じわじわくる?生き物みたいな尾張一宮の謎オブジェ
おたくま経済新聞 / 2018年1月28日 10時6分
![じわじわくる?生き物みたいな尾張一宮の謎オブジェ](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/otakuma/otakuma_20180128_01_0-small.jpg)
尾張一宮の謎オブジェ / 編集部撮影
愛知県・JR尾張一宮駅の駅前ビルにある一宮市観光案内所ディスプレイに「謎のオブジェ」が設置されており昨年末(2017年)話題となりました。なんだか不思議なオブジェがあるぞ!と。見ているだけで「じわじわくる」とも言われています。
オレンジ色の卵みたいな形のものにおびただしい数の黄色い小さな風船がびっしりとくっ付いている、謎のオブジェ。黄色い風船は規則正しい動きで膨らんだりしぼんだりを繰り返しています。その様子は何とも形容しがたく動いているさまを見続けていると不思議な気分になります。このオブジェの正体やどんな人が制作したのか、取材しました。
東海地方に拠点を持ち活動しているアーティストの三上俊希さんが制作されたこのオブジェは、1月20日から2月12日まで開催されている『織り目の在りか 現代美術in一宮』という展覧会のPRに向けて、11月下旬から展示されたもの。あいちトリエンナーレ地域展開事業~あいちアートプログラム~の一環として一宮市各所でこの展覧会は開催されており現代芸術を手掛けるアーティスト10名が出展しています。
■『呼吸』がテーマの作品
三上さんのこの作品には『<<未確認生命体>>のためのマケット』という作品名が付けられていますが、三上さんの作品群はいずれも呼吸や生きるための動きに焦点を当てた『いのち』がテーマになっています。
こちらの作品は、生命にとって重要な行為の一つである呼吸をテーマに制作されています。
三上さんが命のうごめきに強く惹かれたのは幼少の頃。野山の石をひっくり返したその裏に群がる無数の生物がうごめく様子を見て気味の悪さを感じると共に、何とも言えない美しさを感じたそうです。その原点から、ぞっとする感覚の中に隠れる美しさ、生物が群れて生きているということに興味を持ち作品を制作しているそうです。
作品の制作には約1か月を要したそうで、呼吸を表現するために風船などを用いて脈動的な動きを与えたという事です。息をする事は心臓や消化器官などと異なり無意識下でも意識的にも行う事ができる、生命にとって重要な行為の一つ。その可変的な動きに強く惹かれて作品に落とし込んでいるようです。
■生命がテーマの巨大作品も
三上さんはこの作品の他にも「三上俊希展-呼吸する空間」(2016年、愛知)、グループ展に「六本木アートナイト」(2016年、東京)などの展覧会にて生命、細胞などをイメージしたインスタレーションを展示されており、体の内部を感じる様な人が入れる大きさの作品も手掛けています。高さ4000×幅9000×奥行き18000㎜という巨大な作品は今回の『織り目の在りか 現代美術in一宮』に展示され、作品の内側から鑑賞できる不思議な空間を味わう事ができます。
■現代美術の鑑賞は難しいものではない
一見して謎めいた、不思議な作品が多い現代芸術。作品の意図やコンセプトがパッと見て分からない、と感じる人も多いかと思います。三上さんに現代芸術の鑑賞についてお話を聞きました。
「現代美術の見方は個人的に感じたものが答えだと思います。ただ現代美術の文脈の中において重要な物や評価に値するものもあると思います。作品の気になった部分に興味を持ち調べていくととても単純なことだったりします。ですが現代美術は簡単に言葉等では説明できず、作品の前に実際に立ち、向かい合ったときに感じる感情や感覚が大事だと思います。正しい見方というよりはTシャツや服を選ぶようになんとなくいい作品だなという視点で興味を持つということが大事だと思います。」
考えるな、感じろ……というのが答えなのかもしれません。正解はなく、感じたものそのものがアートなのですね。上手く言葉にできなくても何か感じるものがある、惹かれるものがあるならそれでいいのです。興味をひかれた作品のコンセプトを探していくうちに新しい発見があるかもしれない、そんな静かなワクワク感も楽しみ方の一つかもしれません。
ー来歴ー
三上俊希(Mikami Toshiki)
1991年 静岡県生まれ
2014 常葉大学 造形学部 造形学科 立体メディア専攻 卒業
2016 愛知県立芸術大学 美術研究科 彫刻専攻 修了
大学在学中の2011年より数々の作品を様々な作品展に出展、2015年Tokyo Midtown Art Award 2015 優秀賞&オーディエンス賞 受賞など
2016年愛知県立芸術大学 彫刻専攻賞 受賞 など
(梓川みいな)
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