「秒速5センチメートル」のオマージュ作など3つの物語 アニメ「詩季織々」2018年夏公開へ
おたくま経済新聞 / 2018年2月27日 15時28分
『詩季織々』ロゴ
「君の名は。」「秒速5センチメートル」の新海誠監督作品などで知られる、アニメーション制作会社コミックス・ウェーブ・フィルム制作の最新作「詩季織々」(しきおりおり)が2018年夏に、テアトル新宿、シネ・リーブル池袋ほかにて公開されることが決定した。
「詩季織々」は、中国の3都市が舞台。失したくない大切な思い出を胸に、大人になった若者たちの過去と今を紡いだ3つの短編作品(「陽だまりの朝食」「小さなファッションショー」「上海恋」)からなる。CGチーフとして長年、新海作品を支え続けてきた竹内良貴がそのうちの一作「小さなファッションショー」で監督を担当している。なお、竹内監督にとってこれが劇場公開の初監督作品となる。
本作は、中国で数々のアニメーション作品を制作し、中国のアニメ業界をリードするブランドHaoliners(ハオライナーズ)の代表も務めるリ・ハオリン(李豪凌)監督が、10年近く前に「秒速5センチメートル」を観て新海監督に憧れ、熱烈なオファーをコミックス・ウェーブ・フィルムに送り続けた事が始まり。
「詩季織々」のテーマは中国の暮らしの基となる【衣食住行】。リ・ハオリンを総監督に、実写映画出身でアニメ初挑戦となるイシャオシン(易小星)、そして竹内良貴それぞれが、自らの思いを重ね合わせ、詩的にして鮮烈な風景描写のもとで切なくも温かいストーリー。
日本と中国、次世代の若手監督が描くオリジナルアニメーション。公開詳細については、続報にて順次解禁される。
■「陽だまりの朝食」
-監督自らの思い出を、ノスタルジーたっぷりに詩的に描く【テーマ:食】
北京で働く青年シャオミンは、ふと故郷・湖南省での日々を思い出す。祖母と過ごした田舎での暮らし、通学路で感じた恋の気配や学校での出来事…子供時代の思い出の傍には、いつも温かい、心のこもったビーフンの懐かしい味があった。そんな中、シャオミンの祖母が体調を崩したとの電話が入る。
-イシャオシン(易小星)監督 コメント
これまで実写作品を手掛けてきた私にとって、初のアニメーション監督作品です。
原作は、私が六年前に書いた短文です。当時の私は田舎から北京に来たばかりで、頼れる人も、友も、仕事の目標もありませんでした。ある寒い冬の夜、あまりの寂しさから、故郷を想い、祖母や家族との懐かしの味とその思い出を物語にしました。その作品は共感を呼び、映画化の提案も多く頂きましたが、今回縁あってこの企画のお話をいただいた時に、この原作でアニメに初挑戦しようと決めました。
唯一残念な事は、祖母に捧げた作品だったのですが、完成する2か月前に祖母が亡くなり、その目で観て貰えなかった事です。ただ、天国にいる祖母も、微笑んでくれると信じています。
■「小さなファッションショー」
-CGチーフとして長年に渡り新海作品を支え続けてきた竹内良貴の劇場公開初監督作【テーマ:衣】
広州の姉妹、人気モデルのイリンと専門学校生のルル。幼くして両親を亡くした2人は、共に助け合いながら仲良く一緒に暮らしていた。しかし、公私ともに様々な事がうまくいかなくなってきたイリンはついルルに八つ当たりしてしまい、2人の間には溝ができ、大喧嘩をしてしまう。
-竹内良貴監督 コメント
この作品を作るにあたり、中国の広州の街中を歩き回りました。
近代的な真新しいビルが立ち並び、かと思えば昔ながらの町の風景もそこかしこに息づき、それらがものすごい速さで変化していくという、まさに時代の変化を絵に表したかのような光景がそこにはありました。
そこで暮らす人々はどのような思いを抱いて生活しているのでしょうか。
様々な人たちがいると思います。幸せな人、つらい人、未来に希望を抱く人、あるいは流されて生きている人もいるかもしれません。色々想像することができると思います。
この僕の作品は服をキーにして姉妹の関係性の変化を描いていますが、それを通して何か感じ取れるものが見終わった後に残ってくれれば幸いです。
■「上海恋」
-変わりゆく上海の街並みに思い馳せ、淡い初恋を瑞々しく繊細に描いた「秒速5センチメートル」のオマージュ作【テーマ:住】
1990年代の上海。石庫門(せきこもん)に住むリモは、幼馴染のシャオユに淡い想いを抱きながら、いつも一緒に過ごしていた。しかし、ある事がきっかけとなり、リモは石庫門から出ていき、お互いの距離と気持ちは離れてしまう。そして現代、社会人になったリモは、引っ越しの荷物の中に、持っているはずのないシャオユとの思い出の品を見つけるのだった。
-リ・ハオリン(李豪凌)監督 コメント
人の一生は一瞬で過ぎ去り、人は何かを忘れ、誰かと別れ、離れていってしまう。そんな儚く消えゆくものを、美しい映像としてずっと残したいと思いました。
舞台となる上海の石庫門は、1980年代に生まれた私たちの世代には“実家”のような存在です。狭い中で、家族の距離は近く、温かい。しかし、時代とともに、人がいなくなり、石庫門は徐々に取り壊されています。幼少期、いつまでもその家に家族一緒に暮らしていくと思っていたのに、いつしか離れ離れに、そして永遠に別れる事になる。そんな”実家”への感情は”初恋”に似ていると思いました。
「上海恋」ではアニメーションという言葉を通して、それらの感情を皆様にお届けできれば幸いです。
(C)「詩季織々」フィルムパートナーズ
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