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小型機に搭載可能な高性能合成開口レーダーの1号機が出荷

おたくま経済新聞 / 2018年7月10日 11時26分

小型機に搭載可能な高性能合成開口レーダーの1号機が出荷

NSP-5ER本体(右の半球系の機器は別のもの)

 2018年7月3日(現地時間)、アメリカのユタ州に本社を置くレーダーメーカー、IMSAR LLCは最新の小型合成開口レーダー(SAR)「NSP-5 ER」の1号機が、オレゴン州にある退役軍人経営会社(VOSB)、インテグレーテッド・サーベイランス&ディフェンス社のビーチクラフト・キングエア200に装着して出荷された、と発表しました。空から地滑りや土砂崩れなどの災害調査をしたり、偵察に使用される高性能な合成開口レーダーを既存の小型機にも装着できるサイズにした意欲作です。(見出し画像:NSP-5ER本体、右の半球系の機器は別のもの)

 合成開口レーダーは、地表面を上空から調査するのに適した画像センサー。雲を透過できるマイクロ波を使うため、昼夜間、天候を問わずに地上や海上の調査を広域かつ細かく行えるのが特徴です。

 NSP-5 ERは、Kuバンド(12〜18GHz)を使用する合成開口レーダー(SAR)NSP-5の性能強化版です。災害時における土砂崩れや道路の損傷状況を把握するのに役立つ経時変化抽出(Coherent Change Detection=CCD)、移動する物体を検知するグラウンド・ムービング・ターゲット・インジケータ(GMTI)、そして海上調査機能を備え、高精細な画像を得ることができます。

 本体は直径約14cm、長さ147cm、重さ10.9kgというコンパクトサイズ。しかも消費電力も275W未満という省電力設計なので、小型機の胴体下や主翼下などに取り付けて使用することができます。

 気になる性能は、分解能が10m、5m、2m、1m、50cm、30cm、高精細の7種類。海上の大きな目標を検知する場合ならば100km、1mの分解能なら44km、移動する物体を検知するには20km離れたところから調査が可能です。これは通常モデルであるNSP-5 KUと比較すると倍の距離。地表面全体を幅広く調査する場合は高度6000m、限られた場所を集中して調査する場合は高度6900mから調査が可能です。出力される画像は、アメリカ国防総省の標準形式であるNITFや、GoogleマップやGoogle Earthなどで使用されているKMLのほか、一般的な画像ファイルであるTIFF、JPEG、PNG、BMPなどにも対応しています。

NSP-5ERを胴体下に装着したビーチクラフト・キングエア

 軍の偵察用途で調査する際、なるべく離れたところから高精細な画像を得たいのですが、それを実現するには高出力なレーダーが必要となり、その分アンテナ本体や消費電力が大きくなってしまいます。その中で、コンパクトさと低消費電力、そして必要十分な高性能を両立したNSP-5 ERは、装着する航空機を選ばないという特徴を含め、多くの場面で利用されることが期待されます。

Image:IMSAR LLC Inc.

(咲村珠樹)

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