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大漁旗で作った派手かわいいバッグや洋服が話題

おたくま経済新聞 / 2018年6月8日 13時28分

大漁旗で作った派手かわいいバッグや洋服が話題

kakakoさん提供

 豊漁の印として船上に掲げる「大漁旗」。最近では結婚や出産祝いなどおめでたい席で飾られることも増えています。

 鮮やかな色合いもさることながら、「大漁」という力強い文字に、波しぶきの中から鯛やカニ、龍などが勢いよく飛び出すめでたい絵柄が躍ります。そんな見た目も派手な大漁旗を使用したある作品が、某アーティストの目にとまり、Twitterから直にオーダーがくるほど各メディアで注目を集めていました。大漁旗を普段使いのバッグやワンピース、雑貨として変身させた作家のkakakoさん。どのようなことがきっかけで作品の素材として「大漁旗」を選ぶことになったのか、そのきっかけを伺いました。

――kakakoさんは、何がきっかけで大漁旗を服や雑貨にしようと思われたのですか?

 2011年秋、何年も壊れたままだったミシンを買い替えた数日後、素材を探しに初めて出かけて行った地元の骨董市で大漁旗に出会いました。とても大きな旗で迫力があってカラフルで美しく、一枚の画面として完成されたものだったので、勿体なくてなかなかハサミを入れる気にはなれず、1か月ほど廊下の壁に貼ったままで「どうしたらこの旗を生かすことができるかなぁ」とうっとり眺めながら毎日考えていました。

 そしてだんだんと「このままでは私一人が鑑賞するだけだよなぁ。形を変えたとしても新しい役割を与えられて日々の暮らしの中で活用された方がこの旗は幸せかもしれない」思うのようになって、大小複数のトートバッグとタブリエ(巻きスカート状のエプロン)を作ったのが最初です。

――普段どこから大漁旗を仕入れているのですか?

 最初は骨董市や骨董店を地道に回ったりしていました。そのうちに作風を知って、漁師さんとつながりのある知り合いが仲立ちとなってくれてご厚意で譲っていただいたりもしました。

 昨年からは委託販売をお願いしているご近所のorigamiさん(古道具と雑貨のお店)が大漁旗素材のオリジナル作品を製作されているので、そちらで仕入れられた旗を譲っていただいて購入することも多いです。

――生地になる大漁旗は、綿の素材以外にもありますか?

 最近の廉売品の機械プリントの旗は化学繊維のものがあるかとは思いますが、私はそちらには全く魅力を感じないので、手仕事による染め物の木綿の大漁旗で製作をしています。

木綿と一口に言っても厚さや織り方の違いによって張りや風合いが違うので、旗の大きさや図柄だけでなく、素材の持ち味もまた何を作るかを決める要素となります。

――最近ではどのようなオーダーがありましたか?

 今動いているものに関して詳細は申し上げられないのですが、コラボ企画で、ある衣装を複数製作しています。自分としても何年後になってもぜひチャレンジしたいことだったので、こんなに早く機会が巡ってきたことが嬉しく、良いものができるように頑張っています。夏頃のお披露目をお待ちいただければと思います。

――さまざまな色合いがありますが、船主によって大漁旗を作る上でのルールのようなものがあったりしますか?また、大漁旗にも地域性があったりするのでしょうか?

 私も手にしてから初めて分かったのですが、大漁旗は船主さんが自らオーダーするものではなく、造船(進水)した方に対して大漁と航行の安全を願ってお祝いとして贈るものです。お店ののれんと同じで 「○○さん江 □□より」のように船の名前と贈り主の名前(あるいは企業名)が必ず入っています。

 数は多くはありませんが北海道以外の船の旗、本州の太平洋側や日本海側の大漁旗も手に入れたことがあり、色数や文字の太さによる迫力に違いがあって地域性が見受けられました。それは地域性と考えられるとともに、それぞれの地域で旗を製作される染物屋さんの技量や表現力の違いなのかもしれないなぁとも感じました。

--地域によってどんな違いがあるのでしょうか?

 地域性として一番顕著なのは描かれるモチーフの違いです。縁起物として全国的には鯛が描かれることが多いですが、北海道では鮭の場合も少なくありませんし、道内でも目にすることが少ないと思っていたイカ柄も函館では割とポピュラーだと聞いて、地域によって好まれる柄に違いがあることを知りました。

 あと、漁業の規模によっても旗の大きさに違いがあるのではないかと想像できます。小さな船は大きな旗を贈られたとしても掲げることはできないはずなので、小型漁船が多い地域の旗は小ぶりで、遠洋漁業に出かける大きな船であれば旗も巨大なものが贈られるの場合もあるのだと思います。

――今まで作られた作品の中で思い出深い作品があれば教えてください。

 2013、14年にグループ展(札幌)、2015年に個展(神戸)に誘っていただいて、その度に製作できるアイテムを増やしていき「展示映えのする物を」と考えて、それまでのバッグや小物に加え、洋服類も手がけるようになったのですが「こんなの着たがる人はいないか……(笑)」と冗談のつもりで作っていました。


 でも実際に人が試着をして動きが出ると、不思議としっくり馴染むというか、華やかで、着ている人も周りで見ている人たちも楽しい気分になれて……。そして評判も良かったんです。オーダーもいただいたりして。

 「じゃ冗談じゃなく真面目に製作しよう」と思ってロックミシンを購入して張り切って試作品を作ってはTwitterに画像をあげて楽しんでいたのが2016年の年末だったかと思います。

--冗談から生まれた大漁旗のお洋服ということですが、その後何か展開がありましたか?

 画像をご覧になったZABADAKの小峰公子さんが「衣装にしたいので、それほしいです!」と@ツイートをくださいました。もう何が起こったのか意味が分からなくて唖然としてしまって2日くらい鳥肌が立って小刻みに震えが止まらなかったのですが「いえいえ、これは試作品なので、小峰さんのイメージに合うものをご希望も伺いながら作らせてください。」とお願いをして、何度もやりとりをさせていただいて「東北6県ろ~るショー!!」用のお衣装を製作して翌月お送りし、翌々月、初めてその巻きスカートを着てくださったLIVE(東京)に伺うことが叶って、直接お会いしてお礼を申し上げることができました。

 「SNSのある時代に生きていて本当に良かった……」と何度思い返してもありがたくて泣きそうになります。

――数々展示会をされてきた中で、お客様の反応で面白かったことや、新たな気付きはありましたか?

 毎回ビックリすることなのですが、本当にその服が似合う方が現れて、迷いなくそれを選んで購入してくださるのです。シンデレラの足にガラスの靴がピタッと合うようにです。全てが一点物でサイズがある場合はその条件もあるわけですが、ちゃんと行くべき方のもとに届くものなのだなぁと運命のようなものを感じて、お選びいただいた方々に感謝しております。

--洋服が似合う人が現れる! 素敵ですね。

 選ばれ方も男女によって違いがみえて大変面白いです。
女性はご購入の判断がものすごく速いです。直感的にご自分が似合うものがお分かりなんでしょうね。それに対して男性は何日も考えに考えた末に決めていただけるケースが少なくありません。ファストファッションが全盛の時代ですから、それらと比べると正直言いまして値段は決して安くありません。

 「この突飛な一点物の洋服にこの金額を払う価値があるのか?そして自分が着られる場面が何度あるだろう?」などなど、ものすごく熟考されるのだろうと思います。そしてよくよく観察されているようです。細かい部分の縫製などをよく見てくださっているようで、丁寧さを褒めていただいてとても嬉しく思います。

――今後はどのような作品を作っていきたいですか?

 大漁旗を素材としたものに関しては、具体的にこれを作りたいというイメージは今頭の中にはありません。テキスタイルから製作したり数ある素材の中から好みのものを選べたりするわけではなく、まずは「どんな旗と出会えるか」ありきで、そんな偶然性に頼るところが多いので、あまり欲張らず、実際旗を見てから「どの形にすれば魅力的か」→「それは誰に向けて?」……という順序で考えて行くようにしています。

 また、旗素材だけではなく、今月終了した2人展で手がけたアフリカンバティックのものも引き続き作りたいですし、自分でハンドプリントした布で製作したいとも考えています。(それはまた話が長くなるので控えます)

――展示会などのご予定があれば教えてください。

 昨年に引き続き、12月1~7日の日程で西武柳沢駅のノラバー さんで展示会をさせていただく予定です。「ノラバーで西武柳沢2018サブメッコ冬のコレクション」というタイトルです。

<記事化協力>
kakakoさん(Twitter:@hentekodo / HP:sabumekko.com )

(黒田芽以)

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