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自閉症・発達障害あるあるな「認知の歪み」って知ってる?

おたくま経済新聞 / 2018年4月3日 13時19分

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発達障害イメージ/写真ACより

 人間、性格は一人として同じ人はいません。誰しもが持っている「クセ」というのは行動に出るものから考え方に出るものまで実に様々で、日常生活に支障のない程度のものからいわゆる「強迫観念」的な日常生活に支障が出る程度のものも。一人として同じ行動や考え方をする人なんていませんが、それでもこの世の中はとかく集団での行動や社会という中での思考や行動が求められ、そしてそれが「普通」とか「定型発達」という型に当て嵌められてしまいます。

 「周りと同じ事ができない」と「不適合」「落ちこぼれ」扱いされてしまう世の中。いつの時代でも小学校に入る前から集団での生活が求められ、それがうまくできない人は何らかの烙印を押される事が多くありました。

 しかし、脳科学の研究が進むにつれてそんな「普通とは違う」人たちの脳がどう違っているのかが解明されつつあります。最近になって知られ始めた「発達障害」も、その研究から解明されたもの。脳の機能が定型発達とされる人よりも違う働きをする為できる事と困難な事が極端になってしまいます。

 タイトルの「認知の歪み」というのはアメリカの精神科医アーロン・T・ベックが体系化した「認知行動療法」の中で提唱されており、「考え方のクセ」の中でも極端な思い込みや自分の考え方のクセが平均的にみられる状態より強い物を指しています。

 誰でも考え方は行動や言葉の使い方同様に「クセ」があるのですが普段生活していて特に困る事がない場合、それをあまり感じる事がありません。逆を言うと、普段生活していて人間関係が上手く築けなかったり自分や周りに対しイライラする事が多い人にこの「認知の歪み」が大きく見られます。

 こうした「認知の歪み」はいったいどこから、どうして起こるのかを考えていきましょう。

■なくて七癖

 何か自分にとって嫌な事があった時、皆さんはどう感じたり考えたりしますか?

 「どうしてこういう事をするの?ムカつく」と思う人が大半でしょう。しかし、嫌な事自体が実は「怒るまでもない些細な事」であったという事も多くの人が体験していると思います。冷静になって後で振り返ると「何でここまで怒ったんだろう?」と不思議に思う事もあるかもしれません。

 例えばこういうケース。

例1)自分が考えている通りの行動を相手がしないケース
 AさんがBさんという人にお中元を出したとします。送り主のAさんは、受け取り確認を宅配便のネットサービスで知っていますが、Bさんからは「届いた」という連絡がすぐありません。Bさんはその時いそがしく「週末にでもお礼の電話をしよう」と考えて受け取り後も数日連絡を先送りしていました。こうした間、AさんはBさんからの連絡がないことにイラつき、許せないと感じるのです。

例2)予定外の人の登場
 AさんとBさん二人でご飯を食べに行く約束をしていました。しかし行ってみると、偶然会ったからとBさんが共通の友人Cさんを誘ってつれてきていました。Aさんは予定にないCさんの登場に戸惑います。とりあえず一緒に食事はしてやりすごしますが、食事が終わると早々に帰ってしまうのです。場合によってはお金だけをおいて途中で帰ってしまうこともあります。このケースでもAさんは実は不安定な気持ちになっています。

 認知の歪みが大きいと「~であるべきなはずなのに」と考え方になってしまいがち。そして「こんな事があったからまた同じ事が起こる、嫌だ」と思い込んでしまい、時にAさんはBさんと絶縁してしまいます。こうして認知の歪みというクセの強い考え方は負のループを作り出すのです。

 元々持っている性格や特性からこうした認知の歪みが起きやすい人にASDやADHD・ADDなどと診断されている人が多くいます。勉強はできるし知能的に問題がなくても発達検査を受ける事でこうした診断が下りる人も多くいます。

 一昔前の自閉症の感覚は、言葉が上手く話せない、自己表現ができない、知能指数も低めという様な印象かもしれませんが、現在発達障害と一括りにされている人の中には知能的には何ら問題がない人の方が多く、対人面など社会的に困難を感じている人の方が多いくらいかもしれません。

 こうしたいわゆる「発達障害」はその言葉で一括りにされてしまいがちですが実は誰しもが持っている性格傾向がちょっと平均よりもはみ出ているだけ程度のものから、プロのカウンセラーでも対応が困難なくらいに情緒面で問題を抱えていたりとグラデーションがある様なものなのです。一人ひとりがみんな同じ、画一化された性格や受け答えで感情的に問題が起こらない世の中であればこんな事は起きないかもしれません。しかし、生きている人間はどこか違っていて当たり前。その「当たり前」が多くの人に受け止めきれないから発達障害がある人にとって生き辛い世の中になってしまっているのです。

■どうして発達障害があると認知の歪みが起きやすい?

 発達障害を抱えている人は何らかのこだわりが強い傾向があり、その傾向は自分を否定するもの、他者、あるいは自分を過剰に罰する傾向のもの、「~しなければ」「~すべき」といった「べき思考」や強迫観念によるもの、白か黒かの二択しかないという完全思考的な思い込みによるもの、嫌な出来事についてその一部だけを切り取ってそこにこだわってしまうもの、などなどおよそマイナス感情に繋がるものがその原因となります。

 ベック医師は6つにカテゴリーを分けて発表しましたが、さらに研究が進み精神科医たちがより一人一人に当てはまりやすい様体系化されたものがあります。先述したマイナス感情を作る性格傾向もそのうちのいくつかです。

 マイナスイメージを感じた時にそのイメージ通りに思い込む事、客観性のない感情だけで否定的な結論を出したり決めつけるというのもその一つ。こうしたマイナス感情に絡めとられてしまう事はストレスの増大に繋がり、うつの発症の原因の一つとされています。

■認知の歪みがあるかも?と感じたら

 ここまで読んできて「自分に当てはまる事が結構ある」と感じた人、感じる事ができた事が救われる第一歩になります。ここまで生きてきて辛いことだらけと感じたら、一度「認知行動療法」というものを調べてみてください。これはうつ病の回復プログラムに用いられているほか、アスリートのメンタルトレーニングにも応用されている心理的なアプローチ。考え方のクセを自覚してどう軌道修正していくか、を実践していくセラピーです。

 この療法は精神科医がカウンセラーに指示を出して行う事が多いですが、この療法についての本も何冊も出版されており、またNPO法人認知行動療法推進協会(千葉)や日本認知行動カウンセリング協会(名古屋)、一般社団法人こころぎふ臨床心理センター(岐阜)、認定特定非営利活動法人発達支援研究センター(山形)など全国各地にある内閣府認定NPOなどの信頼できる相談窓口で相談してみるのも良い方法です。

■子供も大事だけどそれ以上に大人に必要なケア

 発達障害の施設というと子供が通う場所(=児童デイサービスなど通所型支援施設)が最近多く作られていますが、必ずしも心理カウンセリングが行える、しかも難しい子供の扱いに長けているスタッフがいるとは限りません。しかし「集団でも堅苦しくない居場所を作る」という意味では必要な場所となっています。

 大人の場合も、居場所を作るという事は非常に大事。どこか、誰かと繋がっていない場合、最悪孤独死ともなりうるからです。大人の引きこもりも最近クローズアップされていますが、自分の認知の歪みを直視するのが怖い、周りの目が怖いという人にこの傾向は多く見られます。もし、周りに極端に心理テストや手軽にネットでもできるような性格検査などを極端に嫌う人がいたら、認知の歪みを自覚しているが周りの視線や態度が怖くて避けている事もありえます。

 こういった人へのアプローチは非常に困難で、周りがうまい事付き合っていく事で何とかその場をしのぐ事はできるかもしれませんが、もしその人に何かあった時に助けてくれる人ははたしてどのくらいいるのか。自分の考え方、認知の歪みを直視してきちんと向き合い、自分との上手な付き合い方を少しずつ覚えていく事は今の社会を切り抜けるためには非常に有用です。

 そして、大人の場合は子供と違って自分で気が付かないと支援の手があるところまでたどり着けない事が非常に多く、周囲の人間も信頼関係ができていないとなかなか指摘しにくいところもあります。
 ネットやSNSで多くの情報を得られる様になった今、同じ様に生き辛さを抱えている人の言葉や行動、生き方からヒントを得て自分の性格特性に気が付きどうにかしたいと思っている人も多いハズ。
 まだまだそうした大人の受け皿はあまり多くないのが現状ですが、SNSはそうした特性のある大人の居場所のひとつであると認識しています。

■居場所・駆け込み寺・逃げ場を確保しておこう

 子供でも大人でも、辛い時には辛いといえる場所を作っておくことは自分を救う為にも大事な事。一人でいると「自分だけが周りと上手く行かない」「自分だけがずっと嫌な事ばかり」と負の思考が連鎖していき悪循環となってしまいます。

 しかし、好きな事をしても怒られない、色んな人がいるけど集団を強要されないという場所でそれぞれが自分の思いを語ると、案外似たような経験や思いを抱えてきている事がわかります。精神科病棟でも、比較的症状が落ち着いている患者さん同士でグループディスカッションを行うところも多くありますが、それぞれが落ち着いた環境で落ち着いて自分語りができる環境は「自分の思いを言葉として整理する」効果と「その思いを聞いて自分だけではない、という安心感を得られる」という効果の二つの側面があります。

 これは患者会や親の会などでも同様に気持ちを表現する場でもあります。ただ、自分が上手く言葉を伝える事ができない、書くのは苦にならないけど言葉で話せないという人も多くいるはず。とりわけ、発達障害、特に情緒面に特性が強く普通の人と違った反応をしがちな人は文字や絵などでの表現がしやすい傾向にあるようです。

 その為のSNSではないかと筆者は個人的に思います。もちろん、SNSの悪用で犯罪が起きる事もあります。自殺したいという人を募って次々と殺害した人がいたのは記憶にも新しい事です。そういう人に引っかからない様、SNSを活用した自殺予防やメンタルケアの取り組みも様々な団体や自治体などがやり始めています。

 まだまだメンタルケアの支援に回れる人が少ないのが現状ですが、ネット社会にはこうした草の根活動的な団体や同じ傾向の人たちが集まって相互扶助となる自然発生的なものも点在しています。現実世界で友人がいないに等しくても、ネット社会で確たる繋がりを持てる事もあります。励まし合い、情報交換していく事で特性の強い人たちが平均的な人たちと一緒にいても辛くない、みんなが楽に生きられる社会になってくれればと、心から思います。みんなちがって、みんないい。

<参考>
NPO法人ポータルサイト – 内閣府
医学書院/週刊医学界新聞(第2744号 2007年08月20日)〔座談会〕患者さんとともに考える,認知行動療法(樋口輝彦,大野裕,古川壽亮)
社会恐怖に対する認知行動療法-原井宏明の情報公開-精神医学・気分障害・不安障害・強迫性障害・物質使用障害・EBM・行動療法・動機づけ面接・研究の公開
他多数

(梓川みいな)

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