九州北部豪雨で被災した久大本線がついに全線運転再開 「久大本線 ぜんぶつながるプロジェクト」始動
おたくま経済新聞 / 2018年5月7日 14時59分
流失した花月川橋梁。奥には流れ着いた橋桁が
「平成29年7月九州北部豪雨」によって、2017年7月5日から大分県の光岡(てるおか)駅~日田(ひた)駅の区間で運転を見合わせていたJR九州・久大本線。大分県日田市の花月川に架かる花月川橋梁が流失するなど、一時は復旧すらも危ぶまれましたが、地域の人々の協力もあり、災害からわずか1年余りとなる2018年7月14日に、全線での運転再開が決まりました。久大本線の運転再開とともに、復興への歩みをさらに進めるため、JR九州では久大本線沿線地域へのエールやメッセージを全国から募集する「久大本線 ぜんぶつながるプロジェクト」を始めます。
2017年7月5日から6日にかけて、対馬海峡に停滞した梅雨前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込んだ影響になどにより、九州北部地方で記録的な大雨となった「平成29年7月九州北部豪雨」。24時間降水量で福岡県朝倉市では545.5ミリ、大分県日田市では370ミリ(いずれも観測史上1位)の大雨となり、福岡・大分両県で死者37名、行方不明者4名の人的被害のほか、多くの家屋の全半壊や床上浸水の被害が発生し、一時は2000名を超える人々が避難生活を送る事態となりました。
この地域を走るJR九州の久大本線は、信号ケーブルの断線など11件の被害が発生。中でも大分県日田市の花月川橋梁は、上流からの流木の影響もあり、橋脚もろとも流失するという致命的な被害を受けました。同年7月11日から運転見合わせ区間でバスによる代行輸送が始まり、特急「ゆふいんの森」も7月15日に運転が再開されましたが、博多から久留米には向かわず、逆方向の小倉~別府と日豊本線を走り、不通区間を迂回する特別ルートに。その後徐々に復旧が進み、7月18日にはバス代行輸送の区間は光岡〜日田駅のみとなりました。
被災当初は何年もかかると思われた、橋脚ごと流失した花月川橋梁の復旧。国土交通省水管理・国土保全局、九州地方整備局の協力があり、出水期中の施工や、同じ被害に遭わないような橋の構造についての技術的助言も受け、異例の早期着工が可能になり、約1年という短期間での架け替えができました。久大本線を再びつなげたいという熱意が、このようなことを可能にしたんでしょうね。
そして2018年7月14日、ついに久大本線は全線復旧し、日田駅5時25分発久留米行き列車(キハ125形2両編成)から運転が再開されます。これを記念してJR九州と大分県、そして新幹線活用久大本線活性化協議会では、久大本線の全線運転再開を多くの人々に知ってもらうため、そして被災した沿線地域の復興を後押しするために「久大本線 ぜんぶつながるプロジェクト」を開始します。
全国から、久大本線沿線地域へのエールヤメッセージをスペシャルサイト「久大本線 ぜんぶつながる」内のメッセージ募集フォームを通じて様々な想いや願いを集め、集まったものの中から複数のメッセージを選んで風船に印字。これを7月14日に久大本線の象徴的列車である特急「ゆふいんの森」初運転に合わせて、想いを込めて大空へ飛ばすというものです。
そして沿線に住んでいる方からは、久大本線沿線の「元気な様子」を募集。TwitterやInstagramでハッシュタグ「久大本線つながる」をつけて投稿すると、その画像などがスペシャルサイト「久大本線 ぜんぶつながる」に反映され、全国の人々に元気な様子を感じてもらえる、という仕組みです。
今回の「久大本線 ぜんぶつながるプロジェクト」のロゴマークは、流失した花月川橋梁のある大分県日田市出身のデザイナー、梶原道生さんの手によるもの。梶原さんは地元・日田林工高の卒業生でもあり、久大本線は通学に使った思い出の路線でもあるとのこと。久大本線復旧のシンボルは花月川橋梁にあると想いを語り、さらに「この橋が繋がっただけでは、まだ、本当の復旧ではありません。風評被害が消え、旅行客が元に戻ることができて初めて復旧したことになるのではないかと思います。橋が繋がったことをチャンスと捉え、まちとひとが繋がり未来に繋がるように期待したい」と語っています。
また、沿線の日田駅長、由布院駅長からは、以下のようなコメントが寄せられています。
■日田駅長
「豪雨災害以降、ご利用のお客さまを始め地域の皆さまには多大なるご不便とご心配をお掛けしましたことを深くお詫び申し上げます。7月には復旧工事も終わり、待ちに待った全線開通が間もなくです。私どもの使命でもあります「地域を元気に」を合言葉に、ご利用のお客さま、地域の皆さまと共に日田市の今後の発展、活性化に努めて参りたいと思います。 大分県西部に位置する日田市。美しい山々と筑後川上流の三隈川、山紫水明の名のもとに温泉と自然、歴史の宝庫である日田市の一日も早い復旧・復興に向けて取り組んで行きたいと考えています」
■由布院駅長
「2017年7月5日の九州北部豪雨災害で、直接的な被害がなかった由布院温泉でしたが風評被害の影響もあり、訪れるお客さまが激減しました。一昨年の熊本地震で大きな被害を受けた由布院温泉にとっては2度目の試練でした。しかし2017年7月15日、日豊本線まわりで「ゆふいんの森」号が復活。2018年3月28日には「クルーズトレインななつ星 in 九州」が8か月ぶりに由布院駅へ停車、4月1日には由布市の新観光案内所「YUFUINFO」がオープンと地域の皆さまのご協力のおかげで徐々に元気を取り戻しつつあります。2度の災害を乗り越え、たくさんのお客さまを乗せた「ゆふいんの森」号が花月川橋りょうを通り、もうすぐ由布院駅に到着しようとしています。災害直後、由布院駅前のガランとした風景を思い出すと、復活した「ゆふいんの森号」が到着したそのとき、そのにぎわいを想像するだけで万感の思いです。お客さまがいらっしゃることに喜びを感じ、「“ゆふいん”に来て本当によかった!」とお客さまに心から思っていただけるように、地域の皆さまと一緒に感謝の気持ちでお出迎えいたします」
久大本線には、Aqoursのシングル「HAPPY PARTY TRAIN」のジャケットやPVに登場する機関庫にそっくりな、旧豊後森機関庫(豊後森駅)など、温泉だけでなく様々なスポットがあり、楽しみ方も色々。「久大本線 ぜんぶつながる」スペシャルサイトに投稿された写真を見て、この夏訪れてみるといいかもしれません。
情報提供:九州旅客鉄道株式会社
(咲村珠樹)
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