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急性大動脈解離により声優の鶴ひろみさん死去、悲しみの声が世界中に溢れる その大動脈解離とは

おたくま経済新聞 / 2017年11月17日 23時48分

急性大動脈解離により声優の鶴ひろみさん死去、悲しみの声が世界中に溢れる その大動脈解離とは

「ドラゴンボール超」公式ツイッター(@DB_super2015)

 声優の鶴ひろみさんが11月16日夜に、都内の首都高速道路の道路上でハザードランプを点け停車した車の運転席でシートベルトをつけたまま意識がない状態で見つかり、その後死亡したというニュースが11月17日午前に一斉に報じられました。

 これを受けて鶴さんがブルマ役として長年声の出演を続けていたドラゴンボールシリーズの『ドラゴンボール超』公式ツイッターアカウント(@DB_super2015)でも、「永年に渡り“ブルマ”の声優を務めて頂いた鶴ひろみさんがお亡くなりになりました。 あまりにも突然のことで、信じられず、なかなか言葉が見つかりません。 鶴さんは、たくさんの勇気と優しさを届けてくださいました。 本当にありがとうございました。 心からご冥福をお祈りいたします。スタッフ」というツイートを発表。信じたくないけどこの事実を受け入れざるを得ない事となっており、世界中から哀悼のリプライが届いています。

永年に渡り“ブルマ”の声優を務めて頂いた鶴ひろみさんがお亡くなりになりました。
あまりにも突然のことで、信じられず、なかなか言葉が見つかりません。

鶴さんは、たくさんの勇気と優しさを届けてくださいました。
本当にありがとうございました。
心からご冥福をお祈りいたします。スタッフ一同 pic.twitter.com/hP9NzIorAM

— 「ドラゴンボール超」公式 (@DB_super2015) 2017年11月17日

 1984年に『週刊少年ジャンプ』で連載が開始され、1986年にテレビアニメ化されたドラゴンボール。その第一話からブルマ役で出演されていた鶴さんの訃報に驚きと悲しみが広がっています。筆者も第一話からドラゴンボールを見ていたひとり。そして筆者の子供たちが小さい時は『アンパンマン』のドキンちゃんとして親しんできた声の人でした。

 その鶴さんの死因が「大動脈剥離」という診断名で報じられています。まだ57歳だった彼女を襲ったこの病気とは。

 大動脈剥離は、一般的に「大動脈解離」という病名で知られています。この病気は急激に病状が進み、致死率の高い病気である事も良く知られています。では、その大動脈解離とはどのようなものなのかを看護師ライターでもある筆者が説明させていただきます。

■大動脈の構造と解離

 大動脈は、しなやかで強靭な血管の膜が3層からできている動脈であり、心臓から出ている一番太い動脈です。内側の膜が何らかの原因で薄くなってしまったり傷がついてしまった場合、心臓のポンプ作用で内側の膜に圧が掛かり、その部分から破れ真ん中の膜へと血液が流れ込んでしまい、真ん中の膜は破壊されてしまい内側と外側の膜の間に血液が流れ込みます。この状態が大動脈解離と呼ばれる病態です。いちばん外側の外膜は内側からの圧力ではまず破れないため、破れた内膜とその外側の外膜の部分が解離している状態となります。

 内膜と外膜の間に血だまりが大きくできてしまい、物凄い痛みを伴います。痛みは胸や背中からの激痛がみられ、発症1時間以内の致死率は1~2%、48時間以内の超急性期の致死率は30%にも及びます。発症してからの救命が早ければ助かる可能性も高まりますが、鶴さんの場合は一人で運転していた時の発症で車を路肩に寄せてハザードを付けるのが精いっぱいだったのかもしれません。同乗者がいていち早く救急で循環器の病院に運ばれていれば……と思うとやるせない思いでいっぱいです……。

■大動脈解離の原因

 発症の原因となるものはいくつかあります

・高血圧
・動脈硬化
・血管に起こっている何らかの炎症
・先天的なもの
・原因不明のもの(本態性と呼ばれる)
・加齢による血管壁の衰え

 血管の炎症は自己免疫疾患などで見られます。また、生まれつきの奇形も発症数としてはあまり多くみられませんがあるようです。
ここで注意しておきたいのが、高血圧と動脈硬化です。この二つは日常生活で普段から気を付けていればケアできるものです。特に、喫煙者の高血圧と動脈硬化の発症率は非喫煙者に比べてかなり高い状態です。喫煙者の大動脈解離や虚血性心疾患などの血管の病気は非喫煙者に比べてヘビースモーカーであればあるほどリスクが高まる確率が上がってります。受動喫煙による二次被害についても同様に非常に危険です。

 血管壁を作るのにはコレステロールが主な材料となるのですが、タバコ煙はコレステロールの変性を促進し、血管内皮を障害するとともにHDLコレステロールを減少させ動脈硬化を促進します。これが一酸化炭素による酸素欠乏や血管異常収縮とも相まって循環器疾患のリスクを増大させる事となるのです。

 ハードワークで喫煙している人はこの様な心疾患にかかるリスクが非常に高いと言えます。今回の鶴さんの死因となった大動脈解離(剥離)は鶴さんがどの様な基礎疾患があったか分からない上、喫煙されていたかどうかも筆者は把握していないので一般的な話しかできませんが、高齢者に多かったこの様な疾患が働き盛りの世代にも広がっているのはこうした要因とストレスが複合的に絡んでいる事も多い様です。

■「重病人ほど歩いて受診に来る」というジンクスがある

 突然の死は死んでしまう事になった本人も含め、周囲にも多大な影響を及ぼします。鶴さんの死を辛く悲しい話だけにしないために、私たちにできる事、それは普段の健康管理。検診を受け血圧を正常値にできるようコントロールし、健康的な生活を送ることが何よりの予防となります。

 それでも突然に不幸が来てしまう事もないとは言い切れないのが辛いところですが、少しの異変を感じて診察を受ける事で救われた例は病棟・外来勤務をした経験でもかなりの数がありました。「重病人ほど歩いて受診に来る」というジンクスがありますが、何となく胸のあたりがおかしいと受診した患者さんの心電図をとりあえず、と取ってみたらすぐに救急処置が必要だった、という人も見てきました。早めの気付きで受診してくださったおかげで緊急入院したものの命に別状はなく無事に退院できたと聞いた時は心底ホッとしたものです。

 心疾患や血管の疾患などは遺伝による事も少なからず見られますが、生活習慣とストレスをコントロールする事で救えることも多くあります。この出来事を悲しいだけにしないで、ご自身の健康への気付きになればと思います。

<参考文献>
川崎大動脈センター 大動脈瘤について 詳細編 大動脈解離 国立循環器病センター心臓血管外科 荻野 均 急性大動脈解離の病態
日本循環器学会 禁煙推進員会 喫煙の健康影響・禁煙の効果
「ドラゴンボール超」公式ツイッター(@DB_super2015)

(看護師ライター・梓川みいな)

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