JAXA「未来レストラン いぶき」でディストピア感じる未来メニュー食べてきた
おたくま経済新聞 / 2018年2月23日 12時5分
「未来レストラン いぶき」のメニュー
地球の気候変動(Climate Change)という言葉、聞いたことはありますか?特に地球温暖化については、少なくとも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。「京都議定書」とか「パリ協定」という言葉がニュースに出てくることはあっても、これは企業や政府が取り組む課題であって、個人レベルでは何をすればいいのか、漠然としていて解りにくい……という感じがあると思います。それを具体的に想像してみませんか?という、JAXAがプロデュースする「未来レストラン いぶき」が、東京・表参道に2月25日の1日だけ、限定オープンします。そのプレス向け内覧会に出席してきました。
この「未来レストラン いぶき」は、地球の気候変動に興味を持って欲しいということと、JAXAの地球観測衛星が気候変動についてどのような観測を行なっているのか、ということを紹介する目的で開店する、1日限りのレストラン。テーマは「地球温暖化がこのまま進むと、未来の食事はこう変わってしまうかも」というものです。
いぶき2号の平林プロジェクトマネージャ(左)シティ・ウォッチ・スクエアの林さん(中)いぶき2号の安部研究開発員(右)店長を務めるのは、JAXAの温室効果ガス観測技術衛星「いぶき2号(GOSAT-2)」のプロジェクトマネージャ、平林毅さん。いぶき2号は、2009年に打ち上げられた温室効果ガス観測衛星「いぶき(GOSAT)」(設計寿命の5年をはるかに超えて運用中)の後継機として、2018年度中に打ち上げ予定です。
いぶき2号の平林プロジェクトマネージャ平林さんによると、このレストラン開店の経緯は、ひとつにはJAXAの地球観測衛星「いぶき(GOSAT)」「しずく(GCOM-W)」「しきさい(GCOM-C)」の認知度がわずか2.8%という調査結果が出たこと。
そして地球環境問題に対する関心が、2007年の57.4%から2016年には40.9%に低下しており、74.9%が「温暖化は国や企業が取り組む問題」とし、半数以上の55.1%が「温暖化は自分ではどうにもならない」と少し他人事としていること。そして73%の人が「地球温暖化によって自分の生活が脅かされるのなら問題だ」と考えているという調査結果だったといいます。他人事ではなく、身近な問題として考えてもらいたいとの思いで、具体的に「温暖化が進むと、我々の暮らしはどうなるのだろう」ということを食を通して考えてもらいたい、というお話でした。
さて、その「地球温暖化が進んだ先には、こんな料理が並ぶようになるかもしれない」というメニューが紹介されました。
まずは温暖化が進むと小麦の栽培が難しくなり、さらに栄養価も低下が予想されるため、そのような環境でも栽培が可能で、栄養不足を補うスーパーフードとして期待されている、スピルリナ(藍藻)を使った冷製スパゲッティ「BLUE PASTA」。目にも鮮やかな青色は、スピルリナ由来の色素タンパク質、フィコシアニンによるものです。
食べてみると、チーズの味わいが強くて、色はともかく味としては食べられる感じです(まぁレストランの料理ですからね)。スピルリナの栄養は豊富で、火星への有人飛行で食料の候補とされるもののひとつとされているので、見た目以外は非常に安心なメニュー。
続いて現れたのは、小麦粉が貴重になったため、タコをだし汁のゼリーでコーティングした「CRYSTAL TACOYAKI」と名付けられたタコ焼き。……これなら「タコが入ってない!」ということはなさそうですが……。
さすがに小麦粉の生地を使っていないので、タコ焼きというよりは「タコのゼリー寄せ」というものに。味は悪くないのですが、まるっきり別の料理になっています。
そして、気温が上昇したことで家畜の生育環境が悪化し、肉の生産量が減り、肉質も低下すると考えられるので、肉自体が貴重品になります。そこで肉はちょっぴり、紫いもにメインの座を奪われたステーキ「STEAK ON THE SIDE」。
ほんとにステーキは「肉片」といっていいほどの大きさで、味わうといった感じではありません。紫いもは非常においしかったんですけどね……。
お寿司は魚が獲れなくなるため、ネタは人工のイクラと、暑くなったので日本で栽培されるようになったトロピカルフルーツや野菜を使います。「FUTURE SUSHI」と題されたこれらのお寿司、いわゆる「野菜寿司」みたいなものになっているのですが、シャリの味が勝ったような感じでした。
デザートのプリンは、気温の上昇で牛や鶏の生育環境が悪くなり、牛乳や卵が貴重品になった……ということで、牛乳と卵で作るプリンはちょっぴり、カラメルソースならぬカラメルゼリーで底上げされた「UPSIDE-DOWN PUDDING(大逆転プリン)」です。味わいは、カラメルゼリーにカスタードソースをかけたような感じになってしまっていました。
いやはや、こんな未来はかなりのディストピア感。こんな食事ばかりじゃなぁ……と思っていたら、資料の中にレシートが挟まっていました。……げ。
このメニューの総額、なんと1万7000円。これは国連の2014年の調査結果で「食料価格が最大80%高騰する」という可能性を反映した金額だそうで。なにやら薄ら寒さを感じたのは、雪が舞う当日の天気のせいだったのでしょうか……。もちろん、2月25日のレストランオープン時も「試食」ということで無料とのことなので、この金額を払わされることはないそうですよ。
2018年2月25日には、50名限定でこの「未来レストラン いぶき」のメニューを試食することができます。スケジュールと場所は以下の通りです。
「未来レストラン いぶき」
2018年2月25日限定オープン
※当日は8:00より各界開始時間まで会場前で整理券を配布予定。予定数に達し次第配布終了。
※前日など、2月25日の8:00以前から並ぶことはできません。
試食会1回目:11:00〜12:00(10:45 開場)限定25名
試食会2回目:13:00〜14:00(12:45 開場)限定25名
展示自由観覧:15:00〜18:00(15:00 開場)入退場自由・整理券不要
会場:hanami 表参道 2F(東京都渋谷区神宮前5-3-8 AF Lohas St. Bldg 2F)
温室効果ガス観測衛星「いぶき2号(GOSAT-2)」は、2018年度にH-IIAロケットで打ち上げ予定。すでに衛星は製造メーカーの三菱電機から筑波宇宙センターに移送され、最終試験の段階に入っているとのことです。
(咲村珠樹)
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