【レッドブル・エアレース】レース機に新しいGPSテレメトリシステムを採用
おたくま経済新聞 / 2018年2月27日 11時24分
室屋義秀選手(Andreas Langreiter/Red Bull Content Pool)
今シーズンからレッドブル・エアレースに参加するレース機には、新たなGPSテレメトリシステムが採用されています。昨年まではガーミン(GARMIN)社の製品が使われていましたが、2018年シーズンはアメリカのベクターナブ(VECTORNAV)社のVN-300という製品が採用されました。2018年2月26日(アメリカ時間)、ベクターナブ社が発表しました。
ベクターナブ社はテキサス州ダラスに本社を置く、ナビゲーションシステムの会社。車や飛行機をはじめ、様々なナビゲーションシステムを開発・製造しています。
レッドブル・エアレースに採用されたのは、VN-300というGPS/GNSSとINS(慣性航法装置)という2種類のナビゲーションシステムが使える、デュアルナビゲーションシステム。さらに各種センサーと連携して、様々な情報を送信するテレメトリシステムも備えています。しかもサイズは45ミリ×44ミリ×11ミリ、重量わずか30グラム足らずと非常にコンパクト(この種の機器において最小・最軽量)であることも特徴です。
センサーは、それぞれ3軸の加速度、ジャイロ、磁力センサーに加え、圧力センサーや温度センサーなどを装備。これによって測定できるデータは、移動方向、移動速度、加速度、高度、現在位置、ロール・ピッチ角、エンジン各部(シリンダー、排気、吸気など)の温度、気圧、磁力、G(重力加速度)など多岐に渡ります。
ロール角が測定できるので、エアゲート通過時のインコレクトレベル(10度以上の傾き)もリアルタイムのテレメトリデータで判ります。今まではエアゲートに正面と真横から、2つの角度で捉えるカメラを使ってインコレクトレベルの測定をしていましたが、テレメトリデータも使えるようになるので、より精密かつ素早く判定できることになることになります。また、Gはプラスマイナス16Gまで測定可能。
そしてこのリアルタイムのテレメトリデータは、今シーズンから始まった、スマホアプリを使ったVR生中継にも使用されています。多岐にわたる精密なデータにより、まさに自分がパイロットとともにレーストラックを飛んでいるようなリアルタイムのVR体験が可能になったと言えそうです。
ベクターナブVN-300の採用について、レッドブル・エアレースのスポーツテクニカルマネージャー、アルバロ・ナバス氏は「これまで私たちは様々なINS機器を採用して、どれがレッドブル・エアレースのダイナミクスにおいて十分なパフォーマンスを発揮できるか、試行錯誤してきました。ベクターナブVN-300は高度、水平位置、そして速度の精度において、我々の要求するレベルに達したただ一つの製品でした。しかもこの筐体だけで、なんのカスタマイズも必要ない。このセンサーは本当に素晴らしいですよ!」とコメントしています。
ベクターナブ社のプロダクトマネージャー、ゴードン・ヘイン氏は、VN-300の採用に際し「レッドブル・エアレースと仕事ができて、非常にエキサイトしています。我々が精密なデータをレースジャッジや観客に提供できるだけでなく、様々な情報をパイロットやレースタクティシャンに提供できるのですから。ベクターナブによって入手したデータは、彼らの使用するシミュレーションプログラムにフライトの軌跡を提供し、より最適なラインを見つける助けとなることでしょう。2018年シーズンだけでなく、これからもずっとレッドブル・エアレースと仕事ができることを望んでいます」というコメントを残しています。
新しいシステムで臨む2018年のレッドブル・エアレース。第2戦はフランスの「映画の街」カンヌで4月21日・22日に開催されます。
Image:Andreas Langreiter/Red Bull Content Pool・VECTORNAV
(咲村珠樹)
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