【レッドブル・エアレース】ついに2018年開幕!開幕戦・アブダビ大会を占う
おたくま経済新聞 / 2018年2月1日 14時39分
2018年のマスタークラスパイロット(Predrag Vuckovic/Red Bull Content Pool)
いよいよ2月2日・3日に迫ったレッドブル・エアレース2018年開幕戦アブダビ大会。現地からの情報も色々入って来ています。当日の夜にNHK・BS1で放送されることもあり、今から知っておくと便利な情報をお知らせします。
■「忙しい」トラックレイアウト
2018年アブダビ大会のトラックレイアウトは、基本的に2015年から変わっていません。が、少しずつテクニカルな要素が増えています。スタートゲートを過ぎるとまずシケイン(ゲート2)、そしてゲート3からバーティカールターン(VTM)。そしてゲート4へ向かいます。シングルパイロンのゲート5からゲート6を過ぎるとハイGターン。2017年ではハイGターンの間にゲートはありませんでしたが、今回はゲート7が存在し、ターンの途中で機体を水平に戻さなくてはいけません(2016年ではここにシングルパイロンがありました)。そしてまたスタートゲート(ゲート8)に戻り、2周目に入ります。
2018年アブダビ大会のレーストラック(Red Bull Media House GmbH/Red Bull Content Pool)レーストラックの図を見ると、バックセクション(ゲート1・2)とフロントセクション(ゲート4〜6)は平行に見えますが、実際のレイアウトではバーティカルターンを行うゲート3を頂点とする三角形のような形状をしており、ゲート3への進入角は少々厳しいものとなっています。風の状態によってはパイロンヒットが出る可能性も。
2018年アブダビ大会のトラック(Joerg Mitter/Red Bull Content Pool)また、反対のハイGターンの部分では、ゲート7があるために機体を一旦水平にする必要があります。そこからスタートゲート(ゲート8)へは角度が若干きついため、ゲート7やゲート8でインコレクトレベルを誘発するレイアウトです。ここで変な角度で入ってしまうと、2周目のシケイン(ゲート10)をリズムよくタイトにこなせなくなり、次のゲート11からのバーティカルターンが難しくなります。リズムよく次々とゲートを処理していかなくてはならないため、結構忙しいレイアウトだと言えるでしょう。
■開幕戦は「答え合わせ」のレース
開幕戦は、オフシーズンに実施した機体の改修の成果を実戦で確認する場、という側面もあります。もちろんテストフライトを行ってはいるのですが、レーストラックを飛ぶのはこれが最初。テストフライトでは判らなかったものが判明することもあります。2017年の開幕戦、室屋選手はエンジンの冷却効果を高めた改修をオフシーズンに施して臨んだのですが、逆にオーバーヒートしてしまい、思うような飛行ができなかったことは記憶に新しいところです。
クリスチャン・ボルトン選手とテクニシャンの西村隆さん(Predrag Vuckovic/Red Bull Content Pool)今回、大規模な改修を行ったところでは、チリのクリスチャン・ボルトン選手の機体が挙げられます。2017年の千葉大会で、ボルトン選手のチームテクニシャンを務める日本人、西村隆さんが筆者に「オフシーズンでの大改修では、2015年のポール・ボノムみたいな形になる予定」と明かしてくれていましたが、実際の機体を見るとまさにその通り。現在そのボノム氏の機体を使っているスペインのフアン・ベラルデ選手と同じような姿になりました。左右非対称のエンジン冷却空気取り入れ口、そして機種下面の左右に設けられたオイルクーラー専用の冷却空気取り入れ用のNACAダクトまでそっくりです。もともとボルトン選手の機体はベラルデ選手から譲られたものなので、結果的に同じ姿になるのは非常に興味深いですね。
■新カラーリングのトレンドは「渋め」?
開幕戦で楽しみなのは、各機体のカラーリングの変化。今年からマスタークラスにステップアップした、イギリスのベン・マーフィー選手の機体は室屋選手、ピーター・ポドルンシェク選手と受け継がれてきたエッジ540V2です。自身が所属する、元イギリス空軍レッドアローズのパイロットが揃ったエアロバティックチーム「ブレーズ(Blades)」の名を冠した「ブレーズ・レーシングチーム」としての参戦です。2017年11月、筆者に「最高に英国調(Best of British)な機体デザインにするよ」と答えていた通り、その機体デザインはイギリス国旗のユニオンジャックを大胆にあしらったデザインになりました。
ベン・マーフィー選手(Joerg Mitter/Red Bull Content Pool)
ベン・マーフィー選手の機体(Predrag Vuckovic/Red Bull Content Pool)
機首は赤、全体のトーンは限りなく黒に近いつや消しの紺色(鉄紺)。機体下面はシルバーです。シックで、そして内に秘めた情熱を感じさせるようなものとなりました。
また、時計メーカー、ブライトリングのスポンサー活動縮小に伴い、独自のレーシングチーム「11レーシング(11RACING)」として参戦することになったフランスのミカ・ブラジョー選手。2017年はレトロ調だったMXS-R「スカイレーサー」は、ガラリとカラーリングが変わり、セクシーなシルバークロームとブラック、ホワイトのカラーになりました。レーシングスーツも黒になり、ヘルメットはフランス国旗のトリコロールと変わりました。筆者が送った「Brand New Brageot(新生ブラジョー)」の言葉を気に入ってくれ、TwitterやFacebookなどでハッシュタグとして使ってくれています。
ミカ・ブラジョー選手の機体(Joerg Mitter/Red Bull Content Pool)同じく、機体のカラーリングが大きく変わったのが、オーストラリアのマット・ホール選手。機体の前半分はアースカラーで、機体後方にかけて渋めの色合いでストライプが入って垂直尾翼へ……というデザインです。2016年・2017年のレッドブル「シンプリーコーラ」のカラーリングとガラッと変わりました。
マット・ホール選手の機体(Predrag Vuckovic/Red Bull Content Pool)実はこれ、2017年からレッドブルが展開し始めたソフトドリンク(非エナジードリンク)シリーズ「オーガニクス・バイ・レッドブル」のスポンサーカラー。オーガニック材料を使ったソフトドリンクのシリーズで、以前から販売されていたシンプリーコーラは、そのラインナップのひとつになったのです。シンプリーコーラの他にはビターレモン、ジンジャーエール、トニックウォーターがあり、ホール選手機の水平尾翼には、その缶のデザインが4種類並んでいるというシュールなデザインになっています。
機体のデザインが変わったわけではありませんが、ドイツのマティアス・ドルダラー選手の機体には今年から大口スポンサー「I-CLIP」のロゴが主翼と水平尾翼に大きく入りました。これはカードサイズのコンパクトな財布を展開するドイツのブランドです。
マティアス・ドルダラー選手の機体(Predrag Vuckovic/Red Bull Content Pool)■今年はタイム差の少ない厳しい戦いに?
筆者の手元には、トレーニングフライトのタイムが入ってきているのですが、ほぼ全ての選手が1秒以内のタイム差に入ってくる形になっており、機体の速度差というものが縮まってきているように感じられます。エンジンとプロペラの改造が禁止された2014年から5年目のシーズンを迎え、各チームとも機体の改修・熟成が進んできていることがうかがえます。今年はよりテクニックが重視され、わずかなミスが勝敗を分けるようなスリリングなレースが展開されそうです。
ディフェンディングチャンピオンとして2018年シーズンを迎える日本の室屋選手。トレーニングフライトの1本目はちょっとしたトラブルで飛行できませんでしたが、2月2日に予定される予選では素晴らしいフライトを見せてくれるでしょう。
室屋義秀選手(Predrag Vuckovic/Red Bull Content Pool)■日本でのネット生中継はDAZNへ。テレビはNHK・BS1が継続
今年から、ネットによる生中継はレッドブルTVから、Jリーグの全試合中継も手がけるDAZN(ダ・ゾーン)が担当することになりました。こちらはスポーツキャスターのニック・フェローズさん(元イギリス代表アルペンスキー選手・コーチ)の実況と、ポール・ボノムさん(2009・2010・2015レッドブル・エアレース年間チャンピオン)の解説で放送される英語版となります。アブダビ大会は2月3日の21時(日本時間)から放送予定。
通常のテレビ放送は、NHKのBS1が放送予定。野瀬正夫アナウンサーの実況、能勢雄一さんの解説、辻よしなりさんのレポートで、開幕戦のアブダビ大会は2月3日当日の23時から放送予定です。また、スカパー!のJ-SPORTSでも英語のダイジェスト版が放送される予定です。
見出し写真:Predrag Vuckovic/Red Bull Content Pool
(咲村珠樹)
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