様式美の極致!イギリス女王誕生日恒例の閲兵式「トルーピング・ザ・カラー」
おたくま経済新聞 / 2018年6月12日 10時49分
モールを行く王立騎馬連隊
2018年6月9日(現地時間)、イギリスのエリザベス女王の公式誕生日を祝う行事である、イギリスおよびイギリス連邦諸国の陸軍が参加する閲兵式「トルーピング・ザ・カラー」が開催されました。17世紀、チャールズ2世の代から始まった伝統の行事で、きらびやかな礼服に身を包んだ近衛兵たちが美しい行進を披露しています。
エリザベス女王の誕生日は1926年4月21日(現在92歳)ですが、実際の国王誕生日にかかわらず、屋外での行事を行いやすいよう、気候の良い5月の終わりから6月の始めに「公式の誕生日」を制定する仕組みが、ジョージ2世在位時の1748年からできています。1979年からは6月半ばの土曜日に設定されるようになり、2018年は6月9日となりました。
また、女王(国王)が閲兵する「トルーピング・ザ・カラー」は、17世紀に当時の国王チャールズ2世が閲兵したことがきっかけ。そして1760年にジョージ3世が即位した際、先王のジョージ2世が制定した「公式の誕生日」に閲兵を行うという現在の形ができました。
好天に恵まれた6月9日。会場となるバッキンガム宮殿とモール周辺には、およそ7500人の見物客が詰めかけました。この様子は、BBCがイギリス全土に生中継するほか、ドイツやベルギーにもテレビで生中継されています。2018年は「タイム」誌のYouTubeチャンネル、そして「テレグラフ」紙のFacebookページにおいて、ネットでのストリーミング中継も行われました。
女王の閲兵を受けるのは、1650年に発足し、現役の連隊としては世界で最も長い歴史を持つ近衛歩兵連隊「コールドストリームガーズ」ら近衛兵。王族もチャールズ皇太子やライフガーズ連隊長のアン王女、ウィリアム王子も王立騎兵連隊の一員として馬上で参加します。
馬上の王族たち。右からアン王女、チャールズ皇太子、ウィリアム王子、ヨーク公(チャールズ皇太子の弟)これに対して、2017年まで女王の傍らで閲兵していたフィリップ殿下は、翌6月10日に97歳の誕生日を迎えることもあり、2017年8月に公式行事への参加を取りやめることを明らかにしていたので、姿を見せませんでした。即位して66回目の「トルーピング・ザ・カラー」ですが、エリザベス女王は単独で閲兵に臨みました。
ベン・バサースト陸軍少将に率いられた兵は、コールドストリームガーズの中でも選抜されたメンバー。多くが初めての参加となります。おそらく軍隊生活の中でも有数の晴れがましい行事。この行事を終えると、多くの兵はケニアでの演習や、フォークランド諸島での任務に従事することになり、イギリス本土を離れるということです。また、このうちの一部は2020年にイラクへ派遣され、現地の治安部隊を訓練する任務に就くことが予定されています。
また、グレナディアー・ガーズ音楽隊の指揮をとるドラムメジャーを務めたスティーブ・ステイトさんは、このトルーピング・ザ・カラーが軍隊生活最後の任務。1979年に陸軍に入隊以来、およそ40年の軍隊生活で、湾岸戦争に従軍するなどしたほか、この「トルーピング・ザ・カラー」には26回参加。うち17回でドラムメジャーを務めました。これは史上最多のこと。
この閲兵式には各国の要人もゲストとして参列しています。アメリカのマティス国防長官と、イギリスのウィリアムソン国防大臣の談笑する姿が見られました。
トルーピング・ザ・カラーの最後は、イギリス空軍によるフライパスト(航過飛行)。ヘリコプターを先頭に、バトル・オブ・ブリテン・メモリアルフライト(BBMF)で動態保存されている第二次世界大戦の爆撃機アブロ・ランカスターやホーカー・ハリケーン、スーパーマリン・スピットファイアの戦闘機、現用のユーロファイター・タイフーンやトーネードGR.4などが編隊を組んでロンドン上空を飛行します。トーネードGR.4はマーハム空軍基地の第617飛行隊所属のものだったので、これがトーネードで参加する最後の機会となりました。マーハム空軍基地に聞いたところ、機種転換が順調に進めば、来年はF-35Bで参加することになるだろうとのことです。
航空機の最後を飾るのは、エアロバティックディスプレイチームの「レッドアローズ」。傘型(シェブロン)編隊で、イギリス国旗の赤・青・白のスモークを引いて飛んで行きました。
17世紀からの伝統を誇る「トルーピング・ザ・カラー」。日本で言えば武者行列や、京都の葵祭で行われる時代行列のような感じです。現役の軍人がきらびやかな礼服を身につけ、行進する姿は、伝統に裏打ちされた様式美の詰まった、美しい王室行事です。
Image:Crown Copyright 2018
(咲村珠樹)
Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By おたくま経済新聞編集部 | 記事元URL https://otakuma.net/archives/2018061201.html外部リンク
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