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ホントの意味でのバリアフリーって?ある盲導犬ユーザーの体験から

おたくま経済新聞 / 2017年7月23日 9時0分

ホントの意味でのバリアフリーって?ある盲導犬ユーザーの体験から

boyoさん(@GonchiK86)より。

少し前に「多目的トイレ」を使わざるを得ないオストメイトの話をご紹介しました。
多目的トイレはオストメイトから赤ちゃんのオムツ替えなど様々な用途で誰もが使いやすいようにできています。

しかし、誰でも使えるはずの多目的トイレで、あるツイッターユーザーが体験した事はとても残念な事でした。
盲導犬ユーザーであるboyoさん(@GonchiK86)が多目的トイレを開けた時の体験です。
「今、盲導犬と区役所の多目的トイレに入ったら この有様 ベッドが入り口ドア前まで広がってて、もう少しで犬もろともぶつかるところでした こういうことほんまにやめましょうよ」という言葉に添えられていたのは、ドアの目の前に大きく広げられた介助用寝台。トイレのドア付近に設置されている、便器の高さと同じくらいの高さの介助用寝台が広げっ放しの状態のままとなっていました。

今、盲導犬と区役所の多目的トイレに入ったら
この有様

ベッドが入り口ドア前まで広がってて、もう少しで犬もろともぶつかるところでした

こういうことほんまにやめましょうよ pic.twitter.com/tUwtFl1KyR

— boyo〈boyoyama〉 (@GonchiK86) 2017年7月19日

■何が危険なのか

介助用の寝台は最近設置された多目的トイレによく導入されています。主に身体障害者などのオムツ交換などに使用されています。
しかし、このようにトイレのドアの目の前に設置されており、それが広がっている状態となっていると足元が見えにくい目の不自由な人にとっては大変危険です。足元が視界に入らない事も多く、広げっ放しの寝台に気が付くことができずに突っ込んでしまい、大怪我になりかねないからです。

■盲導犬とバリアフリー

盲導犬と一緒に外出すると、普通のトイレが使いにくくなります。ユーザーの目の代わりとなる盲導犬といえど、やはり犬なので一般のトイレに連れて入りにくく、盲導犬もどこのトイレが空いているかまでは判別することはできません。
そうなると、自然と多目的トイレを利用することになります。
盲導犬は視界にある障害物をユーザーに教えることはできますが、突然現れた障害物まで予測してユーザーに教えることはできません。そのため、前述の様な状態になっていてユーザーが気が付かずに入っていってしまっても盲導犬が危険を感知してユーザーをかばう様な行動まではする事はできません。
いくらバリアフリーを考えて造られたトイレでも、このように使う人の心がけひとつでバリアだらけになってしまいます。

■盲導犬のお仕事

盲導犬と歩いている人を見かけること、まだまだそんなに多くないかもしれません。大きな駅などで募金活動を行っている光景なら見た事がある、という人ならそこそこいるかと思います。

盲導犬の仕事とは

「(1)角を教える、(2)段差を教える、(3)障害物を教える
この3つの基本的な仕事を組み合わせて、盲導犬の歩行が成り立っています。さらに、近くの目標物(ドアや改札など)まで誘導することもあります。盲導犬はカーナビのように目的地まで連れて行ってくれると思う人もいらっしゃいますが、盲導犬に「コンビニまで」と言っても連れて行ってはくれません。盲導犬ユーザーは頭の中で目的地までの地図を描きながら盲導犬に指示を出します。」(公益財団法人 日本盲導犬協会HPより引用)

盲導犬にユーザーが指示を出すことで目の代わりとしてユーザーの前に立ち一緒に歩いてくれるのです。盲導犬がお仕事をしているときはお仕事用のハーネスを必ず付けています。この時の盲導犬はユーザーを安全に導くことに誇りを持って歩いているといいます。

しかし、盲導犬といえどもやはり犬。ユーザー以外の人が声をかけたり撫でたりするとびっくりして混乱し、お仕事に集中できなくなってしまいます。混乱した盲導犬が予想外の行動に出てしまうとユーザーも大変危険な状態に晒されてしまいます。

盲導犬がお仕事をしている姿を見かけたときは、次の4つの約束事を必ず守ってください。

1.声をかけたり、じっと前から見たり、口笛をならしたりしない。
2.食べ物を見せたり、あげたりしない。
3.盲導犬をなでたり、ハーネスを触ったりしない。
4.自分のペットと挨拶させようと近づけたりしない。

基本的に盲導犬は人が大好きなので、これらの行為でお仕事中の意識が抜けて人懐っこいワンコになってしまうのです。これらの行為は全部盲導犬の集中力をそいでしまう極めて危険なことと覚えておきましょう。

■ホントの意味のバリアフリー

「盲導犬と一緒のときに食事をする事になったが、盲導犬を連れているために入店を拒否された」「盲導犬がいるから旅館に泊まれなかった」という話を聞く事も減ってきて、周知もだいぶ進んできつつあります。ツイッターで「盲導犬」とツイートを検索するとやさしい世界を垣間見ることも。
その一方で、点字ブロックの上に自転車やカラーコーンなどが置かれていたり、多目的トイレのしまうべき所をしまっていなかったり、必要があって白杖や盲導犬を連れているのに知識のなさから偏見の目で見られたり心無いことを言われたり……。

知識を共有することと、少しの思いやりでこういう「人的なバリア」を減らすことができると思います。建物や設備の「ハード面」でのバリアフリー化は進んでいく中で、人の側の「ソフト面」でのバリアフリー化はまだまだという感じです。これは視覚障害や盲導犬に限らず、身体的・精神的な障害を抱えている人全般に対して当てはまります。
ハード・ソフトの両側面からのバリアフリーが成り立ったときこそ、本当の意味でのバリアフリーが実現すると思います。

<記事化協力>
boyoさん(@GonchiK86)

<参考・引用>
公益財団法人 日本盲導犬協会

(看護師ライター・梓川みいな)

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