ネットの話題をきっかけにまさかの展開…聴覚過敏への理解と周知のためのシンボルマークができるまで
おたくま経済新聞 / 2017年10月11日 16時0分
![ネットの話題をきっかけにまさかの展開…聴覚過敏への理解と周知のためのシンボルマークができるまで](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/otakuma/otakuma_20171011_05_0-small.jpg)
聴覚過敏への理解と周知のためのシンボルマーク
先日、聴覚過敏のある息子と電車に乗っていたら息子がつけていたイヤーマフを「ヘッドホンで音楽を聴かせている」と勘違いされたというツイートを紹介するとともに、感覚過敏について考える記事を執筆しました。
そしてこの記事を書きながら思ったことを、かねて親交のあった図記号のプロである石井マーク株式会社の社長に話を振ってみたところ、更なる展開へと繋がって行くことになりました。普段記事は書いて終わりがほとんど。まれに「その後」を書くことはあっても、自らその後へ繋げてしまったのはこれが初めてです。
事の発端は筆者の個人アカウントでのツイート。「いしいしゃっちょ、何かいいマークあります?」と記事を執筆した時に思った旨を、記事へのリンクつけで実に軽いノリで石井マーク社長に振ってしまっています。
いしいしゃっちょ、何かいいマークあります?@ishiimark_sign https://t.co/PeOSOqBWPC
— 梓川みいな★ (@mi_azusagawa) 2017年10月2日
俳優の石井マークさんとは違う、安全や社会福祉、防犯防災などの話題をユニークなイラストを交えてツイートされている大阪の石井マーク株式会社の社長です。以前から視覚障害の啓発活動にも積極的で福祉面の話題で交流がありましたので多少のおふざけも許される間柄なのですが、こんなに話題になるならもっとちゃんとした文章で振れば良かったと盛大に今更後悔。
それはさて置き、このツイートに反応して下さった石井社長、数時間後には3つの図案を提案してくれました。「図記号だけでは伝えるのは難しいですね」と生意気にも返す筆者に対し、更に石井社長は図案を提案。最初に1番目の「うさぴん」に説明の文言を入れた図案を提案して下さいました。
カルロスです。ここはマークで何かを伝えようとする際に重要な点ですが、伝えたい対象者、表示するシーン、運用方法によっても設計要件は異なり、そこがずれると役に立たンものです。
例えば周知活動が前提にあるなら①のうさぴんマークも良いですが、「知らない人」にも伝わるサインではありません。 pic.twitter.com/yomjf2c0Cb
— 株式会社石井マーク (@ishiimark_sign) 2017年10月2日
この文字入りのシンボルマーク「苦手な音を防いでいます」が同じく聴覚過敏を持ったツイッターユーザに次々と支持され、さらにはまとめサービスtogetterでもまとめられ大きく反響が広がりました。
第2案
第3案
更に、小学生にも分かりやすいシンボルマークがあるといいかもという意見も出され、これを受けて更に文字の表記を改良したものを提案されています。
小学生にも分かりやすいシンボルマークとして考案「試作しながら精査の重要性を感じた事は、決して大人の言葉をカナにするのではなく子供に何を最も優先して伝え、そのための言葉を選ぶという点ですね。 『ちょうかくかびん』という言葉。誰かに『とても苦手なもの』がある事。友達を『守る盾』となる道具の事。」という石井社長の言葉に添えられていたのが、3種類のシンボルマーク。
「にがてなおとからまもるためのものです」という文字とウサギが耳を保護する物を耳につけているイラストが入った丸いシンボルマークと、盾の形の中に同じくウサギが耳を保護しているイラストと一緒にそれぞれ「にがてなおとからまもっています」「(ちょうかくかびん)とてもにがてなおとがあります」という説明が入った2種類のシンボルマーク。
このシンボルマークがツイートされると「個人差が大きい聴覚過敏でも端的に分かりやすい」と大きな反響が。聴覚過敏の当事者や家族などから「こんなマークを待っていた」「ぜひ使いたい」「ステッカーなどがあれば購入したい」という反応が続々と寄せられています。
シンボルマークを考案した石井社長は、「著作者である私が『本来の目的通りなら自由に使用してよい』という方針ですから、要はその点が明確に伝われば使いやすいでしょうね。費用が掛かる事によって『共通のシンボル』の支障となるのは望みません。何かオフィシャルな共通マークとして採用される形が最良と存じます。」と明言されており福祉に広く繋がるのであれば著作権は問わないという考えを示しています。このマークを使うことが「聴覚過敏」という症状そのものへの理解に繋がるきっかけとなれば嬉しい事である、というのが考案者である石井社長と筆者の共通の認識です。
感覚というものは受けている本人しか分からないものであり、他人に共有されにくい側面があります。服のタグがチクチクするなどの触覚の過敏はタグを排除するなどの工夫ができますし、光に対する過敏でやたらと眩しさを感じる人はサングラスを装着することで自衛することができます。しかし、イヤーマフは音楽を聴くためのヘッドホンとよく似ている事もありサングラスのように保護を目的としている事が分かりにくいのが難点。自衛のための大切な防具、イヤホンタイプの物もありますがイヤホンタイプが何らかの事情で使えない人もいます。この様に「誰がぱっと見てもある程度理由が把握できる」シンボルマークを分かりやすい状態に身に付けておくのは自衛の手段として非常に有効であると考えられます。
石井社長の発案であるこのシンボルマークが車椅子マークやヘルプマークの様に、内閣府の「障害に関するマーク」に認定されより広く知られるようになれば、更に周知も進み誰でもマークが使いやすくなるかと思います。
<記事化協力>
株式会社石井マークさん (@ishiimark_sign)
<参考>
内閣府 障害者に関するマークについて
(看護師ライター・梓川みいな)
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