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晴眼者も、視覚障害者も。ニュータイプのユニバーサル点字フォント「Braille Neue」開発者に聞く

おたくま経済新聞 / 2018年3月18日 16時5分

 視力の状態にかかわらず全ての人が理解しやすいユニバーサルな点字フォントがネット上に投稿され、「すべての視力の人が読める文字」と話題となりました。

 視覚障害者と一口に言っても、その見え方は様々。ギリギリ視力がある人から全く見えない全盲の人、視野の広さが不十分だったり見える視野がとても限られていたりと視覚障害者の見え方は千差万別ですが、見えない不自由を抱えている事は同じ。そんな視覚障害者の不自由を少なくするために黄色い点字ブロックが道路に敷かれていたり、音声案内があったりと街中で様々な工夫を見る事ができますが、表示物に併記されている「点字」もその一つ。全盲の人でも指で触って点が打ってある部分を文字として読む事ができるものですが、ひとマスに6個の点を組み合わせて表示される点字は63通り。ひとマスに点が一つもない「スペース」も併せると64通りの点字が現在日本語表記に使われています。

 この点字、一文字が6個の点の組み合わせでできているので慣れている人なら指で触って一つの点字にどのかなや記号を示しているか分かるのですが視力に問題のない、いわゆる「晴眼者」にとっては謎の記号と感じている人も多いハズ。

 「Braille Neue」はデザイナーのKosuke Takahashiさんが開発した「目で読む事ができる点字フォント」。Takahashiさんは、「1日1つ発明する」活動をしておりこの点字フォントもその一環。開発したきっかけは「点字が読めなかったから」という非常にシンプルなものなのですが、それだけ晴眼者にとって点字は希薄な存在。視覚にかかわる福祉関係の仕事などでもないとなかなか普段から接する機会のない物ですが、点字は缶や紙パックのお酒や食品類、洗剤などの日用品類に至るまで日常生活のどこかに必ず存在しています。誤飲や誤食などのトラブルを防止する為、視覚障害があっても生活の不便を減らす為の身近な存在なのに、文字を目で読める人はその存在に触れる事が少ないままなのが実情。視覚障害者専用の文字となってしまっているのです。

 そんな点字をもっと身近に、誰もが読めるものにと開発されたのが「Braille Neue」(ちなみに新しい点字を意味するドイツ語)。インクなどで書かれる「墨字」と点字を融合させる事で別々だった点字と墨字の文字情報の世界を一つに繋ぐ事ができるのでは……「1つの言語や、1つの文字で、今までよりたくさんの人とつながることができるのだとしたら、それはとても素敵なことだと思う」というTakahashiさんの想いは現在新しい形のユニバーサルフォントとして形になりつつあります。

目でも指でも読める文字。点字と墨字が一体になったフォント。
#私の作品もっと沢山の人に広がれ祭り pic.twitter.com/VlPsNQSI6U

— Kosuke Takahashi (@ootori_t) March 10, 2018

[update]たくさんのご指摘ありがとうございました。先んじて「O」の誤字を修正いたしました。正しくは⠟ではなく⠕でした。お詫びいたします。また、このプロジェクト自体を「Braille Neue」という名前で統一させていただきます。 #brailleneue

Fix issue "O" is not ⠟, but ⠕ in braille. pic.twitter.com/9EOaejBjte

— Kosuke Takahashi (@ootori_t) March 12, 2018

 現在、「Braille Neue」はカタカナとアルファベットをメインに開発中との事。「今後はひらがなや他の言語にも対応できるようにプロジェクトを進めています。ただ、このプロジェクトはフォント制作が目的ではなく、点字と墨字が一体になった書体を、社会に広めていくことが目的(Takahashiさん)」という事でツイッター上で寄せられた意見などをもとに改良を重ねています。また、点字を監修してくれるパートナーや、書体をデザインしてくれるデザイナーも募集中との事。

 特に苦労した点をお聞きしたところ、「点字のルールと墨字のルールは違う部分が多く、1つにまとめるのはかなり大変でした。目でも、指でも読みやすいバランスを探る作業が一番長かったように思います。それに、点字の世界には数符、外字符、略表記といった墨字にない概念もあったりと、まだまだ解決できていない問題は山積みです。」と苦労を語ってくださいました。こうした難しさは多業種で協業して解決していくのが良さそうですよね。

 ツイッター上ではロービジョン(弱視)の為にハイコントラストの文字にした方が良い、文字の間隔なども改良の余地があるなど様々な意見が寄せられています。また、ディスレクシア(知能に問題はないが文字の認知機能に関わる障害など)の人にとっては一文字の中に点字の点が入っている為読みやすいという意見も。
 Takahashiさんはこういった意見を取り入れながら今後も開発を継続していくという事です。

 一人の開発者から始まった「Braille Neue」プロジェクトは「1964年の東京オリンピックで日本が世界に「ピクトグラム」を広めたときのように、2020年に向けて、東京にこの書体を実装し、ユニバーサルなデザイン文化として世界に向けて発信していきたい」という希望を持って取り組まれています。既存の点字の上にかぶせて印字できるフォントなので、目で読みながらも点字を理解する助けにもなるこの新しいユニバーサルフォント。
 いつか、視覚の状態にかかわらず誰もが読みやすいものとして広まっていく事を願わずにはいられません。 

<記事化協力>
Kosuke Takahashiさん(@ootori_t)

(梓川みいな / 正看護師)

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