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避妊だけじゃない。女性の体と心の悩みとピルの効用が話題

おたくま経済新聞 / 2018年1月18日 14時45分

避妊だけじゃない。女性の体と心の悩みとピルの効用が話題

ナプキンと痛み止め / 写真AC

 妊娠できる体に成長してから更年期が終了するまでの間、女性は性ホルモンの影響で様々な心身の不調や女性特有の疾患に悩まされる事が多くあります。子宮内膜症は女性の10人に1人、子宮筋腫に至っては10人に2~3人が症状の強弱の違いはあれど持っているという統計の結果もあるように、女性であるがゆえに特有の症状に悩む人は多いのです。そんな女性の心身の悩み、ぜひ男女老若問わず知ってもらいたいというツイートが話題になりました。

 ツイッターユーザーの雀@竹‏さんが産婦人科で貰ったパンフレットの中に、月経困難症や子宮内膜症の治療について家族の理解とサポートの必要性を説明しているページがありました。

 雀@竹‏さんは「産婦人科でもらったパンフがすごく良かった。老若男女問わず、身近に女性がいる方に是非読んでもらいたい。一部アンダーライン引きましたが、正直全文引きたいくらい大事な内容。生理に限らず、産婦人科の受診、ピル服用に付いて回る偏見がなくなるといいなぁ。」という言葉とともにパンフレットの画像を添えています。

産婦人科でもらったパンフがすごく良かった。老若男女問わず、身近に女性がいる方に是非読んでもらいたい。

一部アンダーライン引きましたが、正直全文引きたいくらい大事な内容。

生理に限らず、産婦人科の受診、ピル服用に付いて回る偏見がなくなるといいなぁ。 pic.twitter.com/yzIe9Aeeqw

— 雀@竹 (@kata_k0) 2018年1月15日

 パンフレットには、「ご家族の皆様へ」という見出しで「月経困難症や子宮内膜症の治療には、ご家族や身近な方々のご理解とサポートが必要です」と大きく書かれており、雀@竹‏さんがそのパンフレットの下線を引いた文章は

「月経困難症、PMS(月経前症候群)、PMDD(月経前不快気分障害)を併発している場合、女性が「好調」だと感じられる期間は1か月のうち、わずか十日間ほどしかありません。」
「一昔前までは『病気じゃない』『我慢すればいい』と誤解されていました」
「『月経痛は当たり前』ととらえず、婦人科を受診するよう勧めて頂けますよう、お願いいたします」

という部分。

 若いころから生理で寝込むほどの腹痛や腰痛に見舞われたり、生理用品を何度も頻繁に取り換えないといけないほど出血量が多い場合はそれが自分の中では当たり前となってしまい気が付かないまま長期間にわたって放置されてしまうケースも多くあります。 また、最近になってやっとPMSやPMDDが知られ始めてきましたが「気持ちの問題」「根性で何とか」と未だ適切な治療に結びつかない事も。仕事や家事、日常生活などに支障をきたすほどの精神面での不安定さはストレスや鬱症状でも起こり得るものですが、ホルモンバランスが安定していない場合でも起こります。

 雀@竹‏さんは続くツイートで、
「生理痛そのものも酷かったけど、それ以上に異常な眠気でひと月に7日間しか人間的生活が送れなかった私が人間的生活を送れるようになった、受胎率低下してることが判明した、のでそういう方も受診されるのを激推しします。」
「かつて病院を受診して痛み止めしか処方されなかったとか、個人差の範囲だと言われたから諦めてるって方がいたら、めげずに毎年検診を。ホルモンのバランスは非常に精密なので、検査に引っかからない範囲でじわじわ悪化、気づいたら妊娠を望むなら不妊治療が必要ってレベルになってたりします。」
「受診を迷う方もいると思うので、私が毎日しんどい自身が情けないと言ったときに先生がくれた言葉を載せておきます。『女性と男性は身体のシステムが違うの。気合で男性になれないように、気合でホルモンはどうにかできないの。だから薬に頼ることは甘えじゃない。我慢しないで元気になっていいのよ。』」
と、この後この内容を含むツイートを数回に分けてツイートされています。

 雀@竹‏さんの場合、高校1年の時に生理痛が重く市販の鎮痛剤が効かなくなり、産婦人科受診。痛み止め処方しかなく、思春期だから仕方ないと言われて諦めたそうです。10代後半は急激に女性ホルモンの分泌量が増えて妊娠に適した体をつくる年頃、生理痛がこの時期に強くなる人はかなり多くみられます。

 雀@竹‏さんが特に顕著に感じた症状は、腰の痛み、下腹部の鈍痛、思わず蹲るほどの突発的な激痛と慢性的な異常な眠気の出現で、19歳の頃に自覚し、徐々に悪化していったそう。この時の診断名は、卵胞嚢腫と月経困難症。どちらも非常によく見かける女性特有の疾患です。

 最終的には5件目の産婦人科でやっと症状と体質にあったピルを処方してもらえる事になったそうです。20代から強い眠気に悩まされるようになり、4回薬を変えて現在は安定しているそうですが、合う薬に出会うまでの間に酷い時は1日4時間しか起きている事ができない状態となったり生理周期も突然乱れて生理痛が酷くなったりと大変だった様子です。

 この一連のツイートには多くの経験者の声が集まっており、子宮関連の症状がいかに多く見られているかを如実に物語っています。

月経に伴って起こる症状|バイエル薬品HPより

■ピルの効能と副作用

 ピルというと未だに避妊目的というイメージが強くあるかもしれませんが、雀@竹‏さんに処方されているピルは『ヤーズフレックス配合錠』。避妊目的ではなく「子宮内膜症に伴う疼痛・月経困難症治療剤」と添付文書にも明記されている卵胞ホルモンと黄体ホルモンを配合したホルモン製剤で超低用量ホルモン合剤。ちなみに避妊目的には使えません。体内で生産される女性ホルモンが少なかったり不安定であり、症状の治療が必要とされた場合に処方されるもの。人によってはこの薬が合わなかったり基礎疾患があると使えなかったりしますし、喫煙者はまず禁煙してから服用開始となる薬です。

 雀@竹‏さんはこの薬に辿り着くまで何度も薬を変えてやっと巡り合う事ができましたが、薬には副作用の可能性も付きもの。こうしたホルモン製剤は血液が凝固しやすくなる事が知られており、頻度は多くないもののできた血栓が体のどこかに詰まってしまうという可能性もあるのです。半年ごとに検副作用などが出ていないか検査をする必要もあり、医師の観察・指導の下に服薬を続ける必要があります。

 しかし、副作用が出ない限りは長期にわたる服用も可能であり、適切な服薬により生理痛や眠気・だるさ・無気力などといった症状からも解放され妊娠率も上げる事が期待できます。子宮内膜症などの子宮の疾患があると妊娠率が下がるので、こうした治療が大事となってきます。

■全ての人に知って欲しい事

 この様な超低用量の新しいタイプの女性ホルモン製剤(ピル)は最近できたものであり、ひと昔前のイメージからは全く違う治療薬として使われています。同時に、女性ホルモンは分泌に波があるとそれだけで心身ともに様々な不調をきたす事も知られておりその治療薬としても使われています。

 現在でも避妊目的でのピルは産婦人科で処方する事ができますが、それ以上にこうした女性特有の不調の為の治療薬が開発されています。不調に悩まされる本人だけでなく周囲にいる人が症状を知って、適切な治療が受けられる環境を整える事が何よりも大事となります。

 初潮を迎えた後の女児には生理前や生理中の不調がないかよく観察する事も大事ですし、生理痛が酷くなりがちな中高生には自分の体の状態をよく観察して正常と言われている経血量や痛みが酷くないか、気分の不安定さが著しくないかなどチェックできるよう知識を持てるようにしてあげて欲しいと思います。

 そして、同性であれば若い子がもっと気持ちが楽に産婦人科へ診察を受けに行く事ができるサポートをしてあげて欲しいと思います。男性諸氏はこうした症状がある事を踏まえて配慮していただけると全ての女性が安心して過ごす事ができると思います。

 なってみないと分からない体や心の症状。根性だけではどうにもならない事でもお互い思いやりを持つ事で少しでも多くの人が過ごしやすくなるといいですね。

<参考>
ヤーズフレックス配合剤|月経困難症治療剤|Gynecology Expert|バイエル薬品
ヤーズ配合錠服薬指導用ファイル

<記事化協力>
雀@竹‏(@kata_k0)さん

(梓川みいな / 正看護師)

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