福島第一原発バーチャルツアーが公開 事故から7年の「今」を見てみませんか
おたくま経済新聞 / 2018年3月29日 18時0分
バーチャルツアーTOP画面
2011年3月11日の東日本大震災をきっかけに発生した事故で、多くの被害と影響を与えた東京電力福島第一原子力発電所。現在、廃炉に向けた準備が続けられています。しかし、このところ地元でもプラント自体の情報が伝えられることが少なくなり、その分「今、プラントはどうなっているのか」という部分が判りにくくなっているのも事実。その「知りたい」にこたえる、バーチャルツアーのコンテンツが公開されました。
「INSIDE FUKUSHIMA DAIICHI~廃炉の現場をめぐるバーチャルツアー~」と題されたこのコンテンツは、廃炉に向かう福島第一原子力発電所、通称「1F(いちえふ)」のバーチャルツアーを通して、事故から7年を経過した今の状態を多くの人に知ってもらいたいと、東京電力ホールディングス株式会社が公開したもの。原子炉や使用済み燃料プールの安定冷却、汚染水対策をはじめ、作業・労働環境の状態など、事故当初に比べて改善したけれども、なかなか伝えられない「現場の空気」を感じられるものとなっています。
ツアーでは、事故から7年が経過した今の姿を、PC上でいつでも、どこからでも見ることができます。1〜4号機の原子炉建屋を間近で見たり、施設の一部を360度画像の臨場感ある形で体感することも。また、各見学ルートの動画の最後には、現場や設備に関する質問に答えるFAQコーナーもあり、抱きがちな疑問に対しても知ることができるようになっています。
実際に見てみると、一時期原発事故の報道で見られた真っ白い「タイベック」と呼ばれる使い捨ての作業着(タイベックは使われている素材の商品名)を着た人は少なく、通常の作業服姿の作業員が目立ちます。汚染された周辺地域と同じく、発電所構内の除染が進んでおり、放射性物質(放射能を持つ物質)が除去されて空間放射線量が低下したため、放射性物質(放射能を持つ物質)の付着を防止する使い捨ての作業着が必要なくなっているのです。
また、現場では作業に適した環境かどうか、可搬式の空間放射線量計モニターを88ヶ所に設置しており、それを使って空間放射線量をリアルタイムで計測しています。この空間放射線量は、バーチャルツアーのムービーでも画面左下に見えるウインドウで常時表示しており、場所によって変化する数値を確認できます。
バーチャルツアーで公開されている設備は、以下の通りです。
■1号機
事故当時、水素爆発で原子炉建屋の上部が大きく破壊、がれきが内部に。2018年1月からがれき撤去作業開始。
■2号機
事故当時、水素爆発を免れる。現在、使用済み燃料プールから燃料を取り出すための調査準備中。
■3号機
事故当時、水素爆発で原子炉建屋が破壊。屋上のがれき撤去が終わり、燃料取り出しの準備が進む。2018年中頃から使用済み燃料の取り出し作業開始予定。
■4号機
事故当時、定期点検中で燃料は全て使用済み燃料プールに移されていたものの、3号機からの水素により水素爆発が発生。2014年に燃料取り出し作業が終了。
■5号機 格納容器外側(360度映像・主観映像)
1〜4号機に比べ、敷地の標高が高いために津波による大きな被害は受けなかった。現在は運転停止中で使用済み燃料プールで燃料を冷却し、安定的に保管中。6号機とともに廃炉決定。
■高性能多核種除去設備「ALPS」(360度映像・主観映像)
汚染水浄化設備のひとつ。トリチウム(三重水素)以外のほとんどの放射性物質を除去できる。
■タンク工事現場
汚染水からトリチウム(三重水素)以外のほとんどの放射性物質を除去した処理済み水を保管するエリア。
■冷凍機プラント(主観映像)
地下水が1~4号機の方へ流れ込み、新たな汚染水を生み出さないように食い止める、俗に「氷の壁(凍土壁)」と呼ばれる陸側遮水壁の温度管理を24時間体制で行なっている場所。
■冷凍機室(360度映像)
1~4号機の周囲の地面を凍らせる「氷の壁」こと、陸側遮水壁を作るための装置。
■免震重要棟 緊急対策室(主観映像)
数々の再現ドラマの舞台となった場所。震度7の地震が来ても緊急時の対応に支障をきたさないよう、会議室・通信設備・電源設備・空調設備を備える。
■廃棄物処理施設 造成地
現在、廃棄物は種類ごとに分別して、構内に安全に保管しているが、この先10年間に発生が予測される量の廃棄物をしっかり保管できるよう、増設工事を進めている場所。
質問コーナー「みんなの質問」では、福島第一原子力発電所での作業の様子を実際に視察した人から出た質問に答える形で、様々な疑問に対する解答と解説がなされています。建物の画像に重ねた形式のほか、一覧形式でも見られるようになっているので、後から疑問に思ったことだけを調べることにも対応しています。
とかくイメージばかりが進行してしまい、現場の「今」を見聞きすることが少ない福島第一原子力発電所。いまだに避難生活を余儀なくされている住民の皆さんにとっても、これらの情報は将来の生活設計に重要です。また、根拠の薄い風評被害(避難指示が解除された地域における、福島県が実施した2017年度の土壌や地下水、空気などの測定結果では、安全基準以下のセシウム134、セシウム137以外の放射性物質は検出されていない)を払拭するためにも、多くの人に見てもらいたいコンテンツです。
バーチャルツアー 「INSIDE FUKUSHIMA DAIICHI~廃炉の現場をめぐるバーチャルツアー~」は、東京電力の特設サイトで公開されています。
画像提供:東京電力ホールディングス株式会社
(咲村珠樹)
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