アメリカ陸軍が新型空対地ミサイルJAGMを試験中
おたくま経済新聞 / 2018年2月22日 8時5分
JAGMを発射するAH-64(PhotoCredit:U.S.-Army)
アメリカ軍の新型空対地ミサイル「JAGM(Joint Air-to-Ground Missile)」の運用試験が、アメリカ陸軍によって進められています。
JAGMは、現用の対戦車ミサイルであるBGM-71TOW(発射筒型有線式光学誘導弾の略)やAGM-114ヘルファイア(ヘリコプター発射型撃ちっ放し式ミサイルの略)、AGM-65マーベリックを更新する新しいミサイル。その試験は、テキサス州ウエストフォートウッドにある陸軍運用試験コマンド(USAOTC)の航空試験局(AVTD)によって、アリゾナ州ユマ試験場と、アラバマ州のレッドストーン兵器廠付属試験場で行われています。
JAGMはセミアクティブレーザー誘導、もしくはセミアクティブレーダー誘導式のミサイルで、Joint(統合)の名が示す通り、陸海空軍・海兵隊の様々な装備から運用できるように設計されています。レーザー誘導とレーダー誘導のどちらを使用するかは、状況に応じて選択が可能です。
航空試験局のテストパイロット、マイケル・ケネディさんは「レーザー誘導ミサイルの場合、目標に命中する最後の6秒間というのは、レーザー照準器に目標を捉え続けないといけないので、非常にリスクの高い場面です。照準器から目標を外してしまうと、ミサイルも目標を外れてしまいますからね。しかしJAGMの場合は、たとえばレーザー誘導で発射した後に(目標を直接見られる位置にいなくていい)レーダー誘導に切り替えて、反撃から回避する機動を行うことができるんです」とJAGMの有効性を語ります。
また、レーザー誘導とレーダー誘導を切り替えられることで、天候に応じて適切な誘導方法を選択することができますし、現行のヘルファイアより有効射程距離が長いため、目標までの距離を取ることができます。また、レーザー誘導では目標にレーザーを当て続けないといけないため、逆に目標から見える場所にい続けなくてはならず、返り討ちにあう危険が常に伴います。しかし途中でレーダー誘導に切り替えることで、目標に身をさらし続けることなくミサイル誘導が可能になるというわけです。
航空兵器テクニカルアドバイザーのアル・マエズさんは、この2つの誘導方式を選択できる利点について「レーザー誘導式のミサイルは、発射した時の煙や火薬の燃え残りのチリなどでレーザーが拡散され、目標を見失うケースが時折生じます。しかしJAGMは(目標を外す危険性を見越して)複数発射していたミサイルを、1発のミサイルで済ませることができるのです」と語ります。
ユマ試験場では、実物のT-72戦車を遠隔操作で動かして標的とすることができ、より実戦に近い状況で試験を行えます。また、アリゾナの砂漠地帯でもあるので、砂やホコリが巻き上げられるという戦場に近い状況でも試験が可能なため、より有効なデータを取得することができるのです。
現在はAH-64アパッチを発射母機とする試験が行われていますが、将来的には海軍のMH-60R/Sシーホーク、海兵隊のAH-1Zヴァイパーといったヘリコプターや、MQ-1Cグレイイーグルなど無人機(UAV)でも運用試験が行われる予定です。
Image Credit: U.S. Army
(咲村珠樹)
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