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こうのとり7号機、国際宇宙ステーションへ新型生命維持装置を運ぶ

おたくま経済新聞 / 2018年3月23日 16時26分

こうのとり7号機、国際宇宙ステーションへ新型生命維持装置を運ぶ

ACLS試験機(Photo:Airbus)

 2018年3月19日(現地時間)、ドイツのフリードリヒスハーフェンにあるエアバスの工場で、新しい国際宇宙ステーション用生命維持装置(Advanced Closed Loop System=ACLS)の試作機が完成しました。2018年8月頃を目標に打ち上げられる「こうのとり(HTV)」7号機で国際宇宙ステーションに輸送され、検証が行われる予定です。

 ACLSは、欧州宇宙機関(ESA)依頼でエアバスが製作した新しいタイプの生命維持装置。Closed Loop System(閉鎖系循環システム)の名の通り、自己完結した循環システムを用いた生命維持装置です。

 現在、国際宇宙ステーションをはじめとする有人宇宙船では、水を電気分解することで酸素を作り出しています。人間の呼吸によって生じた二酸化炭素はフィルターで吸収し、酸素の製造過程で生じた水素と一緒に外部へと廃棄しています。この仕組みは、1960年代の有人宇宙飛行が始まった当時から、基本的な部分では変わっていません。

 しかし、この方式は水素と二酸化炭素をそのまま外部へ廃棄してしまうので、酸素の元になる水(人間の飲料水含む)が絶えず補給される状態が前提となります。よく宇宙飛行士が「宇宙船では水は貴重品」という発言をして、尿からも水分を回収しているのは、飲むだけでなく、水を絶たれると呼吸すらできなくなるからなのです。逆に言えば、頻繁に水が補給できなくなるような、火星など遠距離へ人類が行くためには、補給なしでも酸素や水を継続的に入手できる方法が必要です。

 ACLSは、水を電気分解して酸素を生成するところまでは、これまでと同じです。しかし同時に生成される水素(H2)は外部へ排出せず、人間の呼吸によって生じる二酸化炭素(CO2)と高温高圧状態で「サバティエ反応」という化学反応をさせ、水(H2O)とメタン(CH4)を作り出します。水は電気分解して酸素を生成させ、メタンは熱を加える(熱分解させる)と、水素(H2)と熱分解炭素(C)になるので、また二酸化炭素とサバティエ反応を起こし……と、少量の炭素(あとでまとめて廃棄する)だけを残して、ぐるぐると水と酸素を作る循環システムができあがる、という仕組み。これなら、長期間水を補給しなくても酸素を得ることができ、遠距離・長期間の宇宙飛行に対応できます。

 今回製作されたACLSの試験機は、大型の冷蔵庫ほどの大きさ。国際宇宙ステーションで目論見通り水を補給しないままでの酸素・水素・二酸化炭素・メタンの循環が行えるかをテストします。同種の装置はNASAでも構想されており、様々な形で運用ノウハウを得ることで、完成度を高めていく予定です。

 より人類が長期間、地球を遠く離れて宇宙で活動するために。ACLSなどを搭載した「こうのとり(HTV)」7号機は2018年8月頃、H-IIBロケットにより、種子島宇宙センターから打ち上げられる予定です。残念ながら、現在国際宇宙ステーションで長期滞在を行なっているJAXAの金井宣茂宇宙飛行士は、2018年6月3日に帰還予定。こうのとり7号機を待ち受けるのは、第56次長期滞在クルー(NASAのフューステル、アーノルド、オナン・チャンセラー宇宙飛行士、ロスコスモスのアルテミエフ、プロコフィエフ宇宙飛行士、ドイツのゲルスト宇宙飛行士の6人)になる予定です。

Image:Airbus/NASA

(咲村珠樹)

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