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【レッドブル・エアレース】チャレンジャークラスの使用機がエッジ540V2に。オーバーGのルールも変更

おたくま経済新聞 / 2017年12月11日 14時0分

【レッドブル・エアレース】チャレンジャークラスの使用機がエッジ540V2に。オーバーGのルールも変更

エッジ540V2(Joerg Mitter/Red Bull Content Pool)

 レッドブル・エアレースの下位カテゴリー、チャレンジャークラスで使用するレース機が2018年シーズンから、現行のエクストラ330LXからマスタークラスでも使用されているエッジ540V2に変更されることになりました。あわせて、オーバーGに関するルールも変更となります。(見出し写真:Joerg Mitter / Red Bull Content Pool)

 2014年シーズンから始まったチャレンジャークラス。これまで使用してきたレース機は、複座(2人乗り)のエクストラ330LXでした。エクストラ300シリーズは、その扱いやすさと素直な操縦特性で、エアロバティック競技におけるスタンダードとして知られ、多くのエアロバティック選手が愛用する飛行機です。レッドブル・エアレースが始まった当時、参加したパイロットの多くは単座(1人乗り)のエクストラ300Sか、複座(2人乗り)のエクストラ300Lで参戦していました。エクストラ330LXは、排気量の大きいライカミングAEIO-580(9550cc)エンジンを搭載したバージョンです。

チャレンジャークラスのエクストラ330LX(撮影:咲村珠樹)

 2018年シーズンからは、マスタークラスでも使用しているエッジ540V2をチャレンジャークラスでも使用することになります。エクストラ330LXとエッジ540、両者を比べてみましょう。

 まずエンジンです。エクストラ330LXはライカミングAEIO-580(9550cc/315馬力)を搭載しているのに対し、エッジ540V2はライカミングAEIO-540-EXP(8900cc/300馬力)を搭載しています。エクストラの方が15馬力上回っています。

 次に機体の重量を見てみましょう。エクストラ330LXの空虚重量は660kg、これに対しエッジ540の空虚重量は524kg。実に136kgもエッジ540の方が軽いのです。その分加速が良くなるためスピードが出やすく、軽快に動くことができます。上昇力で言えば、エクストラ330LXは3200フィート/分に対し、エッジ540は3700フィート/分という違いがあります。

 また、エッジ540の主翼平面形はエクストラ330LXと違い、前縁は直線で後縁のみが前進するような形で幅が狭くなっていきます。中島飛行機が戦時中に開発した一式戦「隼」、二式単戦「鍾馗」、四式戦「疾風」と同じ手法です。このような平面形状は、前進翼と似たような効果を持ち、失速限界が高く、より機動性が高いという特性を持っています。つまり、より旋回時に失速しにくく、素早く旋回することが可能であり、レッドブル・エアレースに適した機体であるということです。

EDGE 540V2(Joerg Mitter/Red Bull Content Pool)

 レーストラックでの速さでは、2017年シーズンの開幕戦アブダビで、マット・ホール選手がメーカーから無改造のエッジ540V3をレンタルして飛んだのを基準とすると、チャレンジャークラスのエクストラ330LXはそれより5〜7秒遅いタイムとなっていました。この速さの違いが、チャレンジャークラスからマスタークラスに昇格したばかりのパイロットを苦しめてきたのです。速さや機動性が違いすぎ、機体の操縦特性に慣れるのに手間取って、優秀な操縦技術を持っていても昇格初年度は勝負にならない……ということを、昇格したばかりのパイロットたちは異口同音に語っていました。

 チャレンジャークラスの使用機がエッジ540V2に変更されることで、このギャップが少なくなり、スムーズにマスタークラスに移行することが可能になると考えられます。同じエッジ540になるとは言っても、チャレンジャークラスは共通使用機のために無改造、これに対しマスタークラスはエンジンとプロペラを除いて改造可能なので、トラックでのタイムはマスタークラスの3〜4秒落ちくらいになるでしょう。

エッジ540の導入で、エクストラ330LXがレースで使用されなくなりますが、レッドブル・エアレースから消える訳ではないでしょう。2017年シーズンまで、主にVIPを対象にした体験飛行をチャレンジャークラス用の機体を使用して行なっていますが、エッジ540は1人乗りのため、その用途に使うことができません。そのために、少なくとも1機は残され、レース会場で目にすることがあるのではないかと思われます。

 同時に、オーバーGに関するルールも変更が加えられました。これまでは10Gを超えるGを0.6秒以上記録するか、瞬間的にでも12G以上のGを記録した場合、DNF(ゴールせず)となり完走が許されませんでした。これが10G以上12G未満のGを0.6秒以上記録した場合、2秒のペナルティとなります。12G以上を記録した場合のDNFは変わりません。チャレンジャーカップでも同様ですが、上限となるのは11Gとなります。

 これまでオーバーGでいきなりレースが終わってしまうのに比べると、12Gまではインコレクトレベルと同じ2秒ペナルティとなることで、勝負をゴールまで楽しめる機会が増えることが予想されます。今までのオーバーGでも、12Gを記録してのDNFは少なかったので、よりスリリングな展開となるでしょう。

(咲村珠樹)

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