学校に行かなくても死なないし何とかなる ~不登校・とあるライターの場合~
おたくま経済新聞 / 2018年8月21日 15時12分
写真ACより
学校に行きたくない、行くのが怖い、行きたいのにどうしてか行けない。そんな子供たちはあたりまえにいます。筆者の娘も実は不登校。そんな不登校の人たちのこれまでと今を綴ってみようと思います。
■ 子供たちのこれまで
筆者(以下、私)は二人の娘の母。長女も次女も発達障害と診断されています。診断されるまで、全く他の子と同じだと思っていつつも他の子とは違う違和感もあったので、診断が下りて「受け入れないと」と思う反面、「ああやっぱり」という気持ちと「何でうちの子が?」や「いや他の子と仲良くやってるじゃん?」ととにかく色んな感情がゴチャゴチャに沸き上がったのは今でも鮮烈に覚えています。長女の時は特に強く、次女の時は「やっぱりこの子も」と受け止めてはいたものの、「せめてこの子は普通でいて欲しかった」という気持ちも。
発達障害は人によって特性の出方がそれぞれ違います。一括りにしているとは言え、二人とも全然違い、長女はこだわりが強く周囲の気配や音、人の感情にとても敏感。次女は忘れっぽくおっちょこちょいが目立ち、落ち着きが足りないというそれぞれの違いがありました。
手負いの野生動物みたいに周囲に牙をむいた事も多々あった長女は、小学5年で普通学級から支援級のある学校へ転校し、そこで児童の情緒について理解がある先生に出会う事ができ、修学旅行も無事に集団で移動、卒業式も笑顔で迎える事ができました。しかし、中学へは本人も普通クラスで頑張りたいといったものの、結局、集団に対する恐怖や友人に新しい仲間ができた事が重なるなどして親友だったと思った子とも疎遠になり、学校に行けなくなってしまいました。
長女から1年遅れて同じ学校に転校した次女(当時小学4年)は、最初のうちは新しい環境で頑張りたい、と言っていたものの、だんだんと学校に行けたり行けなくなったりしてきました。本人も、どうして学校に行けないのか、何がダメで何が嫌なのか分からない状態でした。学芸会には参加できたものの、そこから力尽きたのか休む日数も増えていき、遂に5年の時にはほとんど登校できない状態に。野外学習へは参加したものの、3日目のもう学校へ戻る日の朝に固まって動けない状態になってしまい、連絡を受けた私は車を飛ばして迎えに行った事もありました。
■ 子供たちの今
長女は支援学校に転入し、自分の事を理解してくれる環境で今は個性を伸ばす方向で教育を受けています。今は同年代相当の学力に凹凸ができても、好きな事に対する興味があれば今はそれでもいいのではと私は思っています。その特性故にいじめに遭った事もあった長女は未だその傷を抱えている状態。少しずつ、周りの力を借りて成長とともに傷を自分の一部とさせる事ができるようになったらまた変わってくるのでは、と深刻に考えない事にしています。
長女が支援学校に転校したのを機に、次女も転校。そこでは普通学級に籍を置きながら、市が開設しているフリースクールに通い始めました。フリースクールに通い始めるまでにも色々とあったのですが、6年に上がって思春期特有の心の揺れや思い通りに行かない心の葛藤の中でも、過去の振り返りができるようになりました。曰く、「あの時は分からなかったし今もどうしてか分からない事もあるけど、学校に行きたくない理由がいくつかはっきりしてきた」。野外学習ではクラスメイトに「行事の時しか学校に来ない」という陰口を聞いた事で耐えられなくなった事、前の学校では友人と呼べる子はいなく孤独を感じていた事、現在の学校に転校してからは、登校するだけでレアキャラ扱いされて騒がれるのがイヤ、運動場や体育館、校内のざわざわした音が頭の中で反響してすぐに疲れるなど、学校に行けない理由が出るわ出るわ。
発達障害特有の感覚過敏がふたりともあるのですが、もっと早くに気が付いて対処法をあげる事ができていればという後悔も勿論ありました。しかし、いま必要なのはそんな後悔などではなく、これからどうやって居場所を居心地よくする事ができるかの方が大事と考えました。
学校側は次女の特性に理解を示してくれ、スクールカウンセラーや担任の先生が都度次女の元に訪問するなど、きめ細かく取り計らってくれています。学校側としては、修学旅行に参加できるといいんだけど、保健室登校でも全然大丈夫だから少しでも学校に対するハードルを下げてくれればという感じ。しかし強制は一切せず、次女のペースに合わせてくれています。
今、次女は自分を理解してくれる大人が増えた事と、地域の友人ができた事で1年前にはまるっきり引きこもっていたのが嘘のように外へと出ていくようになりました。人的環境が整いつつあることを実感しています。
■ 不登校で何が悪いと開き直るのも悪くない
学校に行けば基本的な教育も受ける事ができ、昼食は食べられ、生活に必要な知識をも教えてもらう事ができます。集団でしか体験できない事も体験できます。しかし、必ずしもその枠組みにとらわれる必要なんてないのではないのか、と私は思います。確かに、自宅での家庭学習に限界を感じる事もあります。そして学校外での学習にはお金もかかります。でも、時間は掛かってもそこだけカバーできれば学校という枠組みにとらわれなくても案外何とかなったりします。
これまでに一緒に働いてきた人の中にも、学校に行けなかったが自分で何ができるか、何をしたいかに気が付いて大人になってから勉強を始めたり、働きながら高卒認定試験を受け、目指している専門学校に入り直したという人がいました。回り道をして普通と言われる人よりも何倍も苦労して、それでも今楽しく働けているのは理解してくれた人がいたからだった、と、不登校を経て大人になった人たちは口を揃えています。その存在は親だったり、友人だったりと様々ですが、「自分を分かってくれている」という安心感を持っている人は、生き抜く事ができると感じています。
「本気で死のうとしたことがあった、だけどどん底の時に救ってくれる存在があって今を生きていてよかった」この言葉を聞くたび、身近な人を理解する事がどれほど大切な事なのかをひしひしと感じます。私は娘たちの事を可能な限り理解し応援できるようになりたい。まだ色んな可能性を秘めているこの子たちの将来を笑って過ごせるものにしたい。だから、私は自分が娘たちの好きな事にも興味を示し続ける人間でいられたらいいなと、思っています。
(梓川みいな)
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