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「バスの降車ボタンは早めに押して欲しい」というつぶやきから見えてきた運転士達の苦悩

おたくま経済新聞 / 2017年10月9日 12時0分

「バスの降車ボタンは早めに押して欲しい」というつぶやきから見えてきた運転士達の苦悩

乗降ボタン

バスや電車に乗っていると、運転士さんのハンドル捌きや車掌さんの安全確認の所作などがカッコよく目に映ります。その仕事ぶりを見て憧れる人も多いと思います。筆者も鉄道好きな一面があり、女性車掌さんのカッコよさに憧れた事があります。

しかし、そんな旅客業、日々多くの人の命を預かりながらの業務であり激務である事も知られている事と思います。先日も「バスの降車ボタンは早めに押して欲しい」といった内容のつぶやきがツイッター内に投稿され、大きな反響を呼んでいました。

安全第一のお仕事、車内事故を防止するために知ってもらいたいという思いで投稿された言葉です。降車目的地のバス停に着くギリギリで降車ボタンを押されると急ブレーキをかける事になりかねず、結果としてバス停に停車する事ができない、ブレーキによる車内事故の発生などのトラブルが起こりえます。

この投稿に対しての反響は大きく、多くの方が共感する一方で「バスの運転士の態度が悪い」「運転が荒かった」などの声も届いていました。
そんな中、あるバス会社の運転士から話を聞く事ができました。

■モラルを失った乗客

話を聞いたバスの運転士も、この話題について「バス業界共通の問題と思いました。」と語っています。
民間の旅客業でありながら公共交通機関であり、モラルのない乗客に起因するクレームや事故報告なども全てバス会社がその責任を負う事になります。こういったクレームや事故は自治体や国土交通省にも報告が入るため、たとえ運転士の言動などに非がなくても始末書や事故報告書を書かされる事を余儀なくされ、運転士のストレスの蓄積や過労による事故、不当な扱いへの不満からの人員不足と繋がっていきます。

また、近年バス業界では赤字路線が多いといい、それを理由に「赤字だから、低賃金」と話を聞いたバス運転手は言われているそうです。さらに赤字路線であるにも関わらず、乗客に強く言えない状況がゆえ「運賃を誤魔化す乗客を容認しなければならないのは負の連鎖であります」と、会社のみならず乗客側のモラルも指摘しています。適正な運賃を払い利用し続けなければ赤字路線は廃止されます。そうなると困るのはバスを利用している私たちです。

■会社のパワハラ 酷使される運転士

「低賃金で待遇の悪さから人員不足であり、減便をすれば良いという風習さえなっている」というバス業界。他にもこんな問題も抱えているのだとか。

「それと、我々はかなり不満抱えてますが、会社がかなりパワハラであり、納得いかないことも、高圧的に顧客本位だろ?みたいに言われ始末書まで書く状態。(事故を起こしたのが)私と特定されたら、会社から辞めさせられかねず小心者に教育させられるのが現状。私の身の回りも、そういう人ばかりです。」と前出の運転士談。会社自体が抱えるストレスの大きさも垣間見えます。

会社側からの不当といえる扱いを受けているのはこの運転士に限った事ではありません。
筆者の知人にも元バスの運転士がいます。元が付いている理由は、乗務中に乗客側の行動に起因する車内事故。バス業務自体は好きで天職とさえ思っていたそうですが乗務中に乗客に注意したにもかかわらず車内で転倒した事でクレームとなり、遠まわしに退職へと追いやられてしまったそうです。今は他の運輸業へと転職していますが、今でも思い出すと悔しいと語っていました。

ツイッターで話題の発端となった運転士さんも最長10日以上の連続勤務もこなしているという話ですが、「乗客の皆さんに支えられて会社が存続でき、お客様に利用して頂き運賃を払って頂けるから私は給料もらい生活できることを忘れず安心安全運転でこれからも仕事したいです」と仰っていました。

狭い業界故に一度事故で失職となってしまうと同じ業種に就くのはなかなか難しいとの話。筆者の知り合いもそれでバス業界から離れた職についています。
一番身近であるバスの仕事を守り、適切に利用するためには利用している人それぞれの理解とマナー、モラルが必要となります。少しでも多くの人がマナーとモラルを守った行動で利用し続けていくのが大切であると、関係者の皆さんからお話を伺って痛切に感じました。

自分たちが必要としている交通機関。自分たちが困らない為にも、適切な行動とモラルを持って利用していきましょう。

ちなみに、バスの降車ボタンは次のバス停の案内アナウンスが流れ始めてから押すのが良さそうです。

<記事化協力>
匿名バス運転士
元バス運転士のみなさん

(梓川みいな / 画像・写真AC)

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