生や半生のジビエ食べたら6カ月は献血しないで!日本赤十字社が注意を呼びかけ
おたくま経済新聞 / 2018年3月20日 14時7分
イノシシ / 写真ACより
野生の鳥獣たちを捕獲して食用とするジビエ。シカやイノシシなどが人気で、害獣駆除と食肉利用の一石二鳥の効果がある一方、思わぬ危険もあるようです。
平成30年1月31日に開催された平成29年度第5回薬事・食品衛生審議会薬事分科会血液事業部会運営委員会において、輸血により、患者さんがE型肝炎ウイルス(以下HEV)に感染した事例が報告されました。2月1日に報道された内容によると、多発性骨髄腫の治療を受けていた80代の女性が輸血由来の血液製剤を通じてE型肝炎ウイルスに感染し、約100日後に劇症肝炎を発症して死亡したケースが報告されたという事です。この事例では、献血の2か月前にシカの生肉を食べた供血者がHEV感染に気が付かないまま献血に行ってしまい、血液中にHEVがある状態にもかかわらず検査をすり抜けて血液製剤化され使われてしまった結果のようです。
献血された血液は誰がいつ献血したものかを明確にしており、血液製剤も誰の血液から造られているか一つ一つ把握できるようになってます。これまで、HEVの検査は感染率の高い北海道地区でのみ献血時の検査に組み込まれていましたが他の地域での感染者によるこうした事故は発生していなかった為、献血時の検査に含まれていませんでした。
これを受けて、日本赤十字社は2018年3月9日付けで「E型肝炎ウイルスに対する安全対策へのご協力のお願いについて」という発表を出し、HEVに感染するリスクのあるブタ、イノシシ、シカの肉や内臓を生又は生焼けで食べた人は、狩猟解体や食べた時点から6カ月間は献血をしないよう呼び掛けており各血液センター・献血ルームにもポスターなどの掲示で呼びかけています。
HEVは野生の獣肉に多く、しっかり加熱すればウイルスが死滅するので特に問題はないのですが加熱が不十分な場合は獣肉の血液内にウイルスが死滅せず残ってしまう為食べた人はHEVの保菌者、または感染者となります。
■E型肝炎(HEV)って怖い?
肝炎ウイルスにはたくさんの種類がありますが、特にA、B、C、E型がよく知られています(ちなみにD型はB型がいないと増殖できない不完全なウイルスと言われており悪さをした試しがないため無視されています)。このうちAとEは感染しても約半年で感染している期間が終わる上、A型に至っては非常に一過性で劇症化もありますが、症状が出ても対症療法で治ります。
よく問題視されているB型とC型ですが、一度感染するとウイルスが残り持続的な感染状態となってしまい肝硬変や肝臓がんなどの原因となる為、インターフェロンによる治療などが必要となります。この2つは主に血液や体液などからの感染が主なルートとなります。ちなみにワクチンがあるのは現在A型とB型。B型肝炎は未然に防ぐ事ができる為ワクチンの接種が推奨されており乳児の標準接種スケジュールにも組み込まれています。
今回問題視されているE型は、A型とともに汚染された水や食品などによる経口感染が主な感染ルート。ジビエの生食で感染が成立してしまう事から今回の血液製剤による劇症肝炎の発生に繋がったといえます。ジビエの解体時などに獣肉の血液などが口や粘膜内に飛んで感染する事も。付着したHEVが増殖し発症するまでの間(潜伏期間)は約6週間と言われており、悪心、食欲不振、腹痛等の消化器症状を伴う急性肝炎となります。症状としては、褐色尿 を伴った強い黄疸が急激に出現し、これが12〜15日間続いた後、通常発症から1カ月を経て完治という経過。対症療法で治まってしまうのが多いのですが、怖いのが、免疫力や体力が低下している場合の感染。劇症化に繋がり急激な激しい症状は時に命にかかわる事も。高齢者や妊婦の死亡率が高い事も知られています。
こうした事を防ぐため、今回、日本赤十字社は野生の獣肉を生や半生で食べた場合の献血は最低6か月はしないよう呼びかける事となりました。現在、日本赤十字社では北海道で行われているHEVの検査を全国的に行うように対策を進めています。
しっかり加熱処理していれば野生の獣肉も特に怖くはないのですが、ジビエがブームになっている今、野生の獣肉の扱いには特に気を付けていってもらいたいと思います。
<参考資料>
E型肝炎ウイルスに対する安全対策へのご協力のお願いについて|日本赤十字社
E型肝炎とは|国立感染症研究所
E型肝炎ウイルスの感染事例・E型肝炎Q&A|厚生労働省
(梓川みいな / 正看護師)
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