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障害者用駐車スペースのパイロン 実は障害者にとっての障害に

おたくま経済新聞 / 2018年4月19日 19時35分

障害者用駐車スペースのパイロン 実は障害者にとっての障害に

障害者用駐車スペース

 障害者用駐車スペースに設置されたパイロン(三角コーン、ロードコーンともいう)が、結局障害者にとってさらに駐車を困難にしているという事がSNSに投稿され物議となっています。

 この出来事は、車イスユーザーで乗用車を運転している古代戦車さんが遭遇した出来事。とある商業施設で障害者用駐車スペースに車を停めようとしたところ、駐車スペースの真ん前にパイロンが設置されており、非常に困ったという事です。

 この時は運よくこのスペースの隣が空いており、ゼブラゾーンを利用して車を乗降する事ができましたが、車イスを利用している人が乗用車を乗り降りする場合はドアを広く開けておく必要があるためゼブラゾーンがない状態では駐車場を利用する事が非常に困難となります。

 「車椅子で車の運転して移動した先、こうなってるとしんどい。」とその駐車場の画像をツイッターで投稿したところ、多くの反応が寄せられております。

 ツイートを見た人からは、同じ経験をされた車イスユーザーや妊婦さんなどから共感の声が上がったり、「無人の駐車場ではどうしているんだろうとずっと思っていた」という声が上がったり、「モラルのない人が駐車するからこういう事になるんだ」という声も。また、商業施設で働いている人からは「今まで気が付かなったので早速警備員さんに相談してみます」といった声も。

車椅子で車の運転して移動した先、こうなってるとしんどい。 pic.twitter.com/7U2yEXr5kE

— 古代戦車 𝔄𝔫𝔠𝔦𝔢𝔫𝔱ℭ𝔥𝔞𝔯𝔦𝔬𝔱 (@ksonwp) April 16, 2018

 古代戦車さんは頸髄損傷の為体を自由に動かせず、握力も弱いのですが車イスや乗用車を活用して一人で外出もされています。一般男性並みに握力があればパイロンを片手で掴んで車を操作しながら邪魔にならない方へ寄せる事もできますが、現状では困難。この様な時は車イスを一度車から降ろしてそれに乗り、パイロンを自力で移動させてから再度車イスを積んで駐車させるという事で、車を入れるだけでも15分以上時間を要するそうです。

■バリアフリー法と駐車スペースを持つ施設

 平成18年に【高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー法)】が施行され、多数の人が利用する施設付帯の駐車場については、障害があっても利用しやすいものとするよう定められています。その結果、障害者用駐車スペースが明確に定義されるようになりました。

 この法律の第一章第2条には「高齢者又は障害者で日常生活又は社会生活に身体の機能上の制限を受けるものその他日常生活又は社会生活に身体の機能上の制限を受ける者」と記述がありますが、「その他日常生活又は社会生活に身体の機能上の制限を受ける者」の部分には妊婦などが当てはまるとされています。高齢者は福祉用具を利用しての歩行の為車のドアを広く開ける必要があり、また妊婦も妊娠後期ではお腹が大きく出てくる為、広くドアを開けないと車の乗降が非常に困難です。

 しかし、この法律によって定められて設置された駐車スペースは店や施設から近くに設置されているせいか、健常な人が障害者用駐車スペースに車を止めてしまうというモラルのなさもしばしば物議に。その対策として障害者用駐車スペースにパイロンを置いているというのが置かれる理由のようですが、常に対応してくれる警備員がいる場所ならまだしも、いない場合は今回のように、結局障害者にとって更に駐車が困難になる場合が多々発生しています。

■パイロンを置かなくても大丈夫?「パーキングパーミット制度」

 佐賀県が2006年に初めて導入したこの制度は、自治体が発行した利用許可証をルームミラーに掛けておくことで障害者用スペースが必要である事を示し、障害があってもストレスの少ない駐車場の利用ができるというもの。自治体によっては呼称や利用できる区分が違うところもあるようですが、おおむね身体障害者と妊婦は利用できるようになっています。

佐賀県版パーキングパーミット利用証

 この制度は佐賀県が平成29年3月に発表した資料によると、全国のうち36府県に導入されており、関西より西の自治体では全ての県が制度を導入しているなど広がりを見せております。しかし、北海道や関東、東海地方など一部自治体では導入されておらず、総人口に占める割合は約55%という状態。また導入している自治体でも、制度導入前よりも駐車をしやすくなったが、利用証の掲示のない駐車(不適正駐車)がなくならないという実態も明らかになっているなど依然としてモラルの問題が大きな課題となっています。

 この制度を導入している自治体同士で連携を図り、利用証の他自治体での相互利用も実現できているのですが、不適正駐車を取り締まるための法整備までできておらず障害者用駐車スペースの不適正駐車は野放し状態であるのが実情の様です。

パーキングパーミットを利用できない理由の8割が不適正駐車

 先述のバリアフリー法の中の条文(第4条)には、国の責務が謳われていますが、国がこのパーキングパーミットに関する規則を制定するまでには至っていません。制度導入自治体は制度を推進する協議会を発足し、国に対して法制度の検討を求めています。

 先進国ではこのような制度を法で整備し、罰則規定を設けるなどしていますが日本はまだバリアフリーへの理解はあまり良いとは言えない様です。

 障害者用駐車スペースのパイロンはバリアフリーの為に別のバリアを作っている様な状態。これではバリアフリーとはとても言えません。このような状態を作り出したのはモラルのない人たちによるもの。そしてモラルは一人一人が啓発し合って高めていくもの。真のバリアフリーは理解とモラルが必要不可欠です。

<参考>
国土交通省 【高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー法) について】
      障害者等用駐車場の 適正利用のために(PDF)
      佐賀県身障者用駐車場利用証 (パーキングパーミット)推進要綱(案)(PDF)
※ツイート画像以外のスクリーンショットは佐賀県身障者用駐車場利用証 (パーキングパーミット)推進要綱(案)より引用

<記事化協力>
古代戦車さん(@ksonwp)

(梓川みいな / 正看護師)

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