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湿布薬で皮膚が大惨事に!安易な薬の使用の危険性と必読の「くすりの説明」

おたくま経済新聞 / 2018年5月4日 9時22分

湿布薬で皮膚が大惨事に!安易な薬の使用の危険性と必読の「くすりの説明」

モーラステープ

 筋肉痛や捻挫の時などにお世話になる湿布薬。市販の物よりもクリニックなど医師から処方される湿布の方が格段に効果は高いのですが、その分絶対に気を付けないといけない事も。そんな強力な薬をうっかり使ってしまったが為に貼った部分が大惨事になってしまったという人のブログがネット上で大きな話題になっています。

 アメブロで「ようこのブログ」を運営しているようこさん。普段はほっこりする様な内容をブログに投稿していますが、4月28日に【湿布の副作用で「一生治りません」と診断される】という衝撃的タイトルで投稿した内容がネット上を駆け巡りました。

 その内容とは、運動で足を痛めたので、以前手に入れて残っていた湿布薬「モーラステープ」を使用。翌日剥がして外出したのですが、数日後に皮膚の腫れ、ただれが起きてしまい、その後炎症が治まっても色素が沈着して消えないという状態。何件かの皮膚科を受診して、「色素沈着は数年以上かけないと消えない、そして日光にあたる事は絶対にだめ」とステロイド剤等を処方してもらいました。この後に改めて湿布薬のパッケージの裏を見て、そこに書いてある文章を読んで初めてこの症状がどういう事であるのか理解したという事です。

 パッケージの裏には

「貼付部を紫外線にあてると光線過敏症をおこすことがあります。
(1)戸外に出るときは天候にかかわらず、濃い色の衣服、サポーター等を着用し貼付部を紫外線にあてないでください。
(2)はがした後、少なくとも4週間は同様に注意してください。」

とあったのです。既にこの皮膚症状が起きていた時点で「光線過敏症」を発症していたのです。

 そして、一旦は症状が落ち着いたと思われた数年後に首を日焼けした際にまたもや皮膚の炎症が起きてしまったという事です。何件かの皮膚科を受診してやっと「光線過敏症」という診断名が下りたという事です。光線過敏症は一度起きると何年たっても繰り返す事がある状態。うっかり日焼けをしてしまった事で再発したという訳です。

湿布を剥がした後に紫外線に当たった結果、酷い炎症に
炎症がおさまっても色素沈着はずっと残っています

 ようこさんは、「『知らなかった』では済まされないことが実際自分の身に降りかかった」とブログに記しており、副作用で悩む人、苦しむ人が少しでも減って欲しいとメッセージを下さいました。

 この湿布薬が今「危険である」という認識でネット上で話題になっていますが、果たしてこの湿布だけが本当に危険なのでしょうか?

■ たかが湿布と侮らないで

 今回の例は、一度処方されたものの医師や薬剤師からの説明が不十分であったか、説明を受けてもあまりピンとこずに聞き流してしまった、聞いたもののその内容をすっかり忘れてしまい副作用の説明書きをよく読まずに使ってしまった、などが原因として考えられます。痛みを取ってくれる便利なもの、くらいの認識でいると案外受けた説明を聞き流してしまう事もありますし、筆者は看護師として病棟・外来で患者さんと接している時にも、度々こういった事に遭遇してきました。

 医療者側が「当たり前」と思っている副作用でも、「袋の裏に副作用について書いてあるからそれ読むよね」と考えていても、患者さんは意外と説明書を読んでいないケースが多く副作用と言われてもピンとこないケースがあります。このため「この程度で大したことにならないでしょ」という軽い気持ちがおきてしまい、双方に認識のズレがある、と臨床現場で感じる事も度々でした。

■ 安易な「私の湿布分けてあげるわ」は絶対ダメ!

 更に困った事に、老人施設にて腰やら膝やら痛がっている利用者さんに他の利用者さんが「私の湿布分けてあげるわ」と入浴後に貼る為の湿布を渡そうとした現場にも何度も遭遇しています。ちょっとでもそんな会話が耳に入ろうものならすっ飛んでいって「利用者さん同士の薬のやり取りは絶対にダメ!」と何度も止めに入っていましたが……。

 「処方された薬というのはその人に合わせてオーダーメイドで出されている物なんだから、湿布くらいと思うかもしれなくても絶対やめてください」としょっちゅう言っていました。「安易にあげた薬で副作用出たら責任とりきれないでしょ?」とも。お年寄りと話をしている中で、「夫婦間で湿布を共有している」という人もいましたが……。中には「風邪ひいたの?この薬あげるわ」と処方された薬を渡そうとする人も。「他人はもちろん、夫婦でも親子でも処方薬は共有しちゃダメ!」と何度も説明していたのを思い出しました。

 ちなみに、モーラスはパップ剤、テープ剤がありジェネリック(後発品)として「ケトプロフェン」や「タッチロン」「パッペンK」など同じ薬剤を主剤としていても違う名前で幾つもあります。市販の湿布薬にもこのケトプロフェンが配合されている物もありますが、ケトプロフェンを使用している薬剤の添付文書には

「光線過敏症を発現することがあるので、使用中は天候にかかわらず、戸外の活動を避けるとともに、日常の外出時も、本剤貼付部を衣服、サポーター等で遮光すること。なお、白い生地や薄手の服は紫外線を透過させるおそれがあるので、紫外線を透過させにくい色物の衣服などを着用すること。また、使用後数日から数カ月を経過して発現することもあるので、使用後も当分の間、同様に注意すること。異常が認められた場合には直ちに本剤の使用を中止し、患部を遮光し、適切な処置を行うこと。」

と明記され、この表現を分かりやすく簡潔にした文章がパッケージの目立つところに必ず入っています。

 薬剤師が対面で薬を説明する際にも必ずこのような内容を説明しますが、これは法律でも義務付けられているからなのです。

■ 薬剤師は受診の際の「最後の砦」 説明を必ず聞き質問には快く答えて!

 処方箋が必要な薬というのは市販の薬よりも強力です。ドラッグストアで簡単に手に入る湿布は大して効果を感じないけど、処方された湿布が良く効くと感じている人も多く、実際に1回分に含まれている薬剤の種類も量も違っています。

 市販薬の中にも、内服でも外用薬でも処方薬と同じ成分が配合されている薬がありますが、薬剤によっては重大な副作用を起こす恐れもあるものも。こうした重大な副作用が知られている薬剤は、必ず薬剤師が対面で説明し、副作用を起こしやすい薬を併用していないかどうかなどのチェックを行っています。

 薄毛治療薬として有名な薬も、頭痛薬として絶大な人気を誇る薬も、すごく良く効く胃薬も、処方薬と同等のものであれば「第1類医薬品」として必ず薬剤師が対面でチェックと説明を行う事が義務付けられています。また、重大な副作用が出る事が知られている市販薬は「要指導医薬品」として必ず薬剤師の指導の下に正しい服用方法と副作用の説明がなされます。これも法律で必ず行う様定められています。

 市販薬に添付文書が必ず入っていて「必ず読んでから使用してください」と書いてあるのも、こうした重大な副作用を少しでも減らすためにあるのです。処方される薬には薬剤師の説明とともに、小難しい医療関係者向けの添付文書ではなく、分かりやすい文章で「おくすりの説明」という様な説明書きが必ず付いてきます。この説明書きは薬を飲む前にもう一度よく読み、薬を使い切るまで必ず保管しておいてください。特に初めて処方される薬については必ず読んでください。

 薬剤師は医療を受けた際の最後の砦。処方にあたっては必ず慎重に説明を行っています。診察の際に医師に説明した症状を「今回はどんな症状ですか?」と、再び説明を求められることがありますが、「何度も同じこと言わせんな!」と短気を起こすのではなく必ず話しましょう。また、おくすり手帳を忘れた時にも「他にお薬を飲んでいませんか?」「他に医療機関にかかっている病気はありませんか?」としつこく聞かれることがあります。この質問にもめんどくさがらず快く応じて下さい。薬には同時に処方してはいけないもの、その症状以外にある他の持病によっては処方してはいけないものがあります。

 こうして情報を引き出すことにより、薬剤師の機転で処方薬に誤りがあることが発覚することがありますし、他医療機関での処方がそこで発覚し飲み合わせなどによる危険が発覚することもあります。医者の説明は勿論ですが、医療受診の際の最後の砦、薬剤師の話もしっかりと聞き、質問には答え、説明書も必ず読みましょう。

■ 意外な外用薬で思わぬ副作用も……「目薬」で起きたケース

 ここまでうるさいくらいに「薬の情報は必ず確認を」というのには、大きな理由があるのです。先述の「光線過敏症」以外にも、意外と思われる外用薬での副作用があるからなんです。

 これは筆者が呼吸器内科の病棟にいた時の話。公害による喘息の患者さんが多い地域で時々喘息発作を繰り返しては入院してくる患者さんもちらほらいる様な地域。その病棟で筆者は、喘息患者の退院指導なども行っていました。

 喘息も長年の内服を続けて落ち着いている、でちょっと物忘れのひどいある患者さん。眼科のクリニックで「緑内障」と診断されて点眼薬が処方されました。しかし、いつもの「おくすり手帳」を持参しておらず、本人も喘息の薬を飲んで発作をコントロールで来ている事をすっかり忘れており……。自宅で点眼した結果、喘息発作を起こして運ばれてきたのです。

 実は、緑内障の治療薬に含まれている成分が喘息患者には使っていけないものだったのですが、眼科で喘息の事を話す事ができなかったのです。眼科医にとっては緑内障の薬は喘息持ちには使えないという事は良く知っていたはずなのですが、その情報が眼科医に届いていなかったためにこうした事が起こってしまったのです。たかが数滴の目薬で?と大げさに感じる人もいるかもしれませんが、実話です。

 こうした「意外な副作用」を防ぐためにも、どのような薬が処方され、いま何を使っているかを誰もが把握できる状態にする事は大事。その為の「おくすり手帳」なんです。副作用を防ぐためにも、普段飲んでいる薬がある人は必ず「おくすり手帳」を持ち歩くようにしてくださいね。

■ さいごに

 外用薬って結構安易に使えるものの様に思われがちですが、こうした副作用というのは実際に起こっています。持病によっては命にもかかわる重大な副作用もあります。入院治療を必要としたり、日常生活に支障をきたすほどの重大な副作用が出た場合、「医薬品副作用被害救済制度」を活用する事ができます。しかし、これは薬をきちんと理解して適正に使用している人が対象。誰かから譲ってもらった薬で副作用が起こってもこの制度は使えません。テレビの薬のCMで「用法用量を守って正しくお使いください」と必ずナレーションが入るのも、法律で注意喚起を必ずする旨が定められているからなんです。

 こうした事も踏まえて、薬を使う時は内服であろうが、外用薬であろうが必ず添付文書をよく読み、適切な使用方法を理解してから使用してください。情報を理解する事は、自分の身を守る事に繋がります。

<記事化協力>
ようこさん(アメーバブログ)【湿布の副作用で「一生治りません」と診断される】

<参考・引用>
医療用医薬品情報|医療関係者向け情報|久光製薬
医薬品副作用被害救済制度 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
他多数

(梓川みいな / 正看護師)

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