病院で起こった怖い話 ~霊的以外にも怖い実話篇~
おたくま経済新聞 / 2018年7月31日 17時4分
![病院で起こった怖い話 ~霊的以外にも怖い実話篇~](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/otakuma/otakuma_20180731_06_0-small.jpg)
病院の廊下・写真ACより
夏と言えば、怪談。病院と言えば誰もいない部屋から鳴るナースコールが怪談の定番。筆者は看護師として病棟勤務を10年以上経験し、出産後も外来、老人施設、児童デイサービスなどで勤務してきました。病棟勤務時代は夜勤もバリバリこなし、夜勤ならではの経験も。ツイッターでは「#夏だしフォロワーさんの怖い話教えてください」というハッシュタグで盛り上がっていますので、今回はそんな病院で体験した怖いお話を書こうと思います。
■ ありがちな幽霊ネタ
筆者は残念ながら霊感めいたものは殆ど持ち合わせていないのですが、一緒に勤務していた当時の主任が霊感持ち。旅行先でも夜中寝ていると幽霊にからかわれる事が多く、お腹の上をぴょんぴょんされたので一喝したら静かになったという、幽霊怖いと思っていない系の人。曰く「生きてる人間の方がよっぽど怖いわ」。そんな主任が体験した話。
当時外科の病棟にいた主任、傷の処置を行う為に医師と一緒に回診車を押して回診していました。その病棟の端、ちょうど階段の辺りで一番最後列で回診車を押していたのですが、いきなり下り階段の方にぐいっと引っ張られたそう。びっくりしたついでにクルっと振り向くと誰もいない。イラっとした主任は「コラっ!回診の邪魔しない!!」と後ろに怒鳴りつけたのです。怖かったのは、怒鳴られたいたずら幽霊だったのでは……。と思うと同時に、そんな主任の方がちょっと怖いと筆者も感じてしまったのでした。
■ シャレにならなかった、医師のとある経験
整形外科の病棟や外来は、基本的に内臓ではなく筋肉や骨を診る診療科なので命に別条がある人というのはかなり頻度的には少なくなります。外来に受診に来る人は8割くらいがご老人。腰椎圧迫骨折や五十肩、関節の痛みを訴える人を毎日診ている訳ですが、とある整形外科医が外来で経験した事は聞いている方も背筋に冷たいものが。それは……。
場所はとある総合病院。60代の男性が初診でその医師の午前の診察を受ける事になりました。主な症状は、左肩の痛み。レントゲン上問題なく、腕両方ともちゃんと上にあげる事ができていました。しかし、痛むのは左だけ、しかも鋭いような痛み。触診でそれなりに筋肉のこわばりが観察されたので、肩こりとして湿布を処方し、その日の診察は終了したはずでした。
しかし……その日の夕方、救急車でその男性は救急外来に運び込まれてきました。病名は、心筋梗塞。心臓に栄養を送る血管の一部が詰まり、心臓が機能しなくなる病気です。午前中に訴えていた左肩の傷みは、「放散痛」と呼ばれる、実は心筋梗塞による心臓の痛みだったのです。男性は運ばれてきたのが遅かったため、残念ながら処置の甲斐もむなしく息を引き取ってしまいました。
それ以来、その医師は既往歴に心疾患の記載がなくても必ず心筋梗塞の前兆となり得る症状がないかどうかを聞いて、怪しければ心電図を取ったり循環器内科に回ってもらったりするようになったのだそうです。
「痛みだけではっきりしない、怖い病気が整形外科の診察にも来るという事を覚えておいてね」と筆者含む数人の看護師はその医師から聞かされたのでした……。
■ 深夜のスプラッタ
これは筆者が体験した事。その日の夜勤は何だか眠れないご老人がいるとの準夜勤からの申し送り。ナースコールをしょっちゅう鳴らしたり、ごそごそしたりと看護用語で言う「不穏気味」。水分と電解質が若干足りないという事で腕から点滴を入れていました。時間は夜中の2時半ごろ。朝繋げ変える持続点滴や午前に行う抗生剤の点滴の支度も終えて消毒するものも片付けた頃にそのナースコールは鳴りました。二人で50人弱を2時間おきに巡視し、体位やオムツを交換する人は行い朝まで勤務するのですが、その巡視を待たずしてのナースコール。申し送りで「不穏気味」と伝えられたご老人のベッドからでした。
この時間に睡眠薬はさすがに使えないし拒否されるだろうな……と思いつつ二人部屋の病室をのぞくと、カーテンには血しぶき、そして血に染まるシーツ。次の瞬間、もう一人の夜勤者にコールしていました「急いで回診車持ってきて!」分かる人は分かると思います、深夜の点滴の自己抜針の恐怖を……。しかも、点滴をさしていた腕の部分には皮膚を保護するシートがさした上から貼られていたのですが、そのシートに皮膚が貼り付いて大きくめくれ上がっていたのでした。深夜なのでとりあえずめくれた部分の皮を確認、当直医も呼んで診てもらうも、このめくれようはどうにもできないとの事。なるべく傷を最小限に抑えるべく、シートを皮膚ごと丁重に取り除き、ガーゼで保護して包帯で巻いて日勤の時に改めてキレイに処置という事で落ち着きました。が、その後のお片付けは大変でした……。
その後、不穏気味で点滴を入れている患者さんに対してどう保護するか議論がなされたのは言うまでもありません。
「生きている人間の方が怖い」3つのお話でしたが、病院勤務しているとこんなの全然可愛いくらいの経験をしている人もきっと、大勢いると思います……。
(梓川みいな/正看護師)
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