱店の増加を予定しているという。
そして目に見える変化といえばやはり「ユーザー数(車中泊人口)」。車中泊人口は特に統計は取られていないため、実際のところどのぐらいいるかは定かではないが、一説では約100万世帯(ネッツトヨタ京華「車中泊の世界」参考)といわれている。しかし、近年、スズキのハスラーしかり車のメーカー自らが専用の車中泊グッズのオプションを販売してるケースもあるため、今後一層のユーザー増加が見込まれている。
100万世帯というとどれぐらい多いのかわかりにくかもしれないが、この10年見続けた身としてはその劇的増加ぶりを身をもって感じている。
例えばGWに訪れた静岡県の道の駅伊東マリンタウン。ここは以前よりキャンピングカーユーザーの間では人気の高いスポット。ただこれまではその台数はそこまで多くはなく、3年前に同じGW中に訪れた際には、深夜から明け方にかけ駐車していたキャンピングカーは20台程度だったと記憶している。一般車の車中泊組入れても、駐車場には空きがそこそこ目立っていた。
ところが今年GWに訪れた時には、キャンピングカーは50~60台程に増加(もっといたかもしれない)、さらに一般車で車中泊をする車中泊組も激増しており、夜になっても駐車場はほぼ満車に近い状態となっていた。
■「キャンピングカー駐車禁止」を掲げるところも
こうした急激なユーザー増加は、メンテナンス先の増加や周辺グッズの充実など利便性が高まる一方でやはり問題も起きている。キャンピングカーユーザーのマナー低下。マナーについては過去に何度か問題になったことがあり、業界団体をはじめマナー向上の啓蒙活動を行っている最中だ。しかし、このところのユーザー増加では、そのマナーの浸透が追いつかなくなっている。
直近だとこんなものを目撃した。かつてはキャンピングカーの駐車可能だった公共駐車場に、「キャンピングカー駐車禁止」看板が掲げられていたこと。
「車中泊禁止」は以前からよくあったが、「キャンピングカー駐車禁止」を掲げるのは珍しく、またよっぽどのこと。他にも「キャンピングカー駐車禁止」を掲げる場所はないわけではないが、最近新しくというのはこの時初めてみた。 場所は静岡県の南伊豆弓ヶ浜。パドルスポーツエリア側の駐車場が「キャンピングカー駐車禁止」になっていた。ここは、弓なりになった美しい白浜で知られ、海水が綺麗でマリンスポーツも盛ん。海岸線からの景色、特に夕焼けは「見事」としか言いようがない美しさを持っている。
3年前に偶然訪れた時、この景色に惚れ込み、GW中とあって夕日の撮影をしに出かけてみたが、訪れてみると「キャンピングカーの駐車禁止」の看板。そこで100mほど先にある松林の中のキャンピングカーでも駐車可能な駐車場(季節により有料)にとめて、てくてく歩いて駐車禁止の看板が出された駐車場に再度出向いてみた。
少なくとも3年前に訪れた時にはこんな看板はなかった。そこでちょうどやってきた地元の方に話しを聞くと、禁止になった理由はやはりキャンピングカーユーザーのマナー低下が理由だという。
「2年ぐらい前に、駐車場の隅でバーベキューをしてるキャンピングカーの人がいてそれで」「ついこないだも隠れてやってる人がいてほんと困ってる」というため息交じりの話が出てきた。
道の駅・サービスエリア含むどの駐車場でも、「駐車場でのバーベキュー禁止」は基本中の基本ルール。通常、各駐車場側でも注意看板で「バーベキュー禁止」もしくは「火気厳禁」という形でしっかり注意している。勿論この駐車場でも3年前に訪れた時既に注意看板に「火気厳禁」と書かれていた。にもかかわらず、炭をおこして駐車場でバーベキューするとは。地元の方も「一人二人のためにこんなことしたくないんですけどね」とぼやいていた。
注意看板例道の駅やサービスエリアはじめ公共駐車場は、あくまで一時的に「駐車」「休憩」をする場所。車中泊のためにある場所ではない。車の中で寝てしまったとしてもできる限り休憩に繋がる「仮眠」程度、夜間であれば夜間走行は危険も多いので明るくなるまで「安全のためいられる場所」であり、一日中いて良い場所ではない。 ずっとそこに駐車して長逗留するのはマナー違反だし、椅子やテーブルを出してくつろぐ、ましてはバーベキューをするというのはもってのほか。さらにいえば、車中泊で出たゴミは自宅まで持って帰るのがマナー。
そしてできれば、公共駐車場で車中泊したい時には勝手に泊まるのではなく、一度施設に「車中泊しても良いか」確認してほしい。経験上、可能な場合が多いが、道の駅でもこのところ、夜間駐車場を一部、または全体閉鎖するところが出てきておりそういう意味でも聞いた方が良い。
筆者が道の駅で車中泊確認をした時に、こんな理由を聞くことがあった。「車中泊する人があまりに増えすぎたため、安全もあり夜間は一部に限定した」というところや、「夜間休憩に訪れた人が駐車できないという苦情が多く、車中泊を禁じて大部分を夜間封鎖し、トイレで立ち寄る人用にほんの一部だけ開放するようにしている」など。ちなみにこれは一般車の車中泊組にもいえるそうで、特に一般車の場合、夜間暗い道の駅にポツリと長時間駐車していると、地元住民が不安がるということもあるそうだ。急な病気で死んでるんじゃないかと不安になり、警察を呼んだこともあるという。どこも「車中泊ブーム」の影で、色んな苦労を抱えている様子がうかがえる。
また、先に紹介した道の駅伊東マリンタウンの駐車場では、係員に確認をした際「発電機は使わないでください」と一言注意された。筆者のキャンピングカーは走行蓄電式なので、発電機は乗ってないが詳しく聞けば夜長時間にわたり発電機をバンバン回す(発電機はかなりうるさい)キャンピングカーがいるからだという。
駐車場での「発電機使用禁止」はこれまた当然。周囲によほど何もない場所ならまだしも、出入りの激しい道の駅はどこも厳禁といっても過言ではない。しかし、これから夏場にかけては車内でエアコンをつけるために、昼夜かまわずバンバン発電機を回すキャンピングカーが増えるのは容易に想像ができる。実際、例年そういうキャンピングカーを目撃しているし、住宅がすぐ近くにある場所ならば地元住民にとっては、とんでもない騒音だろうといつも思う。
今はまだ多くの公共駐車場が「キャンピングカーの駐車」や「車中泊」を許してくれている。禁じているのはごく少数といえるだろう。ただ、このまま身勝手なユーザーが増え続ければ、同じく禁止するところも徐々に増え続け、いずれは大半の駐車場が「禁止」看板を掲げることになるのではないだろうか。これから夏にかけて、キャンピングカーはじめ、一般車でも車中泊の旅を楽しむ人が増える季節。今一度、マナーを確認してみてはいかがだろうか。
▼参考
ネッツトヨタ京華「車中泊の世界」
日本RV協会「キャンピングカー白書2016」
(HideI)
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